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貧困地域でも「ゆりかごから大学まで」

オバマ教育改革の最前線

  • 安井 明彦

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2011年7月28日(木)

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 米国で貧困地域の教育改革を地域ぐるみで進めようという動きが広がっている。次世代を担う子供たちに照準を合わせた地域の取り組みに期待されるのは、教育改革の突破口としての役割だ。

教育で貧困からの脱出を「約束」

 米国でプロミス・ネイバーフッド(PN)と呼ばれるタイプの教育改革がにわかに脚光を浴びている。「ゆりかごから大学まで」とも俗称されるPN型の教育改革は、貧困地域の子供たちの教育を、出生から大学を卒業するまで一貫して地域ぐるみで支えていこうとする点に特徴がある。教育改革を基点にして、貧困からの脱出を子供たちに「約束(プロミス)」できる「地域(ネイバーフッド)」を作ろうというわけだ。

 学歴による賃金格差に象徴されるように、子供たちが貧困から抜け出すには、教育水準の底上げが有力な手がかりになる。なかでも最近の米国では、幼少期からの徹底した教育の重要性が強調されている。

 しかし貧困地域の子供たちには、学校教育の充実だけでは回復できない種類の問題がある。不安定な家庭環境や身近なロール・モデルの不在など、日々の暮らしを取り巻く環境自体が、子供たちの教育を蝕んでいるのだ。

 いくら学校での教育に力を入れても、一歩学校を出れば大学に進まないのが常識とされているような地域では、子供たちが進学のための努力を続けるのは容易ではない。それどころか、貧困な家庭が多い地域では、子供たちの健康状態が優れない傾向があったり、通学路の治安が悪いなど、学校に通うことにすら障害がある。学校の改革はもちろん必要だが、これが確かな成果を生むためには、教育に励む子供たちを支える環境が必要だ。

 そこでPN型の教育改革では、出生から大学を卒業するまでの一貫した教育支援に加え、地域の環境改善が併せて目指されている。

 「子供たちが良くなるためには、家庭が良くなれなければならない。家庭が良くなるためには、地域が良くなる必要がある」

 こう言われるように、PN型の教育改革が目指すのは、優れた教育を家庭と地域がサポートする姿である。

 バラク・オバマ政権は、全米の各地域がPN型の教育改革に取り組めるよう、競争型の補助金制度を立ち上げている。初回の2010年度には改革の青写真作りを対象にした補助金が設定され、全米の300を超える地域から応募が集まった。オバマ政権はこの中から21の地域を選出し、最大50万ドル(約4000万円)の補助金支給を決めている。2回目となる今年度は、補助金の対象が青写真作りから改革の実施にまで広げられており、再び補助金の獲得を目指した競争が展開されている。

モデルはハーレムの取り組み

 PN型の教育改革にはモデルがある。ニューヨークの貧困地域であるハーレムを舞台に活動を続けている「ハーレム・チルドレンズ・ゾーン(HCZ)」である。オバマ政権がPN型改革のモデルと明言するHCZには、全米各地の教育関係者による視察が後を絶たない。

 創設者であるジェフリー・カナダ氏はメディアなどにも頻繁に登場する改革の伝道師的な存在であり、今年は米タイム誌恒例の「世界で最も影響力がある100人」の1人にも選出されている。

 HCZの取り組みには2つの柱がある。「パイプライン」と呼ばれる一貫した教育の支援と、地域の「環境改善」だ。

 HCZのパイプラインの中核は、直営のチャーター・スクール(公立学校にかかる規制を一部免除された特別認可学校)である。拙稿『オバマ改革、次の焦点は教育改革』で指摘したように、米国の教育改革には、チャーター・スクールの普及などを通じ、競争原理を働かせようという流れがある。HCZのチャーター・スクールも、こうした流れの中にある。

 もっとも、HCZのパイプラインは、小・中学校を中心とした直営チャーター・スクール(注:現在HCZのチャーター・スクールは、高校にまで対象を延長する過程にある)で完結しているわけではない。HCZを他の改革から際立たせているのは、チャーター・スクールの前後に連なる一貫した教育支援である。

 HCZのパイプラインは出生前から始まっている。HCZでは、出産を控えた地域の両親と3歳児までの育児を行っている関係者を対象に、9週間の講習(ベイビー・カレッジ)を展開している。子供が生まれる前から、早期教育の重要性を家庭に植えつけようというわけだ。

 子供たちへの教育は3歳児から始まり、チャーター・スクールに上がるまで続けられる。そして、子供たちがチャーター・スクールを卒業しても、HCZの教育支援は終わらない。HCZでは、大学進学を支援するための講座はもちろん、大学進学を果たした地域の子供たちを対象に、学業や金融面での支援を行うカウンセリングなどを行っている。

 HCZのもう1つの柱である「環境改善」の内容は、従来の教育改革の枠を大きくはみ出している。具体的には、貧困家庭を対象にした公的補助制度の申請支援や、住宅にまつわる相談に応じるカウンセリング、さらには地域の子供たちの健康改善を目指した取り組みなど、様々な角度から地域の環境を変える試みが繰り広げられている。

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