• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

世界は日本の復活を信じている

行天豊雄・元大蔵財務官インタビュー

  • 市村 孝二巳

バックナンバー

2011年3月19日(土)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

―― 先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が3月18日朝、緊急電話会合を開き、各国が円高是正に向けた円売り協調介入に踏み切った。

行天 豊雄氏
国際通貨研究所理事長
1931年生まれ。55年東京大学経済学部卒、大蔵省入省。84~86年国際金融局長、86~89年財務官、米プリンストン大学客員教授などを経て、92年に東京銀行会長。95年から国際通貨研究所理事長。『富の興亡』『日本経済の視座』など著書多数。

行天 大変いいことだ。米連邦準備理事会(FRB)も欧州中央銀行(ECB)も、それぞれの(景気が回復に向かい、インフレ懸念が高まりつつあるという)国内事情を考えると、追加的な流動性供給には慎重な空気がある。それにもかかわらず、協調介入に踏み切ったということは、それだけ日本発の危機に対する厳しい認識をG7各国が共有しているということだ。各国が協調してくれたのだから、日本は一刻も早く危機を打開しなくてはならない。

―― G7会議で協調介入について合意できたことには意外感があった。

行天 これまでの円高局面とは違い、東日本大震災に見舞われた日本の当局が、異常な円高は全体的な観点から望ましくないから対策を取りたいといえば、今の状況で「それはやめたほうがいい」と言う人はいないでしょうね。

 国際的に、これ以上日本までもがさらに金融緩和をダメ押しするようなことはしてほしくないという気持ちがあることは事実だが、さりとて一般的かつグローバルな判断から当面の円高対策に反対、批判する空気はないでしょう。

―― 協調介入後、東京市場では円相場が1ドル=81円台まで下落した。今後の為替相場への影響をどう見るか。

行天 今までの急激な動きの中に投機的な部分があったとしたら、それは当然なくなるだろう。もちろん、円の実需に基づく取引は残るが、これは当面、それほど大きくならないと見ている。

 東日本大震災を受け、日本ではこれからエネルギーをはじめとする輸入需要が大きくなる。その一方で輸出は減り、貿易黒字も減る。そうなると円高であることのメリットが大きくなる。原油高が続いているため、天然ガスや石炭の輸入需要も高まるので、そうした面ではどちらかというと円高の方が好ましい。

 だから、円高是正を必要とする度合いは以前より減っている。今回の協調介入では、かつての介入と比べて円高阻止の効果が大きかったとは言えるが、日本経済の実態から見ると、むしろあまり円安が進むと困るというのが実情だ。1ドル=80円台の前半という水準なら御の字ではないか。

―― 円が急騰した原因は。

行天 巨大地震の直後、週明け14日以降の円相場がどうなるかという事前の市場予想では、多数意見ではないが、「円高ではないか」という意見もあったと思う。リスク回避という側面と、日本の保険業界をはじめとする企業が円資金を手当てする必要があり、それがドル売りにつながると。それに投機筋がどのくらい乗るか、ということだった。

 週明けの14日から、しばらくは様子見だったが、2、3日経った後、これは円高かなと思ってみんなが動いたということだろう。16日のニューヨーク市場でつけた1ドル=76円25銭という最高値は明らかに投機的な水準だ。流れは円高だと徐々に思い始め、みんなが便乗して加速した面はあるのではないか。

―― 巨大地震と東京電力福島第1原子力発電所の事故で、日本経済が著しい損害を受けているのに、円高になるのは腑に落ちないという声も多い。

行天 常識的に見たら日本経済の現状と平仄が合わないわけで、おそらく投機的に円を買っている人も、この水準が長く続くとは思っていないだろう。早いところ売り抜けようという短期的な思惑が重なっていると思う。取引が薄い中での典型的な思惑相場という感じだ。

 一般の見方と、マーケットとは判断の基準が違う。マーケットがみんな同じ基準で考えていれば、そんなに大きな食い違いは起こらないだろうが、現在の円相場に関しては全然違う判断基準があって、大半の人は分からない。むしろ日本経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)から見れば心配だ、という人が多いのだろうが、そういう人でも円売りに動くほどの自信もないので、動かない。そこで一部でも短期的には円買いだと思う人がいると、相場はそちらへ動いてしまう。

―― 1995年1月の阪神大震災後、円相場が79円75銭の既往最高値まで達するのに3カ月かかったが、今回は1週間もかからなかった。

行天 阪神大震災の時は全く前例のない出来事だったと受け止めた。あの時は、政府の対策もかなり遅れた。すぐに為替問題、金融問題に移る、という発想がにわかに浮かばず、専らフィジカルな経済問題としての受け止め方だったのではないか。

 少なくとも今は国際的に見て金融の役割が大きくなっているし、2008年以降の金融危機を経て、金融に対する感度が非常に高くなっている。当時は神経が痛みを感じるのに3カ月かかったが、今回は途端に反応した、ということだろう。国際的な滞留資金量の巨大化が、為替や金利の金融感度、ファイナンシャル・センシティビティを高めている。それが最大の原因だ。

 阪神大震災後の円高は今回と違い、当時の米クリントン政権の貿易赤字問題への対応や、米通貨当局のドル安志向が背景としてあった。今回の円高局面でも、米政府は一時、ドル安志向だと言われたが、最近の米国経済の回復ぶりからすれば、少なくともドル安を狙っている感じはない。その意味では1995年とは違う。

コメント1

「超円高 16年ぶり記録更新」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

トランプ政権のここまでの動きはスロー。

ジョセフ・ナイ 米ハーバード大学特別功労教授