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「案はけっこうと思いますが、財政からいうと金がありませぬ」

第4話 「大風呂敷」と言われた計画と蔵相・井上準之助との“攻防”

  • 山岡 淳一郎

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2011年5月20日(金)

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 東北の被災地には中央省庁の官僚も、かなり張りつくようになった。地震・津波と原発事故の複合災害に苦しめられている南相馬市にも経産省、総務省から官僚が出向している。そのなかの一人は、地元出身者だ。今回の津波で父を亡くし、実家は流された。自らも被災者なのだが、ぐっと踏んばって市民のために奮闘する姿には頭が下がる。

 まずはシステムよりも人だ、と被災地を回っていて感じる。
 が、一方で、霞ヶ関で被災地支援に携わる官僚は、こう述べる。

 「中途半端な政治主導のおかげで、わけのわからないお絵描きに時間を費やされています。現地に行政官が足を踏み入れたのに効果が出にくい。たとえばお盆前までに仮設住宅に被災者が全員入ることの工程表づくりに膨大な時間がとられている。大切なのは工程表ではなく、実際に被災者の方々の『住まい』を確保することでしょう。関東大震災や第二次大戦後のパソコンもプリンタもなかった時代に焼土の復興計画を立てた人たちがいたはずです。下手に情報化したために霞ヶ関は無駄な資料づくりに忙殺されています。どうにかしてほしい。動ける被災自治体へは、仮設住宅というモノではなく、現金を渡したほうが本当の復興につながるかもしれません。災害復旧費用は、一義的には道府県が負担しますが、後で国が特別交付税で補てんします。だったら最初から被災地にお金を渡したほうがいい」

「モノより現金を」

 被災自治体の首長からも「モノより現金を」という声が上がっている。立谷秀清・相馬市長は指摘する。

 「国は現金に○○用復興費と荷札をつけて自治体に送ってくれりゃいい。そうすれば何にどれだけ使ったかも透明にできる。これだけ財政が苦しいのにドンブリ勘定で、たかだか2年で壊される仮設住宅を建てて、あとで真水も泥水も一緒に補てんじゃ筋が通らない」

 医師出身の立谷市長は、独居高齢者のための「長屋風共同住宅」を考案している。広場をコの字型に住宅が囲み、それぞれのプライバシーを守りながらコミュニティの一体性を持たせるデザインだ。仮設住宅と同程度の建設費で「恒久住宅」がつくれるという。被災した自治体のなかには、このような現実的なアイデアが次々と芽吹いている。

 それらを生かすも殺すもお金の使い方。政府の財政・金融政策にかかっている。

 政府は、東日本大震災での直接被害額を、原発関連は別にして16兆~25兆円と試算している。原発事故を含めると、それは30兆円超に達すると予想される。阪神・淡路大震災の直接被害額は10兆円弱だったから、改めて今回の被害の甚大さを思い知らされる。

 阪神・淡路大震災の復興事業費は、10兆円弱の被害に対して16兆3000億円。復興費の出所は、国及び国関係団体が53%、地方と地方関係団体が37%、民間事業者等が10%を占めた(財・ひょうご震災記念21世紀機構の資料より)。

 このバランスを、東日本大震災の被害額30兆円と仮定して当てはめると、復興事業費は48兆円。国及び国関係団体の復興事業費は25兆円を超える。2011年度は少なくとも10兆円の復興予算の計上は必須とみられる。この資金をどうひねりだすのか。

 阪神・淡路大震災の復興では、1995年2月、5月、10月と補正予算を矢つぎ早に組み、財源は主に国債発行を当てた。3度の補正予算で計9兆円弱の国債が発行されている。大きな経済ショックに財政出動で応じる、極めてオーソドックスな方法が採られた。

 ところが、菅首相は、当面の復興財源として「復興再生債」を発行し、数年間に限った消費増税で償還する意向を示している。菅政権の復興構想会議は「中間整理案」で、

・臨時増税として所得税、法人税、消費税、化石燃料への課税など多角的に検討
・復興債を発行する場合は償還財源も明記

 と、提言した。

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