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オープンな協働を促進する「グリッド2」に移行せよ

今井賢一・米スタンフォード大学名誉シニアフェローの提言(前編)

  • 今井 賢一

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2011年5月19日(木)

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 大震災の復旧とそれを契機とする再興計画を巡っては、ネットでの論戦を含めると既に議論が百出している。そこで本稿では、それらの議論でやや欠けていると思われる「グローバルな思考」を加え、編集者からの注文であるマネジメント論を取り入れた私見を述べてみたいと思う。

 論点を具体的にするために、ある仮定を置こう。いま日本では、夏のピーク時の電力不足が大問題になっているが、もし日本の北九州市と韓国の釜山市との間に海底送電ケーブルが敷設されたなら、どうだろうか。

 韓国の電力需要は冬がピークで夏には余力がある。日本のピーク時には韓国から送電してもらい、逆に韓国の冬のピーク時には日本の余剰電力を送電する。これができれば、お互いにピーク時の電力不足という危機は解消され、世界的な資源の有効利用にもなる。

 これは今現在ではあくまで仮定の話にすぎないが、北九州市と釜山市の間はわずか200キロの距離だから、海底送電は決して非現実的な発想ではない。

 事実、英国とオランダの間には「BritNed」と呼ばれる海底送電線がこの4月1日に開通し、両国間で送電が始まっている。また、フランスでは2003年の熱波の際にピーク時の電力が不足し、隣国から10倍近い値段で電力を購入したと聞く。もし海底送電線があれば、その費用を大きく節減できたであろう。

 仮に日本の電力不足が長期にわたって続く可能性が出てくれば、韓国側から「共同で海底送電線に投資すれば双方の利益になりますよ」と提案してくるかもしれない。しかし、それを受けるには、日本の電気事業法をはじめとする「ルール」を変更し、国を開く必要がある。

ノーベル経済学賞候補が新興国で見た「パズル」

 既に天然ガスにおいては、世界中で国境をまたいだ地下パイプラインが敷設され、現在も多くの敷設プロジェクトが計画されている。

 「国境をまたぐ」ということは、古典的な主権概念の基本であった他国の「領土」に侵入し、主権を侵害することになる。しかし米スタンフォード大学のスティブン・クラズナーなどの国際政治学者は、1648年のウエストファリア条約以来の主権概念は既に形骸化しており、むしろパイプラインのような形で「主権をシェアすること(shared sovereignty)」が望ましいと主張している。

 それを可能とするためには、「シェア」のルールを新たに作り、共有されるようにしなければならない。

 ノーベル賞の受賞者候補と目されている経済学者のポール・ローマーは、このような「ルールの変更」に関して興味ある議論を持ち出している。ここで言う「ルールの変更」とは、彼が解説用に使った電力と通信の例で具体的に記すと、こういうことである。

 ローマーはある新興国の空港で、少年たちが空港の街路ベンチに座って街路灯の下で勉強している姿を見た。その中には携帯電話を持っている少年もいた。

 私なら、その光景を別に変わったことではないと見過ごすかもしれない。しかし技術革新による内生的な経済成長を専門とするローマーにとっては、この光景はルールにかかわる本質的な問題を象徴している「パズル」に映った。

 現代の最先端技術の1つである携帯電話を持つ少年が、なぜ自宅ではなく空港の街路灯の下で勉強しているのか──。

 言われてみればまさにパズルだが、それは「ルールの違い」から解釈できる。この新興国では、発電に多額の補助金を出しているので、電気の供給を増やそうとすれば国の赤字が増大する。だから供給を増やせない。そのため、しばしば停電が起きる。

 こうした事情から、少年は自宅を出て空港の街路灯の下で勉強しているのだろう。他方、携帯電話の方は普及を目指して電話会社が安い価格で供給し、需要の増加によってコストを回収するビジネス・ルールに依拠しているため、少年たちも携帯電話を利用できるのだ。

 従って、少年たちが自宅で落ち着いて勉強できる環境をつくるには、発電に補助金を出すというルールを変更しなくてはならない。これは、ローマーが講演で聴取者を引きつけるために使ったイントロダクションだが、以下の議論にも関係して分かりやすく本質を突いている。

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