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「増税はずっとあとでいい」のウソ

  • 國枝 繁樹

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2011年5月24日(火)

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ポイント

・復興財源と財政再建は切り離して考えても意味がない

・復興国債を長い時間をかけて償還するという主張は問題

・「復興連帯税」という発想で理解を求める方法も

 3月11日に起きた東日本大震災、そしてそれに引き続く福島第1原子力発電所の事故は、我が国経済に深刻な打撃を与えた。今後の日本の経済政策のあり方にも大きな影響を与えるのは必至であり、既に経済学者、エコノミスト、その他の有識者により様々な議論がなされている。

 しかしながら、現在見かける議論の中には、経済学の観点から首をかしげたくなる主張もある。我が国においては、そうした経済学的に怪しげな議論が政治的に支持されて、現実の政策に反映され、悲惨な結末を招いてしまうことも多い(これは、多くの先進国でも見られる現象である。経済政策に関心を持たれる方は、ポール・クルーグマンが米国における怪しい経済学の盛衰を描いた『経済政策を売り歩く人々―エコノミストのセンスとナンセンス』(ちくま学芸文庫)を読むことをぜひ勧めたい。現在、我が国で怪しい経済政策を主張する論者達と同様の政策プロモーター達が、米国にもいたことがよくわかる好著である)。

 本稿においては、今後の我が国の経済政策を考える上で有益なヒントとなるであろういくつかの論点につき、経済学の立場から触れることとする。

天災や戦争による支出の財源についての標準的な考え方とは

 まず喫緊の課題ということで、今回は復興財源を巡る議論について触れてみたい。今回強調したいのは、復興財源を巡る議論を今後の財政再建のあり方と切り離して論じることに意味がないという点である。

 今回の東日本大震災からの復興に必要な財政支出は巨額とならざるをえないが、その一部は不要不急の財政支出を削減することで確保するとしても、とてもその全額を支出削減だけで調達することはできない。従って、増税か追加的な国債発行が必要となる。しかし、国債発行分もいずれは増税により償還する必要があり、結局、増税か国債かの選択は、増税のタイミングをどう考えるかの問題となる(永遠に国債を借り換えれば増税は不要とする「ポンジー財政政策」等については、その誤りを次回説明する)。

 標準的な経済理論においては、(一時的な)天災や戦争による財政需要に対する財源のあり方は、課税平準化(tax smoothing)仮説およびリスク・シェアリングの2つの論点から論じられる。復興財源を巡る議論は数多く見受けられるが、このどちらかの論点に言及していない議論は、経済学的には不完全なものと言わざるをえない。

 バロー・ハーバード大学教授により唱えられた課税平準化仮説は、現在および将来の各期間を通じた経済厚生の低下幅を最小化するような税率設定を考える。一時点における税による経済厚生の低下幅は税率の2乗に比例するので、通時的に経済厚生の低下幅を最小化するには税率を一定に保つことが望ましいことを簡単なモデルにより示すことができる。災害により一時的に支出が増大した場合、支出増に応じて増税を行うが、国債の発行により増税幅は抑制して、時間をかけて償還を行うことが望ましくなる。

 リスク・シェアリングの観点からは、地域間のリスク・シェアリングと世代間のリスク・シェアリングが考えられる。地域間のリスク・シェアリングにおいては、今回の震災のように一国の特定の地域に限られた災害の被害については、増税により他の地域の住民も費用を負担することが求められる(ただし、増税により被災地域の住民の負担まで重くならないように配慮する必要がある。例えば、所得税・法人税の増税による場合は被災者に対する特別な控除等を用意する必要がある。また、消費税等の間接税の場合には控除等による被災者に対する負担軽減は難しいため、支出面で別途、配慮する必要がある)。

 世代間のリスク・シェアリングとしては、将来世代にも負担をシェアしてもらうことが考えられる。復興国債を発行し、将来世代に対する増税で償還を行えば、将来世代に費用の一部を負担させることが可能である。リスクは広くシェアすること望ましいため、復興国債の償還を短期間で行う必要はなく、時間をかけて償還していけばよいこととなる。

 こうした議論に基づき、復興国債を発行するとしても、増税幅を抑制し、時間をかけて償還を行えばよいという主張を行う論者もいる。残念ながら、こうした主張は課税平準化仮説や世代間のリスク・シェアリングに基づく議論としては重大な問題がある。次にどこに問題があるか説明することとしよう。

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