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電子マネー活用した迅速な義援金支給を

行動経済学者が気仙沼で考えた復興の具体策

2011年4月27日(水)

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 被災地の経済活動を復興させるためには今、何が必要なのだろうか――。行動経済学の分野で活躍する経済学者、米アリゾナ州立大学の田中知美助教授は、東日本震災後、支援物資を携えて宮城県気仙沼市を訪れた。自らの目で現地を歩き、問題の解決策を探るためだ。

 震災から1カ月以上経った今、被災地の経済活動を復興するために求められる視点とは何か。まずは「被災者に購買力をつけ、被災地での購買活動を活発化させることが望ましい」と田中助教授は指摘する。義援金の支給方法や有効な土地利用の方策について、海外で起きた災害支援の事例などを例に挙げながら具体的な支援策を提言する。

 筆者は東日本大震災後、2度にわたって気仙沼市に支援物資を持っていき、3つの避難所を訪問し、避難所の運営者や被災者にインタビューした。現場の声を基に、災害発生直後、避難所はどのような問題を抱えたか、そして被災地ではどのような支援が求められているのかを報告したい。また、経済学者として今後の地域経済復興について具体的な策を考察しようと思う。

 気仙沼市最大の避難所である気仙沼市総合体育館は、ピーク時で約1800人の被災者を受け入れ、4月11日現在も800人以上の被災者が生活していた。しかしこの体育館には、食糧や水の備蓄はなく、避難所として機能するために最低限必要な炊事場・風呂などの設備さえ備えられておらず、地震直後は電気・水道の供給も停止した。

 最初の3日間は被災者に食事を提供できなかったが、3日目から津波の被害に遭わなかった近隣の自治体による自主的な炊き出しが始まり、少ないながらも被災者に食事を提供し始めることができた。自衛隊による炊き出しがはじまったのは、地震後1週間以上経ってからだ。

 避難所を運営している方々は、「本来なら国レベルで緊急時の食糧供給システムが構築されているべき。避難所に指定されている施設にはある程度の量の食料と水の備蓄が必要だ」と指摘していた。

義援金を一刻も早く被災者の手に

 地震から1カ月経った頃、衣食住の問題は相当解決し、商店にも商品が並ぶようになった。だが仕事を失って生活費に困窮した被災者が多く、この時点で一日も早い義援金の支給が望まれていた。

 政府は4月8日、義援金の基準を、住宅全壊・全焼の場合35万円、住宅半壊・半焼の場合18万円、死亡・行方不明は1人あたり35万円と設定した。また中央共同募金会と日本赤十字社は、地震から1カ月以上たった4月13日になって初めて、義援金の第一次配分を福島県、栃木県、長野県に送った。震災での被害が大きかった宮城県や岩手県には、さらに遅れて義援金が送られることになった。

全壊した夫の職場跡を訪れる女性。一命は取り留めたが、夫は失業した(筆者撮影、以下同)

 震災での被害が大きかった地域では罹災証明の手続きに時間がかかり、義援金の交付にはさらに時間がかかってしまう。被害の全容を把握してから配分すべきという意見もあるが、失業し、当面の生活費にも困っている被災者の方々のためには、一日でも早い義援金の支給を始めることが望ましい。実際、海外には多くの実例がある。

 迅速な義援金支給について、日本は、米国や国際連合、さらには途上国における災害援助の経験に見習うべきことが多いのではないだろうか。例えば2005年8月29日、米国南東部がハリケーン「カトリーナ」による被害を受けた時、米国政府は9月9日から11日までの3日間に、被災者一人当たり2000ドル(当時の為替レートで約22万2千円)をデビットカードとして支給している。その支給総額は3日間で1230万ドル(当時の為替レートで約13億6530万円)にも上っている。

 赤十字社も同様に、個々の被害者にデビットカードを緊急発行した。9月11日以降は、米国政府が銀行口座に直接義援金を振り込む制度に切り替え、被災者が連邦緊急事態管理庁(FEMA)のホームページに銀行口座の情報を入力することで義援金受け取りの手続きが出来るシステムにした。カトリーナの場合、災害から2週間以内に早くも義援金の給付が始まり、給付のシステムも確立していたということになる。

海外では携帯電話の電子マネー機能を利用

 ほかにも見習うべき事例はある。国連世界食糧計画(WFP)は2009年、シリアに居住するイラク人難民に迅速に生活費を支給するため、携帯電話の電子マネー機能を利用して生活費を振り込むことを試みた。またアイルランドのNGO “Concern Worldwide”は、2008年のケニア暴動の際、携帯電話の電子マネー機能を利用して被災者の携帯電話に直接入金。その後もアフリカの数カ国で、携帯電話の電子マネー機能を利用した貧困世帯への直接生活支援を展開している。この電子マネーの優れている点は、政府自治体から被災者に直接生活費が振り込まれるので行政コストが削減され、迅速な対応が可能なことだ。

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「電子マネー活用した迅速な義援金支給を」の著者

田中 知美

田中 知美(たなか・ともみ)

合同会社エッジ代表

米ハワイ大学経済学科博士課程修了。カリフォルニア工科大学ポスドク、アリゾナ州立大学助教授、慶応義塾大学特任准教授などを経て現職。専門は行動経済学・政策実験。1969年長崎県生まれ。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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