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空洞化は正しい理由で懸念しよう

企業が抜けた穴がすぐ埋まるよう資源の流動化が重要

2011年8月24日(水)

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 前回までは、国際収支の動きを中心に日本経済を取り巻く諸問題を考えてきた。こうした議論とも関係する重要問題として、今回は「空洞化」問題を考えてみたい。

危機感高まる空洞化問題

 空洞化とは、企業が活動の拠点を国内から海外に移してしまうことにより、国内の経済活動が「カラ」になってしまい、所得や雇用を生み出す力が低下することをいう。この「空洞化」問題がこのところ大いに注目されているのだが、これには2つの背景がありそうだ。

 1つは、東日本大震災である。3月の震災は、日本が築き上げてきたサプライチェーン(供給網)が災害というリスクにいかに弱いものかを再認識するきっかけとなった。また、原発事故によって電力不足問題も恒常化する可能性が出てきた。こうした事態の変化を受けて、日本企業が活動拠点を国内から海外にシフトする動きが出てきている。

 もう1つは円高である。8月に米国国債の格付けが引き下げられたことをきっかけに、世界の資金が安全資産にシフトした。諸外国の中で円資産は相対的に安全と判断されたため、円レートは1ドル75円台にまで急上昇した。円高になれば、外貨建てで見た国内の生産コストは上昇し、逆に海外の生産コストは下がる。これも企業の海外移転の動きを加速させていると言われている。

 こうした空洞化を生じさせる背景は「五重苦」と呼ばれたりしている。具体的には、(1)円高、(2)電力不足、(3)高率の法人税、(4)FTAなどグローバル対応の遅れ、(5)高い賃金コストなどである(具体的な項目は人によって異なる。この5つは「Voice」2011年8月号での伊藤元重氏と経済同友会代表幹事の長谷川閑史氏の対談で、長谷川氏が指摘したもの)。これだけ企業を取り巻く環境が悪化すれば、日本企業は外に出て行かざるを得ないというわけである。

 多くの人は当然のこととして「空洞化を避けるべきだ」と言う。私も、日本経済の先行きを懸念するその気持ちは良く分かる。しかし「ほぼ全員が同じことを言うようなときには、一度踏みとどまって、本当にそれが正しいのかをよく考えてみたほうがいい」というのが私のモットーである。以下、私の考えを述べていくのだが、行きつく先は「やはり空洞化の動きは懸念される」というものだ。しかし、無闇に懸念すればよいというわけではない。同じ懸念するにしても、正しい理由で懸念する必要がある。これが今回の私の結論である。

空洞化のロジック

 多くの人は「企業が出て行くから空洞化が起きる」と考える。しかし、このプロセスは案外複雑である。少し丁寧にたどってみると、空洞化は次の3つのステップを踏んで生じるはずである。

 第1のステップは、企業が活動拠点を国内から海外に広げていくことだ。これは直接投資を通じたグローバル化の動きだと考えることができる。

 第2のステップは、海外への事業展開を強めた結果、国内の事業活動が縮小することだ。これは企業の海外事業展開と国内の事業活動が「代替的」と仮定していることになる。

 第3のステップは、企業が抜けることによって生じた国内の経済活動の穴を別の経済活動によって埋めることができないことだ。これは、国内の資源移動が硬直的だということを意味している。以下、それぞれのステップについて吟味してみよう。

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「空洞化は正しい理由で懸念しよう」の著者

小峰 隆夫

小峰 隆夫(こみね・たかお)

法政大学大学院政策創造研究科教授

日本経済研究センター理事・研究顧問。1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。2003年から同大学に移り、08年4月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長