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「復興庁」は補助金の窓口が一つ増えるだけ

「恐るべき現場任せ」のシステムを生かす機転を

2011年4月6日(水)

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 今回の震災は最初にマグニチュードの大きさに驚き、津波被害の甚大さに言葉を失い、そして福島第1原発の放射能汚染の広がりに怯えた。被害の全容がまだ明らかにならず、被災者の捜索も続いている段階だが、この震災に対する国の対応にはどのような問題があったのかを省み、これから国と自治体はどのように対応したらいいのかを考えることが時期尚早だとは思わない。

 この未曾有の大震災は日本の防災システムの弱点をすべて露顕させてしまった。原発事故の全容がいつまでたってもわからず、被災地域への物資補給が遅れて被災地や避難場所での犠牲が拡大したのは、災害の規模が国の対応能力の限界を超えてしまったからではなく、災害の規模にかかわらず、そもそも国が防災の現場に直接かかわることを想定していないからなのである。そのため、国の対応は現場の危機が限界になってからの後手ばかりで、何一つ先手を打てていない。

 以下、初動、予算、法律の観点から、日本の防災システムの問題について検討していきたい。

恐るべき現場任せ

 原発事故に対応するために東海村臨界事故の教訓で制定された原子力災害対策特別措置法で定めたスキームによって、現地のオフサイトセンターに設置される現地対策本部と原子力災害合同対策協議会の組織図には、奇妙なことに関係機関を結ぶ線が描かれてない。

 しかし、これとそっくりの名札掛けのような組織図を、県の災害医療担当として出席した航空機事故災害対策会議で見たことがある。「組織図の指揮命令系統が明確ではありませんが、国土交通省は指揮権を持たないのですか」と質問すると、同省空港事務所の担当官は「本省は広報だけやります。現場対応は空港会社にお任せしていますので、本省はやりません」ときっぱり答えた。事務局も組織図に線は書き入れられないと答えた。

 原発事故対策でも同じ構造があるようで、国は事故の対応は東京電力任せで、広報しかやっていなかった。官房長官は「現場はコントロールされています」と繰り返し語っていたが、「東電情報によれば」という括弧付きだったし、今なお事故現場の指揮権を持つ気はない。

被災地への補給線確保責任を持つ官庁がない

 他国と比較することが適当かどうかわからないが、こうした大災害時に米国なら災害出動した軍が現地を支配する。被災地上空に偵察機を飛ばし続け、とくに原発事故現場の上空には大型ヘリをホバーリングさせて継続的な情報収集にあたるだろう。

 自衛隊は阪神・淡路大震災直後の偵察飛行で被害状況を正確に把握していたが、現場の指揮権を持たないので情報が生かされなかった。今回も自衛隊は津波被害や原発事故の重大さを直後から把握しているのに、その情報を生かす指揮権を与えられていない。現地に10万人も派遣された丸腰の自衛官の主たる任務は情報収集ではなくガレキの片づけだ。

 米国では被災地への物資の補給線は連邦緊急事態管理庁(FEMA)が確保する。FEMAは災害発生から3日以内に食料、水、医薬品、燃料、交代要員などを届けるため総力を上げる。最初の3日間だけは現場の人員と備蓄でがんばってくれというのが、FEMAの約束である。

 日本でも米国でも人間の忍耐力のタイムリミットは同じだから、3日の災害備蓄に省庁は多額の補助金を出している。彼我の決定的な違いは、実際に災害が起こった時、3日以内の補給線確保に責任を持つ官庁が日本には存在しないことだ。そのため今回の震災では、2週間経っても補給線が完全に確保されず、孤立した被災地や避難所で被害が拡大してしまった。

 原発事故の現場任せはさらにひどかった。すべての電源を同時に失い、緊急炉心冷却装置が一つも作動しないという未曾有の緊急事態に対して、国の命運は原発所員が握る懐中電灯に委ねられたのである。発電所長は、炉心溶融のカウントダウンが始まっているというのに、原子炉を無傷で保全しようとして、海水注入のタイミングを逸してしまった。

 中央集権だと言われる日本の行政システムだが、実はこのような現場任せの構造を内在させている。大災害時、国は下位機関から上がる情報をじりじりと待っているだけで、自ら現場を仕切ることはない。現場は事態の収束を第一に計りながら、数時間遅れの情報を義務的に報告する。

 しかし今回は現場から情報が全く上がらない地域もあった。その結果、1週間たっても被災者の概数すらわからず、原発の水素爆発の発表は5時間も遅れた。国が独自の情報収集をやっと開始し、水素爆発による深刻な放射能漏れの状況を把握したのは2週間以上も後だったが、事態を悪化させた責任はすべて現場にある。

 このシステムが戦争中の大本営とあまりにもそっくりなので、ちょっと不気味になる。

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「「復興庁」は補助金の窓口が一つ増えるだけ」の著者

石渡 正佳

石渡 正佳(いしわた・まさよし)

千葉県県土整備部用地課土地取引調査室長

1958年千葉県生まれ。産廃Gメン時代に出版した『産廃コネクション』(2002年)が2003年「日経BP・BizTech図書賞」を受賞した。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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