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放射能防護服や通信機器が足りない

米軍や仏アレバから提供を受ける

  • 清谷 信一

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2011年4月20日(水)

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 「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえる」。これは自衛官が任官時に読み上げる宣誓文の一部だ。

 東日本大震災において、多くの自衛官がその文言通りの姿勢で災害派遣の現場で任務に就いている。今回の自衛隊の働きを見て、多くの国民は「やはり自衛隊は頼りになる」と再認識したはずだ。だが彼らの活動を支える装備の充実に関しては、実はお寒い限りだ。

 軍隊はふつう、ヘルメットや戦闘服、コンバット・ブーツと同様、装備の一部としてセーターを支給する。だが自衛隊はセーターを支給していない。隊員たちは、駐屯地や基地内の売店で売っている自衛隊指定のセーターを買う必要がある。筆者の知る限りセーターを支給していない軍隊はない(北朝鮮は知らないが)。昔、退官したある陸将にこの件を尋ねたら「予算に余裕があれば支給したい」とのことだった。

 この話を海外の軍人や軍関係者にすると例外なく驚く。途上国でも「セーターを支給するのが当たり前」というのが常識以前の認識だからだ(北朝鮮に関しては知らないが)。戦時に前線でセーターが必要になった場合、駐屯地に戻って売店で買えというのだろうか。まだ寒い東北の災害派遣の現場で、セーターは必要ないのだろうか。

 自衛隊は、戦車や戦闘機などパッと見、分かりやすい正面装備の調達には湯水のように金をかけている。だが、一見地味だが必要不可欠な装備には金をかけていない。正面装備や武器だけで戦争はできない。前の戦争で散々高い授業料を払ったはずだ。

 無線機、偵察用オートバイ、トラック、防弾チョッキ、NBC(Nuclear, Bio, Chemical)スーツなど多くの装備が、実は定数を満たしていない。また既存の装備の多くが耐用年数を過ぎており、実用上問題のあるポンコツだ。陸上自衛隊の内部資料によると無線機、偵察用オートバイなど、まともに稼働するのは3割程度にすぎない。

NBCスーツの備蓄がまったく足りない

 まずNBCスーツについて見よう。今回、1カ所の原発事故に対処するために、発生直後、米軍から1万着のNBCスーツの供給を受けている。同様にフランス原子力大手アレバ社と仏電力公社(EDF)からも放射線防護服1万着とその他の装備の提供を受けている。これは自衛隊のNBCスーツの備蓄が極めて少ない証左である。

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 ちなみに軍用のNBCスーツやガスマスクは、放射線から人体を防御できるわけではない。しかし、フォールアウトが身体に付着するのを防止することができる。スーツやマスクのフィルターには活性炭などを封入しており、呼吸器を通って体内に吸入されるのを防ぐこともできる。

 例えば10万人のために、1日2着、3日分を備蓄するとなると60万着必要だ(基本的にNBCスーツは使い捨てだ)。大規模なNBCR(核・生物・化学・放射能)災害が数日で収束するとは思えない。仮に原発がより深刻な状態になり、自衛隊が何十万人もの住民を避難させる事態になったとしよう。仮に1万人を動員するとしても、先の60万着の備蓄は一カ月で底をつく。

 しかも自衛隊は、ヘリや戦闘機、偵察機など、航空機の乗組員用のNBCスーツを装備していない。他国は当然、装備しているものだ。また、航空部隊は通常NBC訓練を特に行っておらず、必要な時は地上用のスーツを使うことになっている。だが今回その使い勝手の悪さが現場で問題となった。

 NBCスーツの備蓄には膨大な費用がかかる。このためどこの国もNBCスーツを備蓄するための予算確保に頭を痛めている。だが我が国は唯一の被曝国であり、放射能汚染の怖さが身にしみているはずだ。しかも安全保障上の脅威として、北朝鮮が弾道ミサイルに搭載するかもしれない核弾頭や、ダーティボム――核物質などを通常の爆発によってまき散らす――攻撃、あるいは原発に対する破壊工作などが想定されている。またオウム真理教事件では地下鉄サリン事件や炭疽菌テロなどで化学・生物テロも体験した。我が国はすべての種類のNBC攻撃を受けた唯一の国家である。もっとNBCR戦に対する備えをすべきだろう。

隊員の私用携帯電話を使って連絡を取りあう

 陸自の普通科(歩兵)は、演習場の広さの制約から約200名の中隊規模で演習を行うことが多い。この時、無線機の数が足りないので、他の中隊から借りて何とかその場を繕っている。しかもその無線が通じないことが多いので隊員たちは私物の携帯電話で連絡を取り合っている。携帯電話がないと演習にならないのだ。

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