• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

外貨準備は復興財源として使えるのか

国際収支を巡る議論 現状編 その2

2011年7月6日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 前回、国際収支を巡るホットな論点として、(1)震災後、貿易収支が赤字に「転落した」ことは深刻な問題か、(2)外貨準備を復興財源として使うという議論をどう評価するか、(3)近い将来、経常収支も赤字になると言われているが、それによってどんな問題が出るのか、(4)国際的に議論されている対外不均衡を是正するという議論をどう考えるか、という4つを指摘した。

 (1)については前回説明したので、今回は(2)について議論する。この問題は、結論そのものは「財源にはならない」ということで比較的簡単である。しかし、外貨準備についての議論を通じて、国際収支を巡って一般に誤解されやすい点が次々に現われてくるので、ここでやや詳しく議論してみたい。

 本論に入る前に、1点だけ前回の議論の補足しておこう。

輸出は低迷しているのか

 前回、このところ貿易収支が赤字になっていることの本当の問題は、サプライチェーンの断絶によって「輸出したくても輸出できない」ことだとした上で、生産、輸出の回復は思ったよりも早いのではないかと述べた。では、データから見て最新の輸出状況はどうなっているのだろうか。

 今分かっている最新の貿易統計は2011年5月のものである。これは6月20日に発表されたのだが、この時の日本経済新聞の見出し(同日夕刊)は「輸出なお低迷 10.3%減」となっている。この記事を見た人は「そうかまだ輸出は低迷しているんだな」と思っただろう。しかし事態はもう少し複雑である。

 以下、統計の見方についての話になっていくのでやや面倒だが、この程度を面倒だと思っていては「ワンクラス上」には行けない。

 月次統計の変動を見るには「前年比」と「前月比」という二つの見方がある。日本経済新聞の見出しになった「10.3%減」という数字は、「前年比」である。この「前年比」は、1年前の同じ月と比較した変化率のことである。

 もう一つ「前月比」という見方もある。これは前の月と比較した変化率だが、この場合は「季節調整」を施す必要がある。毎月の変動には、例えば、「2月は日数が少ないので必ず売り上げが減る」といった季節性が含まれている。季節性を含んだ数字をそのまま前月と比較すると、例えば「2月の売り上げが前月比で減少した」という結果を見ても、どこまでが季節要因なのか、どこまでが実態的な変化なのかが分からない。そこで一定の統計的処理によって、季節要因を除去した系列を作るのが「季節調整」である。季節要因を除去してしまえば、安心して前月比を計算することができ、それはすべて実態的な変化だと解釈することができる。

 こうして考えると、「前年比」を見るのは「季節要因を除くため」だということが分かる。1年前と比較すれば、1年前も同じ季節だったわけだから、季節要因は消えてしまうのである。

 そこで、季節調整をした上で5月の前月比を計算してみると、2.5%の増加となる。輸出は「低迷している」わけではなく「増加に転じた」のである。

 前回説明したように、実体経済との関係では「輸出数量」の変化を見たほうがいい。そこで輸出数量の変化を同じように眺めてみると、5月は前年比では10.8%の大幅減少だが、前月比では3.7%の増加に転じている。金額とほぼ同じ動きである。

 これは次のようなことである。以下、数量ベースで説明しよう。表にあるように、輸出数量は3月、4月と大幅に減少した(前月比の動き)。当然前年比でも大きな減少となる。それが5月には増加に転じた。しかし、3月と4月の落ち込みが非常に大きかったので、1年前に比べれば依然としてレベルは低い。したがって前年比ではマイナスの状態が続いているのである。

輸出の推移(%)
輸出金額 輸出数量
前年比 前月比 前年比 前月比
2011年1月 1.4 ▲0.2 2.3 ▲0.3
2月 9.0 4.6 9.2 2.7
3月 ▲2.3 ▲8.2 ▲3.3 ▲10.3
4月 ▲12.4 ▲5.5 ▲11.6 ▲5.8
5月 ▲10.3 2.5 ▲10.8 3.7

出所:財務省「貿易統計」による

コメント13

「小峰隆夫のワンクラス上の日本経済論」のバックナンバー

一覧

「外貨準備は復興財源として使えるのか」の著者

小峰 隆夫

小峰 隆夫(こみね・たかお)

法政大学大学院政策創造研究科教授

日本経済研究センター理事・研究顧問。1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。2003年から同大学に移り、08年4月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

社長に就任してずっと言っているのが ファンダメンタルズの強化。

安形 哲夫 ジェイテクト社長