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“フクシマ”原発事故後、本当にプレゼンスを上げる国はどこか

2011年5月6日(金)

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 今回の“フクシマ”原発事故は、国際関係にどの様な影響を及ぼすであろうか? かつて、1970年代にフランスの外務大臣から「1789年のフランス革命の評価は?」と聞かれた当時の周恩来中国首相は、「それを評価するのは未だ早すぎる」と応じたそうである。

 中国4000年の歴史を背景にした周恩来らしいもの言いだが、今回の事故の影響も、長期的にどの様な大きな影響を及ぼすかは、なかなか想像がつかない。しかし、当面の影響なら、ある程度は予測できる。今回の事故の当事者である日本の技術力イメージ、ブランド力に大きな傷がついたことは否めない。

フランスの利害得失

 福島第1原子力発電所の原子炉が、古いとはいえ米ゼネラル・エレクトリック(GE)の設計が基になっているので、米国の技術に対する信頼も、ある程度は損なわれただろう。だから、これまで、高品質の工業製品を国際市場で日本と競ってきた、例えばドイツなどが工業製品の輸出などで相対的に有利になるだろうし、日本を急速に追い上げてきた韓国も同様だろう。

 将来の途上国での原発ビジネスでも、フランスと韓国が非常に有利になり、両国は国際政治的な影響力をも中期的に高めていくだろう。フランスはこれまで途上国向け武器輸出を単なる商売だけでなく国際政治上の影響力確保の梃としても積極的に利用してきたが、これに原発が加わることになり、かつての栄光の地位に復帰することは全く無理ながら、今まで以上に国際的なプレゼンス、影響力を強めることになるのではないか? 

 ただし、単純にフランスが勝ち組になるとは言えないだろう。と言うのは、東隣にして、これまでフランスとともにEUの中核を担ってきたドイツが、反原発に舵を大きく切ったので、原発を軸に両国関係がギクシャクすることも十分予想できるからだ。

 欧州に住んだ経験がある人は良く分かるだろうが、欧州というのは、日本人の想像以上に狭い地域であって、例えばパリからドイツ国境までは、東京-名古屋間程度の距離しかない。原発大国フランスでは、ドイツ国境方向に20基以上の原子炉があり、万が一フランスの原子炉が重大事故を起こせば、偏西風に乗って、放射能がすぐ東側のドイツに大挙して飛んでいく事になる。むしろ、福島-東京間よりも事故の際の危険度はずっと高い。ドイツの反原発運動の盛り上がりは、単に自国の原発に対してだけ向けられているだけでなく、当然フランスの原発政策に対する批判も込められている。放射能汚染に国境など全く存在しない。

 ただでさえ、金融危機、ユーロ危機で加盟国間にきしみが出ているEUにとって、独・仏間に緊張が高まれば、EUやユーロの将来に大きな暗雲が垂れこめる。それに、原発の輸出市場におけるフランスの優位性も、シニカルな見方をすれば、フランス製の原発が重大事故を起こすまでの「100日天下」なのかもしれない。その場合、フランスが受ける経済上、政治上のダメージは、日本の比ではないだろう。

電気自動車と中東の利害得失

 端的に言って、今回のフクシマ事故は、電気自動車にとっては大きな逆風になるだろう。電気自動車のビジネスモデル、特に日本のそれは、24時間経常運転されるために、電力需要が大きく下がる深夜に過剰発電となる原子力発電所の、深夜余剰電力を利用して充電し、朝からの利用に備えるというものであった。

 元来、余剰電力であるため、深夜の電力料金は大幅に割引されており、かつ原発起源の電気なので、CO2を余り出さないというのが電気自動車の「売り」であった。ところが、少なくとも東日本では、原発の深夜余剰電力が一瞬してなくなってしまった。この状況では、深夜割引料金も早晩なくなり、また電気自動車用の電気はほとんどが化石燃料を使用して発電されたものとならざるを得ず、CO2を余り出さないと言う売りは成り立たなくなる。こうなると、電気自動車のメリットはほとんど消え、使い勝手の悪さと、車体価格の高さだけが残ることになる。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師