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効率優先の耐えられない短期思考

100年で見れば「津波は想定内」

  • 萱野 稔人

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2011年6月1日(水)

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 東日本大震災では日本の電力供給システムの「もろさ」が思わぬ形で露呈した。福島第1原子力発電所事故の影響から、3月には東京電力管内で計画停電があり、またこの夏にも電力不足が懸念されている。

30億円のロボットを放置

 もともと日本の電力政策は、安定供給の名の下、各電力会社に割り当てた地域を独占させ、発電から送電までのすべてを担わせるという「垂直統合型」の方法をとってきた。なぜ「垂直統合型」と言われるのかといえば、各電力会社が発電から送電までの一連の過程を「垂直」に「統合」して電力を供給するからである。つまり、日本はこれまで、「独占」と「集中」によって電力の安定供給を目指してきたわけだ。

 しかし、今回の大震災ではこの方法が裏目に出た。垂直統合型の電力供給システムでは、「集中」と「統合」によって電力の安定供給を達成しようとするため、どうしても火力発電所や原子力発電所などの大型の集中電源に頼らざるを得ない。そのため災害やテロなどによって大型集中電源が破壊されてしまうと、一気に電力不足に陥ってしまうのである。安定供給という「強さ」のために集中化した電源が、非常時には逆に弱点になってしまうのだ。

 本来なら、集中化されたハブ(拠点)は絶対に破壊されてはならないため、幾重にも安全対策を施す必要がある。あるいは、リスクをゼロにできないことを考えるなら、たとえハブが破壊されても、そのダメージを減らしたり、早期に復旧できるようなバックアップ機能をあらかじめ準備しておかなくてはならない。

 しかし、実際には、今回のような津波による非常用電源の喪失に対しては――その危険が度々、指摘されていたにもかかわらず――何の対策も施されてこなかった。

 また、事故が起こった時のための復旧用遠隔操作ロボットも、30億円という国の予算を使って開発されたものの、電力会社が「活用する場面はほとんどない」と判断して、実用化されなかった。つまり、大型集中電源に頼らざるをえないシステムを作っておきながら、それに対するセキュリティー意識は非常に甘かったのである。

 ただし問題は、こうした非常時対策の不備にとどまらない。なぜなら、その脆弱性は「垂直統合型」の電力供給システムそのものに内在しているからだ。

 平時の「強さ」のために集中化した電源が、非常時には「弱さ」になってしまう、というのは、垂直統合型システムの構造的な問題である。とりわけ、その集中電源を原発に頼る時、安全対策や事故対策のコストは莫大になり、経済性の観点からどうしても非常時対策の必要性は過小評価されがちになる。だから、今回の原発事故を招いた東京電力や政府の見通しの甘さは、決して偶然ではない。この「避けがたい過小評価」によって、垂直統合型の構造的な弱点はより増幅されてしまうのである。

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