「Money Globe- from NY(安井 明彦)」

“草食系起業家”には期待できない

米雇用、オバマは中小企業に期待するが

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2011年10月27日(木)

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 「中小企業が最も多くの雇用を生み出しているのは誰でも知っている」

 9月8日に米議会で雇用対策の必要性を説いた米国のバラク・オバマ大統領は、中小企業の重要性をこう力説した。オバマ大統領に限らず、雇用回復の遅れを苦慮する米国では、「雇用創出の原動力」としての中小企業に期待を寄せる声が少なくない。

 しかし、どのような中小企業が実際に雇用を生み出しているのかを見極めなければ、政府による支援策は的外れになってしまう。

分かれ目は企業の規模ではなく「若さ」

 雇用創出における中小企業の存在感は軽視できない。セントルイス連銀の調査によれば、1992年第3四半期から2010年第1四半期にかけて、米中小企業庁(SBA)が定義する中小企業(従業員500人未満の企業)が新たに生み出した雇用者数は、四半期平均で民間企業全体の74%を占める。より「中小企業」という語感に近い従業員20人未満の企業でみても、その割合は30%に達する。

 もっとも、こうした統計が示すのは、中小企業の実力の一面に過ぎない。中小企業は多くの雇用を生み出す源であると同時に、多くの雇用が失われる場所でもあるからだ。新規雇用から失われた雇用を差し引いた純増数でみると、従業員20人未満の中小企業が占める割合は、民間企業全体の15%へと半減する。雇用の純増数でいえば、従業員500人以上の大企業が占める割合(38%)の方が大きいのが実態だ。

 こうした中小企業の雇用のダイナミズムは、企業の入れ替わりの激しさに由来する。米国では新興企業の約3割が2年目までに廃業し、5年以上営業を続けられる企業は5割に満たないという。新興企業の多くは小さな雇用規模でスタートしており、その頻繁な入れ替わりが中小企業の雇用に影響している。

 雇用の純増数に注目した場合、むしろ重要になるのが企業の「年齢」である。最近の研究によれば、米国で雇用を純増させる力が強いのは、起業から間もない「若い」企業だと言われる。

 特に大きな存在感があるのは、起業1年未満のスタートアップ企業だ。統計の概念上、前年との比較ができないスタートアップ企業は、雇用を失うことがない。このため、起業時の雇用数が、そのまま雇用の純増として換算されるからだ。

 起業から1年を過ぎると、廃業や縮小する企業の影響が現れてくるために、雇用の純増数は大きく減少していく。1977年から2009年の期間をみると、スタートアップ企業が毎年約300万人の雇用をコンスタントに生み出しているのに対し、それ以外の企業は平均して120万人の雇用を純減させている。こうした企業が雇用を純増させた年も8年だけあるが、いずれもその水準はスタートアップ企業に及ばなかった(図1)。

育ちたくない起業家たち

 生き残った中小企業のなかでも、順調に雇用を増やしていく企業は限られる。シカゴ大学のエリク・ハースト教授らの調査によれば、2000年から2003年の間に雇用を増やした中小企業は全体の21%にとどまる。起業から1〜10年の比較的若い中小企業でも、その割合は28%と決して高くない。

 見逃せないのが、成長する意欲が強くないスタートアップ企業が少なくないという事実である。前述のハーストらの調査によれば、起業の時点で「ビジネスをできるだけ大きくしたい」と回答する起業家は全体の25%に満たない。5年後に予想する雇用者数についても、回答の中位値はわずか4人だ。

 起業の理由も、「成長」とは無縁な場合が少なからず見受けられる。現実には、「収入の増加」や「新製品の開発・販売」といった狙いだけが、起業の原動力ではない。同じ調査によれば、起業家の35%が「自らがボスになりたい」「時間の融通がきく」「趣味を生かしたい」といった成長志向とは関係のない理由で起業している。

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著者プロフィール

安井 明彦(やすい・あきひこ)

安井 明彦

みずほ総合研究所調査本部 ニューヨーク事務所長
1968年東京都生まれ。91年東京大学法学部卒業、富士総合研究所(当時)入社。在米日本大使館、みずほ総合研究所ニューヨーク事務所、同調査本部上席主任研究員などを経て、2007年より現職。著書に『ブッシュのアメリカ改造計画〜オーナーシップ社会の構想』(共著、日本経済新聞社)『ベーシックアメリカ経済』(共著、日経文庫)など
(写真:丸本 孝彦)



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