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「人材立地」を維持発展させる特区都市を東北に

今井賢一・米スタンフォード大学名誉シニアフェローの提言(後編)

  • 今井 賢一

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2011年5月20日(金)

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 東北の復旧と復興を考えるには、エネルギー問題だけではなく、人々の仕事と所得をどのような産業で持ちこたえ、それをどのように将来につなげていくかを構想しなければならない。

 私がここでまず強調したいのは、今回災害を受けた地域は、岩手県北上市、同県花巻市、山形県長井市など、これまでの10年ぐらいの間に日本製造業の基盤として力強く発展してきた産業集積のある中小都市群から構成されているということである。

 震災後、新聞に掲載された「世界への重要部品の供給が止まる危機」(いわゆる「サプライチェーンの危機」)というような記事を見て、大新聞の中枢にいた私の友人すら、今回初めて気づいたと言ったくらいだから、東北地方の工業基盤の重要性は一般的にきちんと認識されていない。

 その原因の1つは、1970年代後半以降に優良企業の誘致に成功してきた北上市ですら、しばらく前は最貧地域であり、優良企業がそうした地域に立地する魅力が何かについてあまり知られていないことにある。

 私も一橋大学名誉教授の関満博の長年の調査を通じて理解し、若干の研究をしているだけだが、企業にとっての魅力は、具体的には地元の工業高校で育った製造業の現場での、仕事を生きがいとする若手の人材なのである。

東北の最大の資産は、「仕事を生きがい」とする若者たち

 地元で育ったと言うと平凡だが、その人材が育つまでには、県庁の実質的なトップリーダーの戦略的な行動がある。まず中小企業大学校での教育や人脈を生かして、地元の唯一の経営資源である工業高校の卒業生を東京の先端中小企業に就職させる。そして長男と長女だけになる「少子化時代」では、就職先の企業で鍛えられた彼らがやがてUターンすることを見越し、極めて積極的な企業誘致を行ってきた。

 さらに、北上市より豊かな花巻市などでは、「誘致ではなく、内発型を目指すべき」と考える行政のリーダーや若手経営者が、Uターン組の海外勤務を防ぐために、地元で独立させるための技術支援や営業支援を行うというような、さまざまな「連鎖」の中で形成されてきたものである。

 関満博はこれを「人材立地」と言っており、今後の東北経済を考えるうえで極めて重要な視点である。いま、大企業の多くは製造拠点を海外に移転しているが、基幹部品の工場を1つ日本国内に残すとすれば、東北地方における工業集積地の工場だと言われているぐらいである。

 この「人材立地」の成功に基づく産業集積は誠に貴重な資産であり、これを失わないようにすることが、産業復興への第一歩である。そのために今すぐでき、かつ緊急に必要なことは、東北地方の日本海側とのリンクだ。

太平洋側と日本海側をリンクした人材ネットワークを

 4年前に新潟県中越沖地震が柏崎市を襲った時、同市のインフラも企業の生産能力も急速に回復した。そこには柏崎青年工業クラブの若者たちの活躍があったと言われる。

 今回の震災とは規模が違うとはいえ、同クラブの若者たちは問題の具体的なポイントを直ちに理解するはずだ。太平洋側と日本海側とのリンクが進めば、より広い人材のネットワークが形成されるであろう。

 こうした今すぐにもできる人的ネットワークの強化に取り組み、彼らの創意工夫を引き出せるような「人材グリッド(網の目)」を地方都市単位でつくる。これが産業復興計画の起点になる。

 地方都市を単位にするのは、前編で引用した経済学者のポール・ローマーが指摘するように、「特区」として新しいルールや組織をつくるには、「国家」単位では大きすぎ、「村」単位では小さすぎるからである。日本ではこの際、実質的な地方分権を進める「特区都市」をつくるべきである。

 その「特区都市」では、復旧・復興のための「電力供給プロジェクト」「サプライチェーン支援プロジェクト」「医療・介護プロジェクト」「危険社会における安全プロジェクト」など、現在の応急措置を補強し、5年ぐらいの期間でのさまざまな中期プロジェクトを実施する。

 そのためにまず必要なのは、それらの各プロジェクトを動かし、かつ諸プロジェクト間の連関効果をつくる人材ネットワークである。この「特区都市」では、それを単なる在来型のネットワークではなく、前編で述べた「グリッド2」の機能を担い得る強さを持った新たな司令塔を備えたネットワークにする。

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