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「シニョレッジ」の“魅力”に負けると通貨価値の下落を招く

ワイマール・ドイツは1兆倍ともいわれるインフレに陥った

  • 宿輪 純一

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2011年1月17日(月)

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 通貨の本質を理解するために、重要な概念が「シニョレッジ(Seigniorage)」である。一般のかたには、なじみが薄い単語ではないか。実際、新聞や経済書、経済学の教科書でも、シニョレッジ、シニョリッジ、セイニアーリッジが混在している。訳語も、通貨発行益、通貨発行特権、通貨鋳造権、王権特権、君主特権などと様々である。

 シニョレッジとは、鋳造した貨幣の「額面」と「原価」(製造原価、場合によっては管理費用と回収費用も含む)の「差額」であり、発行者(通貨当局、多くの場合には中央銀行)が取得する収益と定義されている。この概念は貨幣が誕生した時代から使われている。「シニョレッジ」という言葉自体は、古代ローマの時代から使われているラテン語である。中世の封建領主をあらわらす単語が語源だ。現在、使われている意味の近い言葉としては、フランス語のseigneur(シニョール)、スペイン語のsenor(セニョール)などが挙げられるだろう。シニョレッジに当たるものは日本にもある。江戸時代では「出目(でめ)」といった。

(1)製造業的な発行益―狭義のシニョレッジ

 金本位制の下では、作成された100ドル金貨は、鋳潰して金地金にしても100ドル分の価値があることが原則であった。つまりが額面価値(金額)と実質価値(金額)が等しかった。しかし、歴史的には、鉱物としての金の量が少ないため、あるいは戦費をはじめとした財政資金を調達するために、金の含有量を減らした劣悪な貨幣を発行しシニョレッジを活用し始めた。その後、金貨などの鉱物貨幣を紙幣に切り替えた時点で、額面と価値の一致という規律がなくなった。言い換えれば、そのときからインフレやバブルの素地が出来上がった。

 例えば、現在の日本の場合を考えてみよう。あくまでも一般的な話であるが、1万円札の印刷コスト(貨幣製造費:財務省造幣局からの売渡価格)は約20円と言われている。単純化していうと、「額面価格-印刷コスト」で約9980円がそのシニョレッジとなる。しかし、通貨の世界はそれほど簡単ではない。

(2)中央銀行の利ざや―広義のシニョレッジ

 日本の紙幣は「日本銀行券」と印刷されている。視点を変えて考えてみると、日本銀行券を含めた中央銀行券は、名前が表す通り、「中央銀行の社債」つまり債務証書(借用書)である。しかも、実は“無利息の国債”と考えられる。国債や社債であったら、期限があり、利息の支払いが発生する。例えば額面100万円の国債を市中から購入し、その見返りに100万円の日本銀行券を発行すれば、「国債の利息分」が日本銀行の利益となる。国債からは利子を受けるが、通貨には支払利息が無い。これが広義のシニョレッジである。

 さらに考えると、日本銀行券(通貨)は“期限の無い社債”つまり返済期日の無い借金とも考えられる。返済の義務がないということは、「実質的には狭義のシニョレッジの定義が有効である」と考えることもできる。

 実は、この広義のシニョレッジは、合法的な中央銀行の収入として世界的に認められている。日本銀行によると、2009年度の国債利息収入は5995億円あり、収入項目では最も大きい。

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