「小峰隆夫のワンクラス上の日本経済論」

「自らの意志」による財政赤字は景気の回復では解消できない

日本経済・世界経済の展望(下)〜日本の財政危機編その1

バックナンバー

2012年2月15日(水)

1/4ページ

印刷ページ

日本経済・世界経済の展望(上)から読む)
日本経済・世界経済の展望(中)から読む)

 これまで述べてきたように、2012年の日本経済についての標準的なシナリオは、「緩やかな景気回復が続き、成長率は2%前後になる」というものだ。しかし、これにはかなり大きな二つの「下方リスク」がある。一つは欧州の債務危機であり、もう一つが日本の財政危機だ。欧州債務危機については前回説明したので、今回は日本の財政危機について考えることにしよう。

狼は本当にいた

 日本の財政が深刻な状況にあることについては、もう20年以上前からさんざん議論されてきている。しかし、読者の方々は、その中身が次第に変わってきていることに気が付かれているだろうか。つまり、かつては「日本の財政赤字は深刻な問題で放置出来ない」という「言いっぱなし」の議論だったのだが、最近では「日本の財政が破綻するのはいつ頃か」というかなり「本気で心配」という現実的な話になってきているのだ。

 これまで財政が破綻するという議論は「狼少年の議論だ」とも言われてきた。「狼が出る、出る(財政が破綻する、する)」と言うが、ちっとも破綻しないではないかというわけだ。しかし、今では「狼がいない」と言う人はほとんどいなくなった(と思う)。

 理由は簡単だ。ギリシャで実際に狼が出たからだ。これまでは「破綻する」と言われても、具体的にそれがどんなことなのか、イメージがつかみにくかった。だからこそ狼少年だったのだ。しかし、ギリシャの姿を見て、改めて「なるほど、財政が破綻するというのはこういうことか」ということが分かったのである。

 起きてみれば、そのメカニズムは簡単明瞭だ。ギリシャでは、2009年10月に発足したパパンドレウ新政権(当時)が、それまでの財政赤字の統計に誤りがあったとして、これを大幅上方修正した。つまり、粉飾決算だったわけだ。これによって、ギリシャの国債に対する市場の信認が大幅に揺らぎ、国債金利は20%程度にまで上昇した。金利ゼロの日本から見ると「そんなに利回りが高いのであれば、買ってもいいか」という気になりそうなものだが、それでも引き受け手がいなくなった。踏み倒されるリスクが大きいからだ。

 国債の新規発行や借り換えができなくなったら、ギリシャは本当に国の借金を踏み倒すしかなくなる。デフォルト(債務不履行)である。そんなことになったらギリシャ国債を保有している欧州の金融機関は大損害を受け、欧州だけでなく、世界的な金融危機に発展する可能性がある。そこで、欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)などがギリシャの破綻を避けて、何とか軟着陸させようと必死に対処しているわけだ。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント24 件(コメントを読む)
トラックバック
著者プロフィール

小峰 隆夫(こみね・たかお)

小峰 隆夫

法政大学大学院政策創造研究科教授。日本経済研究センター研究顧問。1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。2003年から同大学に移り、08年4月から現職。著書に『日本経済の構造変動―日本型システムはどこに行くのか』、『超長期予測 老いるアジア―変貌する世界人口・経済地図』『女性が変える日本経済』、『データで斬る世界不況 エコノミストが挑む30問』、『政権交代の経済学』、『人口負荷社会(日経プレミアシリーズ)』ほか多数。新著に『最新|日本経済入門(第4版)』



このコラムについて

小峰隆夫のワンクラス上の日本経済論

「ワンクラス上」というタイトルは、少し高飛車なもの言いに聞こえるかもしれません。でもこのタイトルにはこんな著者の思いが込められています。「タイトルの『ワンクラス上』は、私がワンクラス上だという意味ではありません。世の中には経済の入門書がたくさんあり、ネットを調べれば、入門段階の情報を簡単に入手することができます。それはそれで大切だと思います。しかし、経済は『あと一歩踏み込んで考えれば新しい風景が見えてくる』ということが多く、『その一歩はそんなに難しくはない』というのが私の考えなのです。常識的・表面的な知識に満足せず、もう一歩考えを進めてみたい。それがこの連載の狙いであり、私自身がその一歩を踏み出すつもりで書いていきたいと思っています。コメントも歓迎です。どうかよろしくお願いいたします」。日本経済、そして自分自身の視点を「ワンクラス上」にするための経済コラムです。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン