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震災で明らかになった政治の深刻な構造的課題

「真性ねじれ」が阻む危機時の政治的意思決定

2011年4月6日(水)

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 3・11ショック(巨大地震、大津波、原発事故)は、人命救助、被災者支援、原発施設の安定化、放射能からの避難、食品の汚染など、次々に緊急対応の課題を突きつけている。それぞれに応えていくことはもちろん重要だ。しかし、日々の短期的な対応に追われていればこそ、長期的な課題について考えておくことも必要だ。

 今回の3・11ショックは改めて構造的な課題を考える契機ともなっている。これにはいくつかのタイプがある。例えば、「今回の災害があって改めて鮮明になった構造的課題」がある。原子力発電所の安全性、災害弱者としての高齢者の存在などがそれである。また、「災害からの復興を新しい日本の姿につなげていく」という視点も必要だ。復興を単なる過去の復元とするのではなく、安全で高齢者に優しい地域づくりにつなげていくといったことがこれに当たる。

 この二つの視点を併せ持つ日本の構造的課題。それが日本の政治だ。

震災後の政治への失望

 実のところ、今回の災害が起きる前、この連載の第3回(3月23日)は、日本の政治的意思決定の課題を、「ねじれの経済学」として取り上げるつもりだった。

 そこに起きたのが3・11ショックである。これで私の執筆予定はすっかり狂ってしまった。それは、「もっと大きな課題が出てきた」というだけではなく、「書こうと思っていた課題が解決してしまった」(と思った)からである。しかし悲しいことに全くそうはならなかったのだ。

 私は、震災前に、日本の政治的意思決定システムは機能不全に陥っており、これが経済にとっても最大のリスク要因になると考えていた。これを再び機能させるためには、政策決定に際して与野党が政策面で歩み寄り、特に長期的な課題に対しては、超党派の合意で対応していくような慣行を形成していくことが必要だと考えていた。

 しかし、それは言うは易く行うは難し。よほどの国家的な危機にならなければ、超党派合意などは期待できないだろうと考えていた。ところが、まさに最大級の国家的危機になったのだ。

 3・11ショックの後、私は、これで超党派合意の先例ができるだろうと考えた。危機の直後、野党である自民党からは「政府のやりたいようにやればいい。何でも協力する」という声が聞かれた。私は、民主党がマニフェストの実現をあきらめてこれを復興財源とする代わりに、自民党に協力を求める。自民党もこれに協力して、当初の予算案を通し、改めて補正予算を編成する。与野党の党首が揃って記者会見して、国民に一致協力した対応を求めるという図まで想像していた。

 民主党はもともと内心ではマニフェストを負担に思っていたはずだ。今回の災害で巨額の財源が必要であり、これ以上国債に頼ることは危険であることは誰にでも分かるのだから、これを機会に、上記のようなシナリオが実現するだろうと考えたのだ。

 ところがこのシナリオがなかなか実現しない。これほど明瞭な戦略をどうして民主党は採用しないのか? 新聞を読むと依然としてマニフェストへのこだわりがあるということらしいが、これほどの危機が起きたのだから、マニフェストの前提はとうに吹き飛んでいる。なぜまだマニフェストにこだわるのか? あまりにも不思議な出来事に、私は考えていると気持ちが悪くなりそうであった。

 冒頭の3・11ショックと構造的課題の議論に戻ると、私はこの震災を契機として超党派合意の慣行が形成され、これからの政治的意思決定のモデルになって欲しいと思った。それが「災害からの復興を新しい日本の姿につなげていく」ということである。しかし、それは今のところ実現していない。これほどの危機に際しても超党派合意が実現しないのであれば、どんな問題にも超党派合意などあり得ないことになる。「今回の災害があって改めて日本の深刻な構造的課題が明瞭になった」ということである。

 ではなぜ私はこの点にそれほど期待していたのか? この点を理解していただくためには、震災前の状況に戻ってもらうことになる。

「ねじれ」とは何か

 震災前の日本の政治にとっての最大の問題は「ねじれ状態」の下で、いかにして円滑な政治的意思決定を行っていくかであった。では「ねじれ」とは何か。

 「ねじれ状態」とは、衆議院と参議院で多数政党が異なることを指す。ねじれ状態になると、内閣の政策遂行能力はかなり阻害される。それは、衆参両院の関係が次のような三層になっているからだ。

 第1層は、首相指名、予算、条約であり、これについては憲法で衆院の議決が優越すると規定されている。簡単に言えば、参議院が違う決定をしても「関係ない」わけだ。

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「震災で明らかになった政治の深刻な構造的課題」の著者

小峰 隆夫

小峰 隆夫(こみね・たかお)

法政大学大学院政策創造研究科教授

日本経済研究センター理事・研究顧問。1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。2003年から同大学に移り、08年4月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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