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3・11ショックが景気に及ぼす影響

急激に落ち込んだ後、一転して急激に回復

2011年4月20日(水)

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 3・11ショック(巨大地震、大津波、原発事故)は、短期的な景気の変動に空前の影響を及ぼしつつある。津波が経済を襲うようなものだ。日本は短い間に、かつて経験したことのないような大きな景気の波動を経験することになるだろう。それは「急激に落ち込んだ後」に、一転して「急激に経済活動が回復する」という大きな波となるだろう。

もう一度ストックとフローについて

 前々回のこのコラム(3月23日)では、大震災直後でまだ具体的な材料が乏しい中で、概念的な整理だけを行った。要点だけもう一度述べておこう。

 震災の経済的影響としては、まずストックが大規模に滅失する。同時にフローの経済活動もレベルが下がる。ここまでが「フェーズ1」の局面である。しかし、ある程度時間がたつと、フローの経済活動が回復してくるのに加えて、ストックを回復するための投資需要がこれに上乗せされるので、むしろ経済活動は上向く。これが「フェーズ2」の局面である。

 その後時間が経過するにつれて、この基本的なストーリーをサポートする材料が出てきた。その材料を紹介しながら、「フェーズ1から2にかけての経済のスイングの大きさはどの程度になるのか」「その転換点はいつごろになりそうか」、そしてその結果「3・11ショックによってどのような景気波動が生まれるのか」について、より具体的に考えてみたい。

内閣府の「震災のマクロ経済的影響」の試算をどう見るか

 最初に紹介するのは、内閣府の試算である。これは3月23日に行われた月例経済報告の参考資料として公表された。限界はあるが、まずはその被害の大きさの一次的接近として、公的な推計が出たことの意義は大きい。その主な結果は次の通りである(オリジナルの資料は案外見つけにくいが、こちらで見ることができる)。

 まず、道路や住宅などの滅失金額は16兆~25兆円になる。阪神大震災の滅失金額は約10兆円だったから、これを大きく上回ることになる。「16~25兆円」という数字はその後各方面で引用されているので、多くの人が目にしていると思う。

 内閣府は、フロー(実質GDP)への影響も試算している。大震災の経済的影響がGDP総額の何%に相当するかが示されている。ただし、オリジナルの表は分数表示で、しかも幅付きなので非常に分かりにくい。そこで私が、中央値を普通の数字で作り直してみたのが下の表である。

 2011年度の後半から2012年度にかけてGDPの1.1%程度の大きな影響が現われるとされている。日本の潜在成長率は1.5%前後とされているのだから、これはかなり大きいと言える。なお、1995年1月の阪神・淡路大震災の時には、震災後の実質GDP成長率にはほとんど変化は見られなかった。フローへの影響という点では、今回の大震災は「桁違いに大きい」影響を及ぼすことになる。

試算についてもう少し考えてみる

 さてこのような試算結果を紹介して終わりにしてもいいのだが、この連載の狙いは「もう一歩踏み込んで考えてみよう」ということなので、次のような三つの角度からさらに掘り下げてみよう。

 第1は、概念の問題だ。今回の3・11ショックの経済的影響を金額で示そうとする時、多くの概念が入り乱れている。「被害額」「直接的被害と間接的被害」「復旧費用」等々である。これを私なりに整理すると次のようになる。

 前述のようにフェーズ1でストックが滅失する。これが「直接的被害」である。さらにフローの経済活動も打撃を受ける。これが「間接的被害」だ。両者を足し合わせたものが「被害額」となる。その後、滅失したストックを元に戻す必要があり、そのために必要な投資金額が「復旧費用」となる。原発関連で避難している人々への補償(これは投資ではない)などもあるから、これらも含めたものが「震災関連全体の経費」となるだろう。今回の内閣府の試算は、ストックの滅失額として「直接的被害」を推計し、さらにフローの「間接的被害」を計算したものである。しかし、この他にも、自粛ムードによる消費の抑制、海外からの訪問者の激減、そして被災者の方々の物心両面での悲惨な状況など、この試算には含まれない経済的影響もあることを忘れてはならない。

 今回の試算は「復興の過程で、今後どの程度の経済的負担が必要となるのか(復旧費用)」を示しているわけではないこと、また、この試算には含まれていない経済的影響も大きいということに注意する必要がある。

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「3・11ショックが景気に及ぼす影響」の著者

小峰 隆夫

小峰 隆夫(こみね・たかお)

法政大学大学院政策創造研究科教授

日本経済研究センター理事・研究顧問。1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。2003年から同大学に移り、08年4月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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