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ECB総裁選びにつきまとう“密約説”

後継者レースからドイツ連銀の大本命が離脱

2011年4月21日(木)

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 ECB(欧州中央銀行)総裁トリシェ氏の任期が、今年10月末で満了する。後継総裁として、長らく衆目一致の最有力候補であったのが、ドイツ連銀総裁のウェーバー氏だ。しかし、何と同氏は2月11日にドイツ連銀総裁職からの辞意を表明(正式辞任は4月30日)し、事実上、後継者レースから離脱してしまった。

 次期ECB総裁について、EU当局は手続き上、今年6月のEUサミットでの正式決定を目指している。そのため、人選の時間的猶予は限られており、大本命候補による突然の離脱宣言で、後継者レースは土壇場で大番狂わせを見ている。

ECB総裁後継レースから大本命候補が離脱

 ウェーバー氏がECB総裁の後継レースから離脱した理由は、次の2点に集約される。

 1つは、同氏が出身母体であるドイツ連銀の伝統を汲んだ、ECB理事会メンバーで随一のインフレファイターであること。そしてもう1つは、ECBが全会一致のコンセンサス形成を重視するカルチャーにある点だ。

 ドイツ連銀の法的責務である「物価安定の維持」を最優先課題に位置付けるウェーバー氏は、欧州債務危機でECBが打ち出した「国債買取策」に対し公然と反対を唱えてきた。そのあまりの強硬姿勢に「債務危機下のECB総裁として不適格」との懸念や批判が強まっていた。それと同時に、ウェーバー氏自身も、意見対立の溝を埋めることはもはや困難との判断に至った模様だ。

 以下に述べる通り、ECBは旧ドイツ連銀のいわば「クローン」として、様々な政治事情を反映しつつ、ユーロ発足前年の1998年に誕生した。それから約13年の年月が経過。最近では、ユーロ債務問題の深刻化という「存亡の危機」にも直面した。今回の離脱劇をこうしてやや長めの時間軸で改めて振り返ると、ECBは生誕時の政治制約から徐々に距離を置く「親離れ」の年齢に差し掛かかったと同時に、環境変化に対し自己改革を遂げることで生き延びる「適者生存の進化」を迫られているように、筆者には思われる。

「経済」より「政治」優先でユーロ創設

 広く知られている通り、ユーロ創設は、ドロールEU委員長や仏ミッテラン大統領、独コール首相といった80年代~90年代初頭の欧州政治主導者の強力なリーダーシップに支えられた。「経済的な論理」よりも「政治的な論理」を、より大きな礎として推進されてきたのである。

 具体的には、特にフランスが猛反対した東西ドイツ統一について、当時のEC諸国はこれを無条件で承認した。東ドイツを即座にECに迎え入れる代償として、ドイツは通貨マルクを放棄し、単一通貨の採用に踏み切ることを承諾したのである。

 ただし、新しい通貨同盟は西ドイツの中央銀行制度を規範に組織する、という約束が取り交わされた。「ユーロの番人」として、1998年6月に発足したECBが、所在地をフランクフルトに置き、旧ドイツ連銀をモデルとして「物価安定の維持」を金科玉条に政策運営を行なってきた背景には、こうした「生い立ちの経緯」がある。

「密約説」に振り回されたECB総裁ポスト

 しかし、ユーロやECB誕生を強力に推進した「政治的な論理」は、同時に足かせにもなってきた。例えば、初代、第2代のECB総裁の人選は一筋縄では行かなかった。

 ドイツは初代総裁として、ECBの前身組織であるEMI(欧州通貨機関)の総裁職にあったドイセンベルク氏を推薦した。同氏は、ドイツ連銀と同じくインフレファイターとしての伝統を誇るオランダ中銀総裁を長く務め、オランダ財務相も歴任した人物である。しかし、一方では、ECBをフランクフルトに設置することを承認したフランスへの見返りとして、初代総裁はフランス出身者になるとの説もあり、実際にフランス側は対抗馬として、同国中銀総裁だったトリシェ氏を正式に推薦した。

 独仏の平行線が長引いた結果、初代総裁は大国出身者にすべきでない、という総意が形成され、ようやくドイセンベルク氏の総裁就任で合意に至った。だが、その際の付帯条件として、ドイセンベルク氏の任期半ばでの退任、及び、後継にはトリシェ氏を任命することが「公然の密約」として取り交わされ、折り合いが付いた、という経緯にある。

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「ECB総裁選びにつきまとう“密約説”」の著者

武田 紀久子

武田 紀久子(たけだ・きくこ)

国際通貨研究所 経済調査部上席研究員

1989年、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入社以来、一貫して市場関連業務に従事。1999年、為替アナリスト班立ち上げメンバーに。以降、マーケット・エコノミストとしての活動を続けている。2015年10月より国際通貨研究所へ出向。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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