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「災害損失引当金」を通して被災企業を知ろう

「引当金」の考え方を理解する

  • 松尾 絹代

バックナンバー

2011年10月4日(火)

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 2011年3月11日に起こった東日本大震災(以下「大震災」)は、企業活動に非常に大きな損害を与えました。

 ところで、今「大きな損害」と聞いて、皆さんはどんなイメージを持ちましたか? 例えば建物の損害に限定した場合、思い浮かべたのは、次のどちらに近いでしょう?

(1)壊れた建物の金額
(2)(1)に加え、がれきの撤去費用、建物の原状回復(再建築を含む)費用

 2011年3月期、各社の財務諸表には、巨額の災害損失が計上され、大震災の爪痕が現れた利益が公表されました。この時、損失となったのは、(1)と厳格な要件を満たした(2)でした。大震災の被害をなるべくリアルに報告し、かつ、今後、会社のペースで進む復興の進捗状況を読み取れる財務諸表を作る。その目的のために、重要な役割を果たしたのが、災害損失引当金です。

 「財務諸表を読んで復興支援!」最終回のテーマは、被災企業の財務諸表を読む際に欠かせない、災害損失引当金を取り上げます。

被災企業で現金収支が増加?

 11年6月3日付の日本経済新聞に、11年3月期の資金収支の純額(収入から支出を引いたもの)の増加額ランキングが掲載されました。ここに、住友金属工業の名前がありました。同社は「“トクソン”に惑わされていませんか」で取り上げた通り、大震災で巨額の損失を計上した会社の一つです。しかし、全上場会社の中で、14位にランクインしています。新聞記事では、次のように伝えています。

 「…(前略)14位の住友金属工業は、前期に493億円の災害損失引当金を計上したが、実際の支出の多くは今期以降になる。各社とも復興に向けた支出は今期に本格化するとみられる。それが純現金収支を圧迫しそうだ」

 さて、この記事は、どう読めばよいのでしょう。

退職金は「将来」のコスト? 「今」のコスト?

 ところで、前回の「本日のミニレッスン」では、キャッシュ・フロー計算書のご説明をしました。損益計算書(PL)だけではつかめない、お金の流れを説明するのがキャッシュ・フロー計算書でした。つまり、収益や費用の動向と、収入や支出は、必ずしもリンクしないのです。例えば「今」費用が発生しても、「今」支出が起こるとは限りません。ずっと先の「将来」に支出が行われることも、珍しくありません。

 退職金を例にすると、退職時に支給される退職金は、勤続年数などに応じて金額が決まることから、給与の後払い、ともいわれます。日々の勤務は、会社から見れば「将来」支給する退職金の原因であると同時に、「今」の売り上げを生む源泉です。「今」の売り上げが計上される損益計算書には、その売り上げのためのコストを記載しなければなりません。退職金の支払いが「将来」だからといって、「将来」の損益計算書に退職金全額を記載すれば、将来の利益だけでなく、現在の利益もゆがんでしまいます。「将来」支払われる費用(または損失)でも、「今」の財務諸表に計上しなければならないものも、あります。その中でも、会計特有の考え方に基づくのものが「引当金」です。

住友金属工業の災害損失引当金事例

 11年3月期決算、上場会社が計上した大震災関連の損失は3兆円超。この中には、将来実施される、がれき撤去や原状回復作業にかかわる費用も含まれます。将来の支出であっても、原因は大震災にあります。その関係を重視し、厳しい吟味を行って設定したのが、災害損失引当金でした。損益計算書には「災害損失引当金繰入額」という損失を計上し、貸借対照表には「災害損失引当金」という負債が設定されたのです。

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