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このままでは日本人の所得レベルは下がってしまう

GDP日中逆転を機に「一人当たり」で物事を考えよう

2011年2月23日(水)

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 新しい連載が始まります。タイトルの「ワンクラス上」は、私がワンクラス上だという意味ではありません。世の中には経済の入門書がたくさんあり、ネットを調べれば、入門段階の情報を簡単に入手することができます。それはそれで大切だと思います。しかし、経済は「あと一歩踏み込んで考えれば新しい風景が見えてくる」ということが多く、「その一歩はそんなに難しくはない」というのが私の考えなのです。

 常識的・表面的な知識に満足せず、もう一歩考えを進めてみたい。それがこの連載の狙いであり、私自身がその一歩を踏み出すつもりで書いていきたいと思っています。コメントも歓迎です。どうかよろしくお願いいたします。

 最初に取り上げるのは、「GDPの日中逆転現象」である。1月20日に中国のGDPが、2月14日に日本のGDPが発表され、中国のGDP規模が日本を上回ったことが確定した。日本の名目GDPは5.5兆ドル(479.2兆円)、中国は5.9兆ドル(39.8兆元)であった。

 この日中逆転をめぐっては「この逆転が何を意味するのか」「この逆転を契機として何を考えるべきか」といった議論がたくさん出た。

GDP規模の順位にはあまり意味はない

 まず、「この日中逆転は何を意味するのか」という問いに対する私の答えは、「あまり意味はない」というものだ。大きな理由は二つある。一つは、「当たり前過ぎて驚くに値しない」ということだ。

 GDPの規模は「人口」と「一人当たりGDP」の積である。中国の人口は13億3000万人、日本は1億3000万人だから、中国の人口は日本の10倍だ。すると、中国の一人当たりGDPが日本の10分の1を超えた段階で、中国のGDP総額は日本を上回る。

 中国経済が発展すれば、一人当たりGDPが日本に近付いてくるのは当然であり、それがようやく日本の10分の1のレベルを超えただけのことだ。今後一人当たりGDPが日本の5分の1のレベルを超えれば、中国のGDPは日本の2倍を超える。これも驚くに値しない。

 さらに言えば、インドの人口も11億6000万人だから、これまたインドの一人当たりGDPが日本の9分の1を上回った段階で、インドのGDP総額は日本を抜く。日本は世界第4位になるわけだが、これも驚くに値しない。

 要するに、経済規模という点では、日本は人口が圧倒的に多い国にかなうはずがない。にもかかわらず日本が世界第2の経済大国であったのは、日本の一人当たりGDPが圧倒的に人口大国の国々を上回っていたからであり、こちらの方が驚くべきことだったのである。

本当に重要なのは一人当たりGDP

 もう一つは、そもそもGDPの規模そのものにそれほど大きな意味がないということだ。意味があるのは「一人当たりGDP」である。

 私には「経済を考える上での憲法」のようなものがある。この憲法の条文は三つしかないのだが、そのうちの一つが「経済は人間のためにある」という大原則である。経済の最終目標は人々の生活を豊かにする(福祉水準を高める)ことであり、経済学は人々をより幸せにするための学問である。

 この原則で、「GDP規模」と「一人当たりGDP」を比較すると、国民福祉と関係するのは「一人当たりGDP」であることは明らかだ。一人当たりGDP水準が高ければ、国民一人当たりの平均所得は高くなる。所得が高くなれば必ず幸せになれるとは限らないが、所得が増えた方が幸せになりやすいことは明らかだ。

 一方、GDP規模が大きければ人々の生活が豊かになるとは言えない。規模が大きければ、国際経済社会での影響力が大きくなるというプラス面があることは否定しないが、基本的には経済規模と国民福祉のレベルは無関係である。

 実例で考えよう。例えば、世界銀行の集計によると(2009年)ノルウェーの一人当たり国民所得は、世界で3番目に高い(8万4600ドル)が、人口は世界で115番目(480万人)なので、GDP規模は世界で23番目である。我々は「所得は低いが人口が多いので、GDP規模は大きい」国と「所得は高いが人口は少ないので、GDP規模はそれほど大きくない」国のどちらに住みたいと考えるだろうか。答えは明らかに一人当たり所得水準の高い国である。経済規模を追及することはあまり価値がないのである。

コメント62件コメント/レビュー

人口オーナス期を迎える日本において、労働生産性を高めることこそ急務ではないだろうか。労働力人口が減少する中、労働参加率を維持するために移民政策が必要との意見もあるが、私はそうは思わない。日本では、様々な規制、慣習、既得権益などが資本、人材、市場の流動性を著しく妨げている。これらを取り払い、労働生産性を高める政策こそ、早急に取り組むべき政策ではないのか。(2011/03/02)

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「このままでは日本人の所得レベルは下がってしまう」の著者

小峰 隆夫

小峰 隆夫(こみね・たかお)

法政大学大学院政策創造研究科教授

日本経済研究センター理事・研究顧問。1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。2003年から同大学に移り、08年4月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

人口オーナス期を迎える日本において、労働生産性を高めることこそ急務ではないだろうか。労働力人口が減少する中、労働参加率を維持するために移民政策が必要との意見もあるが、私はそうは思わない。日本では、様々な規制、慣習、既得権益などが資本、人材、市場の流動性を著しく妨げている。これらを取り払い、労働生産性を高める政策こそ、早急に取り組むべき政策ではないのか。(2011/03/02)

シンガポールから投稿された方の意見に同感です。日本が大きすぎるというより、「このままでは日本がダメになる」とか日本全体という規模で何かやろうとするから、にっちもさっちも往かなくなってしまうんですね。業界でも地域でも、中央政治に頼らず、事を起こせるスケールでまとまって前に足を踏み出すことが必要だと思います。これからの日本が良くなるのは、その積み重ね以外ではありえないでしょう。最近の地域政党の出現も(まだまだ内容は物足りないが)皆がようやくこういう事に気がつき始めたからでは?と期待しています。(2011/02/26)

企業はGDPではなく、利益が行動基準である。国は、GDPが行動基準でなければならず、この企業と国の立場の違いを認識した上で政策をうたねばならない。新事業創出促進法にもとづく助成金を、派遣会社に出すなどといいう愚行は、背任に等しい。(2011/02/25)

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