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巨大地震の経済的影響をどう考えるか

2011年3月23日(水)

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 2011年3月11日に東日本沿岸地域を襲った巨大地震と大津波は、今後日本経済全体に大きな影響を及ぼすことになる。日本経済を襲った戦後最大級の経済的ショックである。その全容はこれから現れてくることになるのだが、ここでは、1995年の阪神・淡路大震災の経験なども踏まえて、影響の及ぶ経路や順番、必要となる対応などについて、現段階で考えられる範囲のことを述べてみたい。

 なお、以下では人命、負傷など人間そのものへの被害については触れない。これは、「経済的に重要ではないから」ではなく、「経済的影響という次元を超えた大きな問題だから」である。

 今回のような大災害の影響を考える時重要なことは、「フローとストック」「短期と長期」の区別である。「フロー」は、支出、生産、所得など、日々流れている経済活動を表す概念で、日頃目にしている経済成長率などの多くはフローの変数である。一方「ストック」は、ある時点での存在量を示す概念で、住宅、工場、社会資本などがその例である。

短期的には景気に大きなマイナスに

 まず短期的には、ストックの滅失が起きる(図1 ストックのフェーズ1)。今回の巨大地震、大津波は、大規模なストックの滅失を引き起こした。

 問題はその規模だ。1995年の阪神・淡路大震災の際に失われたストックは約10兆円と推計されている。これは全国のストックの0.8%に相当するものだった。今回の場合は、被害地域が極めて広範に及んでおり、95年以降相当のストックの蓄積が進んでいるから、滅失額は阪神・淡路大震災の規模を大きく上回ることになるだろう。

 この点については既にいくつかの被害額の試算が出ているが、いずれもこのストックの滅失額を推計したものである。具体的には、BNPパリバ証券の河野龍太郎氏が20兆円、野村証券の木内登英氏が12.7兆円、大和総研の熊谷亮丸氏が15兆円となっている(2011年3月17日日本経済新聞による)。まだばらつきは大きく、いずれは公的機関の推計が出るだろうが、現在のところは阪神・淡路大地震の規模を上回るという推計ばかりである。

 一方、フローの経済活動も大きな打撃を受ける(図2 フローのフェーズ1)。そのルートとしては、(1)被災地では生産、消費などの経済活動が物理的にストップすること、(2)物流が寸断されるため、部品と最終製品、製品と消費の現場との間が円滑に結ばれなくなること、(3)娯楽が控えられ、心理的にも不急の消費は行われなくなるので、全国的に消費が低迷することなどが考えられる。

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 阪神・淡路大震災の時も、発生直後の1995年1月には、消費、生産活動が落ち込んだ。今回は、これに、原子力発電所の事故、関東地区の停電の影響も加わるから、当面のフローの経済活動への悪影響は、かなり大きくかつ長いものとなるだろう。

 今回の災害が起きる直前までの多くのエコノミストの大方の景気認識は、「2番底はなく、2011年度は緩やかな景気の上昇が見込まれる」というものだった。しかし、このシナリオも見直しが必要で、2011年1-3月期、4-6月期のGDP(国内総生産)はマイナス成長となることを覚悟すべきだろう。

コメント8件コメント/レビュー

復興資金が必要だから“増税”ではなく、この際「日本の形」を基本から考え直す議論を国を挙げてしてみてはどうだろう。勿論被災地の復興は急務であり、出来るだけ速やかにやらねばならない。一方東京一極集中の脆弱さが、今回の震災で見えてきた。東京を直接襲う災害が起きたときには、日本中が麻痺してしまうだろう。「日本の形」を根本から変えるための投資なら、将来のための投資であり“つけ”を後世に残すことにはならないのではないだろうか。そのためには、政治、行政の形も根本から見直さねばならないだろう。(2011/03/24)

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「巨大地震の経済的影響をどう考えるか」の著者

小峰 隆夫

小峰 隆夫(こみね・たかお)

法政大学大学院政策創造研究科教授

日本経済研究センター理事・研究顧問。1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。2003年から同大学に移り、08年4月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

復興資金が必要だから“増税”ではなく、この際「日本の形」を基本から考え直す議論を国を挙げてしてみてはどうだろう。勿論被災地の復興は急務であり、出来るだけ速やかにやらねばならない。一方東京一極集中の脆弱さが、今回の震災で見えてきた。東京を直接襲う災害が起きたときには、日本中が麻痺してしまうだろう。「日本の形」を根本から変えるための投資なら、将来のための投資であり“つけ”を後世に残すことにはならないのではないだろうか。そのためには、政治、行政の形も根本から見直さねばならないだろう。(2011/03/24)

記事の震災復興財源では、旧来の既得権益予算が温存される。従来予算をカットして復興財源とするべきである。足りない部分は嘗ての湾岸戦争のときと同様に、税金で徴収すると良い。(2011/03/23)

「娯楽が控えられ、心理的にも不急の消費は行われなくなるので、全国的に消費が低迷することなどが考えられる」まさにその通りだと思います。なんでもかんでも節制すればよいというものではないと思いますが、今はひたすら我慢みたいな風潮は、経済の落ち込みを促進していく負のスパイラルに思えてなりません。(2011/03/23)

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