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「輸出企業優遇」の先にある危機

強者への集中が「脆さ」を招く

  • 萱野 稔人

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2011年6月15日(水)

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 前回のコラムでは、日本の電力供給システムについて、長期的視点に立った見直しが必要だと述べた。そこで問題となったのは、「集中」と「統合」によって電力の安定供給を目指してきた垂直統合型システムの、思わぬ「脆弱さ」だ。この「脆弱さ」を克服するためには「強さ」の再定義が不可欠である。平時における安定性や効率性だけが「強さ」なのではない。非常時における耐性をも含んだかたちで「強さ」を考えなくてはならないのである。

なぜ輸出産業の町が衰退するのか

 実は同じことは日本の経済政策全体についても当てはまる。これまで日本は輸出主導によって経済成長を達成することを経済政策の軸に置いてきた。この点では小泉政権も管政権も変わらない。まさにグローバル市場で他国をおさえ、輸出を伸ばすことが日本経済の「強さ」だと考えられてきたのだ。

 こうした発想のもとでは、経済政策もいきおい、輸出に強い産業や企業がより有利にグローバル競争を戦えるような環境を整備することばかりを重視することになる。たとえば、国内の産業構造を輸出に強い産業に偏った形にしたり、輸出企業がコストカットしやすいように労働市場を規制緩和したりする、というような政策を繰り返すわけである。

 これはまさに「垂直統合型」の産業構造を国全体として作ることにほかならない。実際、そこでは様々な社会的資源が特定の産業へ「集中」していき、「統合」されているからだ。

 しかし、こうした垂直統合型の産業構造は、必ずしも「強い」とはいえない。

 最大の問題は、国内経済をやせ細らせる危険性を秘めていることだ。たとえば、労働市場の規制緩和によって、輸出企業の人件費カットが容易になれば、国民の購買力は低下し、内需は縮小していくことになる。国内市場が拡大する期待は萎んでしまい、企業はますます輸出志向を強めていくことになる。そのことは、さらなる国内市場の低迷をもたらすことになる。そして、輸出依存の産業構造がさらに強まっていく…。こうして、輸出依存と国内経済の脆弱化という悪循環に陥ってしまう。

 東日本大震災からの復興において私たちが直面していることも、同じ問題にほかならない。東日本大震災の津波によって被災した三陸地方は、あわびなどの海産物の生産で世界屈指の競争力を持っていた。香港などの富裕層は三陸産の高級海産物に喜んで大金をはたいたものだ。しかし一方で、三陸は現役世代の人口流出と高齢化に悩んでもいた。

 なぜ高付加価値を獲得できるような国際競争力を持った産業があるのに、三陸地域から人々が去っていくのか。それは、外に産業がなくなってしまったからだ。国際競争力のある産業へと地域経済の構造が「特化」されていった結果、地域経済はやせ細り、地域の人びとの生活を支える規模が保てないのである。

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