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グランドデザインよりは地域ごとの最適化を目指せ

三菱総研 小宮山理事長からの提言(上)

  • 小宮山 宏

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2011年4月12日(火)

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東日本大震災からの復興計画について議論が続いている。この震災をどのようにとらえ、どのように被災地を立て直していくのか、様々な意見が出ている。復興計画を進めるうえでの前提条件と、日本がこれから目指すべき方向について、今回と次回(4月19日予定)にわたり、前東京大学総長で、現三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏による提言を掲載する。

小宮山 宏(こみやま・ひろし)
 三菱総合研究所理事長
 1944年12月15日生まれ。67年東京大学工学部卒業、72年東京大学大学院工学系研究科にて博士課程修了。
 88年より東京大学教授、同大学院教授などを経て、2005年に同大学総長に。2009年4月に同大学総長顧問に就くとともに、現職に就任した。
 工学博士。専攻は化学システム工学、地球環境工学、知識の構造化。
 主な著書に、「地球持続の技術」(岩波新書)、「知識の構造化」(オープンナレッジ)、「東大のこと教えます」(プレジデント社)、「『課題先進国』日本」(中央公論新社)、「知識の構造化・講演」(オープンナレッジ)、「Vision 2050:Roadmap for a Sustainable Earth」(Springer)、「低炭素社会」(幻冬舎)など多数

 今、私たちに必要なのは、起きてしまったことを受けて、ポジティブにこれからについて議論することです。

 今回の地震によって福島第1原子力発電所で起きた事故は、歴史的に類を見ません。

 地震発生4日後の15日に、原発周辺の空気中で観測される放射線の量は増えましたが、それ以降は、文部科学省の統計を見ると、順調に減少しています。これは核分裂生成物の崩壊が進み非放射性に移行していることを意味しています。

 ですから、これから原発を取り巻く事態は徐々に沈静化していくでしょう。原子炉は、長い時間をかけて冷やし続けなくてはなりません。私は、遠からず、安定して制御できるようになると見通しています。

 ただし、いったん原発が安定を見たとしても、周辺地域へ与える影響は続きます。規模も甚大です。原発の近隣に住んでいた人たちは、いったい、いつ家に帰れるのか。農作物や水産物への影響はどの範囲まで広がり、いつまで続くのか不透明なままです。

 個人的には、文科省のデータなどから、農作物や水産物は何の心配もないと思っています。ですが、その認識を、復興していくプロセスの中で、日本と世界の人たちにどう共有してもらっていくかが課題だと感じています。

 では、復興計画についてどのように考えればいいのでしょうか。国内ではプロセスを論じる前に、目指す姿が必要だという意見があります。

 よく誰かがグランドデザインを描く必要があると言われますが、私はそうは思いません。
 というのは、グランドデザインを描ける人など、いないからです。

 2000年問題を覚えているでしょうか。1999年末に世間を騒がせたあの事案です。コンピューターは2000年と1900年を区別できないため、あちこちで大きなトラブルが生じるのではないかと話題になりました。99年の大みそかには、夜間のフライトがキャンセルになるなどの対策が取られたほどでした。

 実はあの時、システム担当者の誰もが、自分の製作した範囲に限っては、問題が起らないことを確認できていました。

 しかし、複雑化したシステムには、自分の担当範囲には、自分が作ったもの以外のシステムが多く取り込まれています。そのため、誰一人として、全体のことは分からない状態になっていたのです。

複雑化した社会ではグランドデザインは描けない

 私たちがこれから目指す、復興後の将来もまた、複雑化したシステムと同じです。

 この全体を把握できる人、つまりグランドデザインを描ける人など、いないのです。

 ですから「グランドデザインを描こう」という掛け声はあちこちから出ていますが、これまでも誰一人、グランドデザインを示せた人はいません。「総理のリーダーシップの下、一丸となって」物事を進めていこうという提言もあるようですが、それでうまくいくというのは幻想ではないでしょうか。

 では、どう取り組めばいいのか。
 グランドデザインがなくとも、日本が道を誤らずにここまでやってくることができた理由は明白です。それは、現場が優秀だったからです。それは、今回の東京都消防庁や被災した自治体の現場の担当者の働きぶりを見ても分かることです。

 ただし、1つ忘れてはならないことがあります。現場に頼りすぎるのも、また考えものなのです。今回の原発の事故で、それも明らかになりました。

 現場の知恵は往々にして、明文化されていません。職人の名人芸を弟子が盗んで学ぶ世界です。これが、日本の現場の強さであり、弱みでもあります。

 ある程度の規模までは、個人の名人芸が通用します。伝統工芸などの世界だけにはとどまりません。例えば、化学プラントでも、そうです。機械や触媒などのクセを知りぬいた経験豊富なオペレーターが運転すると、書類上の生産能力を超えた量を作ることができる。計算されつくしたプロセスよりも、熟練の職人による手仕事の方が、より効率よい成果を得る例は、枚挙にいとまがありません。

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