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「経済成長すれば増税は必要なし」のウソ

  • 國枝 繁樹

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2011年6月7日(火)

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ポイント

・レーガン大統領の「減税で財政再建」政策は失敗、クリントン大統領の「増税で財政再建」政策は成功

・税率を引き上げても、労働供給や課税所得はそれほど縮小せず、税収は減少しない

・楽観的な財政再建計画は国際的に信用されない

 前回の復興財源のあり方の説明した際、国債はいずれ償還しなければならないことを前提としたが、増税に反対する論者もいる。今回はそうした主張のうち、「増税すれば経済成長が低下し、減収になる」、逆に言えば「減税で経済成長が促進され、増収となる」との説の問題点について考察しよう。

 増税の経済成長への影響は、ケインジアン的な意味での短期的な影響とインセンティブへの効果を通じた中長期的な影響が考えられるが、前者については、5月30日の社会保障改革に関する集中検討会議に提出された内閣府の研究報告書に、1997年の消費税引上げの影響を巡る議論も含め、よくまとめられているので、本稿においては、いわゆる上げ潮派の論者が重視することの多い後者のインセンティブへの効果を通じた中長期的な影響につき論じる。

 インセンティブへの効果を通じ、増税(減税)すれば減収(増収)になるとの考え方は、1970年代にアーサー・ラッファーが主張したラッファー・カーブに始まる。ラッファー・カーブに代表されるいわゆるブードゥー経済学が米国でたどってきた歴史を見た後、その経済学的な意義と我が国への影響を論じることとする。

ブードゥー経済学:トンデモ経済学の登場と失敗

 1974年12月、ワシントンのレストランでアーサー・ラッファー南カリフォルニア大学教授(当時)とウォールストリートジャーナルの論説委員らが会食中、ラッファーがレストランのナプキンに税率と税収の関係を示す山なりのカーブ(「ラッファー・カーブ」)を描いた。彼は、税率が0%ならば税収は0であり、他方、税率が100%ならば人々は働いても所得が得られないので全く働かなくなり、やはり税収は0になるとし、その間のどこかに税収が最大になる税率があると説明した。

 ここまでは、誰もが同意する内容である。問題は、ラッファーが当時の米国の税率が、税収が最大化される税率よりも高いと主張したことである。その場合、減税を行えば税収は増加し、逆に増税を行えば税収は減少することになる。当時拡大しつつあった米国の財政赤字も減税による増収で解決可能であるとするのが、ラッファーの主張である(アーサー・ラッファーその他『増税が国を滅ぼす』、日経BP社)。彼らの会合には、後にジャック・ケンプ下院議員も参加した。アメフトのスター選手から政界に転身したものの、政界での将来に悩んでいたケンプ議員は、「減税で財政再建」との魅力的なアイデアに惹かれ、ケンプ・ロス減税法案を成立させ、米国の上げ潮派を代表する政治家となった。同時に、そのアイデアを当時、大統領選への出馬を予定していたロナルド・レーガン・カリフォルニア州知事に伝えた。

 「減税で財政再建」とのレーガンの政策提案を、共和党内の大統領候補指名選挙での対抗馬のジョージ・H.W・ブッシュ候補(ブッシュ前大統領の父)は馬鹿げたアイデアと酷評し、「ブードゥー経済学」と呼んだ。呪術的な側面を持つブードゥー教のような怪しげなトンデモ経済学との意味である。しかし、レーガンは共和党内でブッシュ候補を破り、さらに現職のカーター大統領にも勝って、1981年に大統領に就任する。レーガン大統領の下には、ブードゥー経済学の信奉者が集結し、「財政再建のために」大減税を実施する(レーガン第一次税制改革)。

 しかし、大減税は十分な経済成長をもたらさず、財政赤字は急拡大する。財政赤字をファイナンスするため、外国からの資本が流入し、ドル高がもたらされ、貿易赤字も急拡大した(財政赤字と貿易赤字の「双子の赤字」の発生)。実はレーガン第一次税制改革の失敗はホワイトハウスの経済見通しでも予測されていた。だが、当時の経済諮問委員会委員長が名目成長率を本来の見通しよりも意図的に高い値に設定する「バラ色のシナリオ」を仮定したため、公式の見通しでは大減税に問題がないこととなっていたのである(デイビッド・ストックマン『レーガノミックスの崩壊』、サンケイ出版)。

 レーガン第一次税制改革が失敗に終わり、ブードゥー経済学の信奉者はホワイトハウスから次第に放逐され、一方、レーガン第二次政権下では、課税ベースの拡大での財源確保を前提として税率引下げを行うという常識的な税収中立の税制改革案が財務省により提案され、1986年に実現する。このレーガン第二次税制改革は大きな成功とされたが、元々、税収中立を目標としていたため、財政赤字は解消されることなく、1987年には米国経済の将来への不安から株価が暴落する(ブラックマンデー)。

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