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危険なシーソーゲーム

2012年の欧州ソブリン危機の行方

2011年12月15日(木)

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 ユーロ圏を襲っている、ソブリン危機の2012年の展望をどのように描くのか。危機の収束を、仮に「政府や中央銀行の対応が功を奏して金融市場が安定化すること」と定義するならば、「市場の信認」をどのように得ていくかが非常に大切になる。そのために必要な措置は5つ、すなわち短期的には[1]欧州中央銀行(ECB)の関与拡大、[2]欧州安定化メカニズム(ESM)のスムーズな立ち上げ、[3]財政赤字削減の着実な履行、中期的には[4]財政規律の強化、[5]欧州経済の成長、になるのではないかと考えている。

 「市場の信認」というのは非常に曖昧な言葉であるが、直感的にはシーソーの上にのせたボーリング玉のようなものだ。動き出せばどちらか一方にシーソーは傾き、ボーリング玉は加速しやすい。現在、既にネガティブな方向に傾きつつあるこのシーソー、戻していくには早急な対応が必要だ。

シーソーゲームで考える「市場の信認」

 2012年の危機の行方は、この「危機のシーソー」に乗せるおもりの重さにかかっている。そして、この「危機のシーソー」の傾き度合いを示すインディケーターは、各国のソブリン国債利回りだ。

 鍵となる投資家行動を考える上でまず自明なことは、投資家が現在、国債を保有しているという事実だ。少なくとも国債購入時点では、投資家はある一定期間の当該国のデフォルト(債務不履行)は想定していなかったし、国債保有への信認が維持されていたことになる。

 ここで財政赤字を上方修正するような事態が起こり、国債デフォルトの可能性が高まったとする。このような場合、より多くの投資家が国債売却に動いてしまえば、それだけ国は国債償還の資金が足りなくなる。そのうえ借金(=国債)を使って成長を続けていくこともできなくなるため、将来の国債償還がより困難になり、それが更なる投資家の国債売却に繋がる。信認が失われ、自己実現的に危機が悪化してしまうケースだ。

デフォルトするか否かは、投資家判断の多数決で決まる

 しかし、本当に債務国が借金を返済する国力が無いのか、という真の意味での経済のファンダメンタルズは投資家には分からず(もし分かっていれば誰も国債を買わない、もしくは皆が買いに殺到する)、ファンダメンタルズの予想が改善することで投資家は戻ってくることも考えられる。ただし、投資判断に際し、投資家は真の情報は分からず、政府や経済指標が発するシグナルと、それに対する他者の反応を見てしか決断できない。

 投資家が得られるシグナルはよほどのインサイダー情報でなければ、基本的に大差は無い。このため、結果として真のファンダメンタルズからみて、返済可能性がどちらにも転びうる場合、発せられるシグナルに対する投資家判断の多数決によって、デフォルトするのか正常化するかという両方の結果が決まってしまう。こうした二極性が先行きの予想を難しくしている。

 この「危機のシーソー」がユーロ崩壊というネガティブな方向に傾くの防ぐために、ユーロ圏首脳は軽くなった市場の信認を取り戻すべく、十分な重さを持つおもりをポジティブな方向に追加しようと必死になっている。その戦略は、重いおもりを1つ乗せるのではなく、中程度の重さのおもりをいくつも載せるというものだ。重いおもり1つでは、それが落ちてしまうと逆側に一気にシーソーが傾いてしまう。

EU首脳会議が提示した「おもり」は期待より軽い

 例えば、12月8~9日のEU首脳会合において、ESMは来年7月への立ち上げ前倒しや、欧州金融安定基金(EFSF)と合算で5000億ユーロの金額上限、意思決定プロセスの早期化などが合意された。危機の伝播を防ぐ防火壁の金額を上乗せできなかったことで、そのおもりの重さは市場の期待よりも軽くなったわけだが、代わりにESMの機動性を高め、稼動を早めることで、別のおもりを増そうとしている。

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「危険なシーソーゲーム」の著者

吉田 健一郎

吉田 健一郎(よしだ・けんいちろう)

みずほ総合研究所 欧米調査部/市場調査部

1972年東京都生まれ。96年一橋大学商学部卒業、2012年ロンドン大学修士(経済学)。富士銀行(現みずほ銀行)新宿西口支店入行。98年同国際資金為替部にて対顧客為替ディーラー。2004年よりみずほ総合研究所に出向し、08年よりロンドン事務所長。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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