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日本は“課題先進国”、未来を切り開く種は「内」にあり

東北は日本を「再創造」するための礎になる

  • 吉田 琢也,高下 義弘

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2011年10月7日(金)

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 大震災から7カ月を経て、なお復旧・復興の道筋が不透明な中、日本はどちらを向いて国づくりを進めるべきなのか――。

 三菱総合研究所理事長(前・東京大学総長)の小宮山宏氏は、「少子高齢化、環境問題、地域間格差といった様々な課題を解決できる力を持つことこそが、真の先進国として生まれ変わるためにカギ」だと言う。

 未来を切り開く種は日本の「外」ではなく「内」にあると語る宮山氏に、日本社会の置かれた現状、日本が目指すべきビジョン、その中で技術が果たすべき役割を聞いた。

(聞き手は吉田 琢也=ITpro編集長、構成は高下義弘=ITpro)

―― 震災から約半年を経た日本社会の現状をどう見ていますか。

三菱総合研究所理事長 小宮山 宏 氏
1944年、栃木県生まれ。1967年、東京大学工学部化学工学科卒業。1972年、東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。1988年東京大学工学部教授、2000年工学部長、大学院工学系研究科長などを経て、2005年4月に第28代東京大学総長。総長を退任後、2009年4月に三菱総合研究所理事長、東京大学総長顧問に就任。

小宮山:「リスボン地震」をご存じですか。1755年に西ヨーロッパで発生した津波を伴う大地震で、ポルトガルのリスボンで大きな被害を出したことから、こう呼ばれています。それまで栄華を誇っていたポルトガルは、この地震の後、世界をけん引する地位を降り、ついに元の地位を取り戻すことはありませんでした。

 私には、リスボン地震直後のポルトガルと、今の日本が重なって見えます。大地震、津波、そして原発事故を経験した日本はピンチを迎えています。今どのような復興計画を立て、どう実行に移していくかで、日本という国を維持できるかどうかが決まる。大げさな表現かもしれませんが、私たちはそのくらい厳しい局面に置かれています。

 明治維新後と第二次世界大戦後、日本は先進国に追いつき追い越せという姿勢で発展の道のりを歩んできました。しかし、先進国入りを果たした1970年代以降、日本は全く進歩していない。過去の延長線上を進んできたにすぎません。

 というのは、1970年代以降の日本は本当の先進国らしい活動、つまり、どんな国を創るべきかというビジョンを自ら打ち立てて、そのビジョンのもとに産業を興し育てる、ということをしてこなかったからです。だから日本が停滞するのは当たり前なのです。

―― 「失われた」のは10年や20年ではないと。

小宮山:その通り。真の意味で先進国らしい国づくりをしているか、という視点に立てば、1970年代以降の日本は、全く進化・成長を遂げていない。私に言わせれば、「失われた40年」です。

 では、日本はどんなビジョンを描いて、国づくりを進めるべきなのか。私はその答が「プラチナ社会」だと考えています。

課題を抱えていることはチャンスでもある

 プラチナ社会とは、簡単に言えば、美しい環境のもとで、高齢者を含めた誰もが生き生きと暮らし、成長し続けられる社会のことです。そうした社会を実現するには、環境、エネルギー、医療、教育など、さまざまな側面から課題を解決していかなければならない。詳しくは著書(『日本「再創造」(東洋経済新報社)』)に書いていますが、既に産官学各方面からの協力を得て、その実現に向け動き始めています。

 先進国になって久しい日本は、今や「課題先進国」です。少子高齢化、低い食糧自給率、環境問題、地域間格差など、たくさんの難しい問題を抱えています。

 しかしながら、これらの課題を抱えていることはチャンスでもあります。ニーズこそが新しい産業を生むからです。私たち日本人は、自らが抱えている課題から逃げずに立ち向かえば、得るものはとても大きい、ということに気づかなければなりません。

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