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「アリとキリギリス」の教訓は欧州を救わない

前途多難なユーロ圏内の不均衡是正

2010年11月18日(木)

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 筆者は、好んで欧州のドイツとギリシャやスペインなどの周辺国の関係を、「アリとキリギリス」の寓話にたとえてきた。倹約家で国際競争力を高めるために必死に働くドイツ=「アリ」と、浪費家で陽気に目先の享楽に興じる周辺国=「キリギリス」という構図である。両者の関係をもう少し詳しく説明すると、次のような話になる。

通貨統合でバブルに踊った周辺国=「キリギリス」

 通貨統合後、周辺国の資金調達コストは、大量の資本が流入することで大幅に低下し、所得も大きく伸びた。たとえば、ギリシャの10年国債利回りは、通貨統合参加前の11%台から参加後には4%台まで低下した。しかし、その半面でユーロ圏内での経常収支の不均衡もまた拡大した。

 こうした不均衡の拡大の背景には、いくつかの理由がある。まず、通貨統合によって周辺国の債務が、ドイツによって保証されているとの暗黙の了解があった。周辺国の成長率がドイツよりも高く、それによって債務の返済可能性が高く見えた。そして、将来は通貨統合の下で周辺国も経済状況の収斂が進み、ドイツのような国際競争力の高い国になると期待されていた。これらの“勘違い”によって、不均衡の拡大が正当化されたのである。

ドイツ=「アリ」もキリギリス・バブルの恩恵に

 ところが、米国でサブプライム問題、リーマンショックが発生すると、欧州でも積み上がってきた債権=債務関係が維持できるのか、つまり経常赤字国(周辺国)の債務は返済できるのかという疑問がわき起こった。この問題は、放漫財政が「発覚」したギリシャのような驚くべき例外を除けば、始めは民間部門の過剰債務問題、民間金融機関の不良債権問題として顕在化し、ついで、これを救済し金融・経済の安定を図った政府部門の債務問題へと姿を変えてきた。返済の可能性を疑われた国の国債利回りは急上昇し、問題の解決を一層、困難なものにしてしまっている。

 しかし、経常赤字が必ずしも悪いものとは限らない。周辺国の資金流入に伴った高成長は、ドイツのような経常黒字国にも輸出拡大を通じた好景気をもたらしてきた。ドイツにとっても周辺国にとっても大きなメリットがあり、「欧州経済の復活」として賞賛する声もあったほどである。

キリギリスの国際競争力は一向に向上せず

 問題は、資本を輸入した経常赤字国がそれらを有効に活用して、将来の債務可能性を高めるべく国際競争力を向上させてきたのか否かである。

 競争力を計る物差しとして単位労働コストに注目しよう(グラフ1)。単位労働コストとは、1つの製品を作るのに要する労働コストのことである。生産性を高めたり労働コストを抑制したりすることで単位労働コストを小さくできれば、国際競争力は向上する。

 ところが、今回問題視されたギリシャ、スペイン、ポルトガル、アイルランドなどの国々は軒並み経常赤字が拡大し、かつ国際競争力は低下(単位労働コストが上昇)してきたことが分かる。まさに、人からお金を借りて遊んでばかりいたキリギリスの経済であったわけだ。強い国際競争力を生かしてキリギリスに輸出し(代金を貸し付け)、自らは倹約に努めてきた経常黒字国であるドイツなどはアリの経済ということになる。

寓話の教訓は経済にも通用するのか?

 そもそも、オリジナルの寓話の教訓は、「普段からアリのようにまじめに働いて蓄えなさい、さもないとキリギリスのように飢えてしまいますよ」というところであろうか。個人や企業のレベルで言えば、まったくその通りに思える教訓である。正しいのはアリであり、不始末の責任はキリギリスが負わなければならない。

 ところが、寓話の中では正しいことが、マクロ経済の世界では間違っていることもある。拡大してしまった経常収支の不均衡を調整する経路はいくつかあるが、どのような調整手段を選ぶかによって、その後のアリやキリギリスの状態はかなり変わってくる。

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「「アリとキリギリス」の教訓は欧州を救わない」の著者

池田 琢磨

池田 琢磨(いけだ・たくま)

ノムラ・インターナショナル

野村総合研究所、郵政研究所、野村総合研究所アメリカ、ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルを経て、2007年より現職

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長