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「ここで解散すれば復興がまた遅れる。政策が政局に翻弄されてしまう」

第5話 「私権」に群がる勢力に切り刻まれた帝都復興案

  • 山岡 淳一郎

バックナンバー

2011年5月27日(金)

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 深夜、南相馬市の宿で、この原稿を書いている。市内の旅館やホテルは復旧関係者でほぼ満杯だ。なかなか空きがなくて、一泊3500円、トイレと風呂は共同、無線LANありという研修施設のような宿がやっととれた。福島第一原発から24キロのところにある。

 昼に訪れた市役所で、男が猛然と窓口の女性職員に食ってかかっていた。金ラメ入りのジャージに蛇革の靴を履いた男が、ホールじゅうに響き渡る大声で、「さっさと手続きをしろ!」と怒鳴った。「義捐金」の受取りで、横車を押していた。

 南相馬市は原発から30キロ圏内の規制された各世帯に日本赤十字と県からの義捐金合わせて40万円を配分している。義捐金を受取るには、当然、市民である確認が必要だ。市内に住民票があれば住民基本台帳ですぐに照合できる。住民票を市内に移動していない世帯は、公共料金の明細書、賃貸借契約書などを示せば居住が確かめられる。

 男は、南相馬市に住む事実を証明できるものを何も持っていなかった。

 「地震とゲンパツで、着の身着のまま福島に逃げたんだ。書類なんかあるわけねぇだろ!」

 「では、ご本人以外で、どなたか、そこに住んでいたことを証言してくださる方いますか」

 「なにぃー。ふざけるな。おめぇらが逃げろといったでねぇか。さっさとやれ」

 「どなたか、いらっしゃらないでしょうか」

 若い女性職員は、路上で行き会えば避けて通りたくなるような男の顔をしっかり見すえて対応していた。まったく動じていなかった。震災以後、どれだけ市民の激しい突き上げを食らったのだろうか。職員たちも被災している。身内を亡くした者も少なくない。

 修羅場が彼女を鍛え上げたようだ。

 男は、空き缶でも放り投げるように、知人の名前をぞんざいに告げた。

 「どっかに避難してっから、連絡しろ」。男は、脇の書類台に腰かけ、蛇のような執念深さでからんだ。女性職員は、住民基本台帳を開いた……。その顛末がどうなるか見届けたかったのだが、取材の予定時間がきて、私はその場を離れた。

一致しない被災三県知事の方向性

 原発事故の収束が長引くにつれて、さまざまな「エゴ」が顔を出す。

 菅首相肝いりの復興構想会議には、岩手、宮城、福島の被災三県の知事が委員として参加している。これまでの議論を眺めると、現場を背負っている彼らの提案には、文化人委員の寝言のような提案とは異質のリアリティが感じられる。

 ただし、その方向性は必ずしも一致していない。
 岩手の達増拓也知事は、先月末「三陸沿岸の復興は『復興道路』の整備から!!」と打ち上げ、「三陸縦貫自動車道」などの縦貫軸(自立復興支援道路)と「東北横断自動車道釜石秋田線」などの横断軸(復興支援道路)のネットワーク構築が不可欠と提言した。「高台居住」も前面に押しだす。達増知事は、まちづくりに関して具体的な提案を並べている。

・大胆な市街地再編を可能にするため、被災市街地復興区画整理事業に代わる新たな制度

・防災集団移転促進事業の拡充(被災した土地を適切な価格で買い上げる等)

・堅牢な建築物(避難ビル)を配置するための国の支援

・小規模集落が安全な居住地(高台等)に移転するための要件緩和

・定期借地権利用の場合の補償金助成……

 と、大規模な公共事業を復興の柱にしたいようだ。

 一方、宮城の村井嘉浩知事は、ハードの提案もさりながら、しくみへの言及が目立つ。国に対しては災害対策税などを含む「財源確保策」、「津波地域の公有地化・共有地化(漁協・市場・水産加工場ほか)」、「大震災復興広域機構の創設」、「東日本エコ・マリン特区の創設」などを求めている。さらに「東北への危機管理代替機能整備」と、首都機能の分散まで復興構想会議に持ちだした。

 どれも大胆な提案といえそうだが、他の知事からは反発も受けている。達増知事は「震災復興税には、岩手県は反対である」と文書で表明。さらに復興を機に「道州制」は「行け行けゴーゴーだ」と記者会見で持論を述べた村井知事に対し、福島県の佐藤雄平知事は「それぞれの地域の実情に合わせた復興に取り組んでいるさなかに、道州制を視野に復興を進めるという意見には賛同できない」と、これまた文書で反対している。

 福島は、いまも深刻な原発被害を受け続けており、復興の絵を描こうにも描けない。その弱みをつかれてはたまらない、と防御線を張った。

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