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ウォール街デモが見落としたもの

「富」だけでなく「貧困」も集中する米国

  • 安井 明彦

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2011年11月24日(木)

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 「Occupy Wall Street(ウォール街占拠デモ)」でやり玉に上がる「1%の富裕層」。確かに富裕層に占める金融関係者の割合が高まっているのは事実だが、比較的恵まれた暮らしをしているのはウォール街を擁するニューヨークの住民だけではない。一方で米国では貧困層が貧しい地域に集中する傾向も強まっており、地域の明暗が分かれている。

もっとも裕福な街はワシントン

 2010年の米国で、最も裕福な都市が入れ替わった(図表1)。新しく第1位となったのは、ほかでもない首都ワシントンである。

図表1 中位所得上位5都市
順位 中心都市 所在する州 中位所得(ドル) 伸び率
(%)
2010年 2009年
1 ワシントン コロンビア特別区 84,523 84,424 0.1
2 サンノゼ カリフォルニア 83,944 85,020 -1.3
3 ブリッジポート コネチカット 74,831 81,114 -7.7
4 サンフランシスコ カリフォルニア 73,027 74,876 -2.5
5 サウザンドオークス カリフォルニア 71,864 74,828 -4.0
19 ニューヨーク ニューヨーク 61,927 63,553 -2.6

注:「所在する州」は中心都市の位置

出所:米商務省資料により作成

 ここで比較しているのは、各都市圏の中位所得だ。中位所得とは、家計を所得の高低で並べ、そのちょうど真ん中に位置する家計の所得を意味する。2010年のワシントンの中位所得は約8万5000ドル(約740万円)となり、昨年第1位のサンノゼを上回った。

 「Occupy Wall Street」に象徴されるように、米国では金融関係者の高給ぶりがやり玉に上がっている。しかし、平均的な家計が裕福なのは、必ずしも金融がけん引する街ではない。例えばサンノゼはシリコンバレーの主要都市であり、その豊かさはハイテクの賜物だ。2010年の中位所得で上位5位に入る都市では、金融との関連が強いのはニューヨーク郊外のコネチカット州ブリッジポートだけ。ウォール街を擁するニューヨークの中位所得は、全米の都市ランキングでは19位である。

 ワシントンがもっとも裕福な街になったという事実には、金融危機後の米国における政府の存在感の大きさが反映されている。それでなくても連邦政府に関係した産業が多いワシントンには、景気循環に影響されにくい特質がある。

 これに加えて、大型の景気対策や金融規制改革、さらには医療保険改革といった連邦政府の積極的な活動が、弁護士やロビイストなど、政府を取り巻くワシントンの「伝統産業」を活気づけてきた。わずかとはいえ、上位5都市で中位所得が前年を上回ったのはワシントンだけである。

 平均的な裕福さではなく「富裕層」に焦点を合わせると、都市間の力関係は変わってくる。米誌「キップリンガース」では、不動産などを除いた「すぐに投資できる手元資産」が100万ドルを超える富裕層についての調査を発表している(図表2)。これによれば、こうした富裕層がもっとも多く住んでいる都市はニューヨークである。

 ただし比率で見ると、第1位はニューメキシコ州のロスアラモス。原子力関係の研究所で有名な街である。ここでも上位で金融に関係が深いのは前出のブリッジポートのみ。中位所得と同様に、シリコンバレーを擁するサンノゼが上位に顔を出している。他方で首都ワシントンは、富裕層の数・集中度の双方で全米上位5都市に食い込んでいる。

図表2 富裕層上位5都市
順位 集中度
中心都市 所在する州 中心都市 所在する州
1 ニューヨーク ニューヨーク ロスアラモス ニューメキシコ
2 ロサンゼルス カリフォルニア ネープルズ フロリダ
3 シカゴ イリノイ ブリッジポート コネチカット
4 ワシントン コロンビア特別区 ワシントン コロンビア特別区
5 フィラデルフィア ペンシルバニア サンノゼ カリフォルニア

注:「すぐに投資できる手元資産」が100万ドルを超える富裕層。「所在する州」は中心都市の位置。

出所:Kiplinger's誌資料により作成

金融関係者だけではない「所得の集中」

 富裕層への所得の集中が進む中で、金融関係者の存在感が高まっているのは事実である。1979年から2005年のあいだに、上位1%の家計所得が全体に占める割合は、9%から17%へと大きく上昇している。こうした拡大分のうち、25%が金融関係者によるものだ。1979年には上位1%の家計所得に金融関係者が占める割合は9%だったが、2005年には16%へと上昇している。

 ただし、富が集中しているのは金融関係者だけではない。

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