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「増税が復興につながるって本当ですか?」

池上 彰さんが経済学者・齊藤 誠さんに聞く(上)

  • 池上 彰,齊藤 誠

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2011年4月7日(木)

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 東日本大震災の発生から1カ月が経とうとしています。いまだに懸命の救援、復旧活動が続いていますが、その先の復興へ向かうには、国の総力を挙げた取り組みが必要です。

 未曾有の試練に直面し、再生の原動力となる経済成長には、過去の延長線上にない発想の転換が求められます。

 この時に大きな指針を与えてくれるのが経済学の知見。これからの日本をどう作り直していけばいいのか――。

 ジャーナリストの池上彰氏が、マクロ経済学者の齊藤誠氏に聞きました(この対談は2011年3月15日に行われました)。

池上 東日本大震災を経験した日本は、痛みの中から立ち直らなければなりません。そこで重要となるのは今後の経済政策ですね。これまでの政策とは恐らく全く違う考え方が必要になると思うのですが、どんな政策が必要なのか、お聞かせいただけますか?

齊藤 誠(さいとう・まこと)
一橋大学大学院経済学研究科教授1960年生まれ。83年京都大学経済学部卒業。92年マサチューセッツ工科大学経済学部博士課程修了、Ph.D.取得。住友信託銀行調査部、ブリティッシュコロンビア大学経済学部などを経て、2001年4月から現職。2007年に日本経済学会・石川賞、2010年に全国銀行学術研究振興財団・財団賞受賞。主な著書に『金融技術の考え方・使い方』(有斐閣、日経・経済図書文化賞)、『資産価格とマクロ経済』(日本経済新聞出版社、毎日新聞社エコノミスト賞)、『競争の作法』(ちくま新書)。(写真:陶山 勉、以下同)

齊藤 「失われた10年」も含め、これまでの日本のマクロ経済政策は、金融と財政面から呼び水を作って、需給ギャップを埋めていくという発想でした。需要をどう盛り立てるという経済政策だったわけです。

 しかし、今回のように生産設備、社会資本、人的資本、農林地、漁場が壊滅的な被害を受けた場合は、広い意味での生産ストックと人的資本という供給側を再構築していくしか復興の道はありません。

 総需要政策は、少しの呼び水があればそれ以上に価値を生み出す乗数効果があるのですが、供給側に軸足を置いた経済政策では、物や人、そしてお金を調達し、それを東北の方へ配分していく政策に転換していかなければなりません。これまでの需要中心の政策発想を根本から変えていかなければいけないのです。

池上 これまでは供給は十分だけど需要が追いついていなかった。今は既に供給が追いつかないという状況です。あえて言うと、終戦直後と同じような状況かもしれません。

「補助金や給付金はいらないと言うことも必要」

齊藤 供給力をうまく回復させるためには、政策フレームを大きく変え、需要創出のためにやっていた景気対策的な予算支出を思い切ってスクラップすることも考えるべきです。

 私は、政策転換は国民の願いだと思うのです。被災しなかった人たちは、被災した人たちの役に立ちたいと思っているに違いありません。自分たちのお金や、できれば労力を提供して、震災地の人たちのためにどうにかして役に立ちたいと。既にボランティアをしたいとか、寄付をしたいという動きは出ています。しかし、個人でできることは非常に限られています。それを国家レベルでやっていくためには、国民が今までの需要喚起政策である補助金や給付金など「もういらない」と言うことも必要です。

池上 彰(いけがみ・あきら)
ジャーナリスト1950年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。科学文化部記者として経験を積んだ後、報道局記者主幹に。94年4月から11年間「週刊こどもニュース」のお父さん役として、様々なニュースを解説して人気に。2005年3月NHKを退局、フリージャーナリストとして、テレビ、新聞、雑誌、書籍など幅広いメディアで活躍中。主な著書に『伝える力』(PHPビジネス新書)、『知らないと恥をかく世界の大問題』(角川SSC新書)、『そうだったのか! 現代史』(集英社)など多数。

池上 誤解を招かないようにしたいのですが、これまでは作っても売れなかった。でも、これからは作ったら作っただけニーズがある、という状況に変わるわけですね。

齊藤 供給力の再構築がきわめて高い収益性を持っているのは間違いありません。ただ先ほども言ったように、そのためには、人、物、金が必要です。

 もう1つは、元通りに戻すかどうかです。阪神・淡路大震災の場合は比較的範囲が限られた都市圏でもあり、元に戻すということでコンセンサスが取れました。今回はあれだけの広域が壊滅的な被害を受けたので、全部を元に戻すには無限の資源が必要でしょう。

 復興の方法にも選択と集中が求められます。地域を振興しつつ、住民のニーズや考えを反映させるのはもちろんですが、元の通りを目指していくのではなく、新しい東北の形を考えていく方向で、人、物、金を生かしていく。復興の具体的なプランに関しては、新しい地域振興のあり方の明確なビジョンを出していく必要があると思います。

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