• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

処方箋2:先進装備の導入を進め、部隊をダウンサイジングせよ

「何をいつまでにいくつ調達するか」を明らかに!

  • 清谷 信一

バックナンバー

2011年4月28日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 これまで3回にわたって、自衛隊には必要な装備を調達する資金的余裕がなく、既存の装備の維持整備費にも事を欠いている現状を述べた。それは今回の大震災の現場でも露呈している。その原因は少なからず予算の使い方に問題がある。

 装備調達や維持整備予算の執行を効率化すれば大幅に調達コストを下げることができる。また部隊規模も問題だ。現状は予算規模から見れば不可能な規模の部隊を無理して維持している。部隊の規模が大きければ、より多くの装備、より多くの整備・維持費、より多くの人員が必要だ。

自衛隊は“高い買い物”をしている

 まず装備調達コストの問題を検証してみよう。よく知られているが、自衛隊の装備の単価は高い。概ね諸外国の2~5倍程度だ。調達コストが高いために1年当たりの調達数が確保できない。だから量産効果が上がらない。だからコストが高くなり、調達数が減るという悪循環に陥っている。また必要な数を調達するのにかかる時間が長期化し、調達が完了するころには旧式化していたりする。また、必要な調達数を調達する前に後継装備の調達が始めるケースもある。

 まず、ライフルについて見よう。64式小銃(ライフル)の後継である89式小銃は価格が約30万円。先進国が使用するライフルの概ね5倍の価格である。89式を導入した当時、カナダのC7ライフル――米国のM-16のライセンス生産品でその分コストが高い――の単価は7万円だった。ちなみにM-16の単価は約5~6万円ほどだ。その89式は1989年以来、20年以上調達を続けているが、いまだに調達が完了しない。

 このため自衛隊は旧式の64式小銃を今も併用し続けている。2種類のライフルがあるということは、弾薬、パーツ、訓練、そして兵站も二重に必要だということだ。例えば64式小銃は火薬を10%削減した7.62ミリ減装弾を使用している。5.56ミリ弾を使用している89式と弾薬の互換性はない。同じ部隊で2種類のライフルがあると弾薬の融通が利かない。89式を使っていた隊員が、補充で64式を渡されても、操作に戸惑うし、命中は期待できない。まして、生死をかけた実戦ならなおさらだ。つまり効率が悪い。

 戦車はどうか? 2010年度予算で最新型である10式の導入が決まった。今後74式、90式、10式と、3世代の戦車が同居する期間が続く。つまり訓練も兵站もパーツも3重に必要となる。

 戦時において部隊が損耗した場合、再編成のために装備や補充を受ける。火力も機動力も防御力も異なる3種類の戦車が同じ部隊に混在すればまともに戦えない。野球に例えるならば、リトルリーグ、高校野球、プロ野球の選手が同じチームで戦うようなものだ。また、例えば90式の乗員が死傷しても、74式あるいは10式しか扱ったことがない戦車搭乗員では補充にならないので、人員補充も苦しくなる。弾薬の補給や整備の面でも不利なことは言うまでもない。

「何を、いつまでに、いくつ」導入するか計画がない

 軍隊の装備調達計画は、周辺諸国などの動向を鑑み、「10年先にはこのような装備が何個連隊分必要だ」として立てる。例えば、中国の戦車の世代交代が進んでいる。それに対抗するためには10年後には陸上自衛隊に何個連隊分の新型戦車を導入し、それをいつまでに戦力化し、その総額はいくらか、という計画を立てる。この計画を議会に提出して予算としての承認を得る。

 ところが我が国には「この装備をいくつ調達し、いつまでに戦力化し、その総額がいくらになる」という計画が事実上存在しない。防衛省は、内部ではそのような見積もりや計画を持っているが、多くの場合、それは発表しない。国会も討議しない。

 防衛省・自衛隊は大綱の別表に、戦車など一部の主要装備の定数を記している。だが、その質や、型式までは明記されていない。例えば2010年に閣議決定された大綱も、10式戦車をいつまでに合計何両導入するか、あるいは戦車の定数400両のうち何両を10しきとするのか、を明記していない。また90式など既存の戦車の近代化などについても述べていない。だから70年代に調達され、現代では生存率が極めて低い74式戦車も、まともな近代化を施すことなく放置してきた。10式戦車がそろうまで、脅威の方がまってくれるとでもいうのだろうか。

 つまり日本の国会は、装備の調達数、調達期間、総予算も知らないまま、換言すると調達プログラムを精査しないまま、装備調達の予算を承認していることになる。防衛省は「装備をいつまでに、どれだけ調達するのか」について、「単年度予算である」を理由としている。しかし、大半の国は単年度予算制を採用しているので納得しがたい。

 自衛隊の装備調達は、民間企業で言えば設備投資だ。新工場を建設するとして、取締役会が、その工場に何台の工作機械が必要で、いつから稼働できるのか、投資総額がいくらかかるも知らないまま新工場の建設を決定し、工事を開始することはない。

 こんなことは民間企業ではあり得ない話だし、外国の軍隊でもあり得ない。

 政治が軍(自衛隊)の予算と人事を掌握することは文民統制の根幹である。だが、現状は、国会が防衛省の予算をまともに管理できているとは言い難い。つまり文民統制の根幹ができていない。普通の民主国家では手続き上あり得ない状態だ。

 だから、調達期間という“締め切り”がなく、いつまでもダラダラと装備調達を続けることになる。5年後までに必要な装備が20年後にそろっても、そのころにはとっくに旧式化している。

 5年後までに必要とする装備がそろうのが20年後でも良いというならば、その調達は本来必要がないということになる。装備を調達するのは、十分な抑止力を確保し、有事に必要な戦闘力を確保するためだ。例えば10年後に戦争が起こり、その時に必要とされる装備の3割しか戦力化できていなければどういうことになるか。調達期間を無視した軍備の整備はあり得ない。現状では装備の調達自体が目的化している。

コメント0

「自衛隊の装備を検証する~震災対応から垣間見える課題」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

日本全体として若い世代にもっと所得の分配をしていくべきだと思う。

川野 幸夫 ヤオコー 会長