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「将来世代のため」どころかもはや「現世代」の問題?

日本経済・世界経済の展望(下)~日本の財政危機編その2

2012年2月29日(水)

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日本経済・世界経済の展望(上)から読む)
日本経済・世界経済の展望(中)から読む)
日本経済・世界経済の展望(下)~日本の財政危機編その1から読む)

 前回は、日本の財政状況が深刻な状態であることを確認し、景気頼みでなく政策的に財政再建のための努力をすることが必要だということを述べた。ではその再建の歩みはどうなっているのかを評価してみよう。

財政の維持可能性(サステナビリティー)の議論

 財政再建の基本は、財政を維持可能(サステナブル)なものとすることである。この「維持可能性(サステナビリティー)」という考え方は、経済社会の諸問題を考える上で大変重要な概念なので、最初にこの点を説明しておこう。

 米国コロンビア大学のジェフリー・サックス教授は、近著「The Price of Civilization(『文明の対価』、翻訳はまだ出ていない)」という本で、経済の目的は「効率」「公平」「維持可能性」を達成することだと述べている。「効率」と「公平」という二つは多くの経済学者が指摘しているのだが、これと並べて「維持可能性」を唱えたところが新しい。

 「維持可能性を考える」ということは、「将来を考える」ということと同じである。「維持可能性問題」というのは、現在は特に問題が起きていないが、現在の状態を続けていると、やがては大きな問題が起きることになる状態を指している。

 最近しばしば話題になるのが、地球環境のサステナビリティーである。現在我々は、種々の経済活動を通じて温暖化ガスを排出し続けている。その結果大気中に温暖化ガスが累積し、これが大気の温度を上昇させる。これは現在特に大きな問題を引き起こしているわけではないが、このまま温暖化ガスを排出し続ければ、大気の温度はますます上昇し、北極や南極の氷が溶けて海水の水面が上昇するなど、人類全体に大きな被害をもたらす。この議論が正しいとすればと(間違いだという人もいる)、現在の経済活動は、地球環境という観点から見て「維持不可能(サステナブルでない)」ということになる。

 そこで、温暖化ガスの排出量を世界的にコントロールしようするわけだが(なかなかうまく行っていないが)、これは現世代が将来世代のことを考えて行動するということでもある。現世代のことだけを考えるのであれば、現在問題が出ていなければそれでいいのであり、経済政策は現時点での「効率」と「公正」だけを考えればいい。持続可能性を考えるということが、将来世代のことを考えることだということが分かるだろう。

コメント7件コメント/レビュー

過去の世代を借金を大きくしてきたからといって責めることはできないという意見には賛同するが、過去の世代がこの問題への対処を誤っているから依然として高水準の借金体質になっているという点は大いに責めるべきだろう。その過ちとは・・・、筆者が述べるような「緊縮財政によって」なんとか借金を減らそうという「後ろ向きな」考え方である。ミクロでしか物事を捉えてない経済学者の多いこと・・・。(2012/02/29)

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「「将来世代のため」どころかもはや「現世代」の問題?」の著者

小峰 隆夫

小峰 隆夫(こみね・たかお)

法政大学大学院政策創造研究科教授

日本経済研究センター理事・研究顧問。1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。2003年から同大学に移り、08年4月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

過去の世代を借金を大きくしてきたからといって責めることはできないという意見には賛同するが、過去の世代がこの問題への対処を誤っているから依然として高水準の借金体質になっているという点は大いに責めるべきだろう。その過ちとは・・・、筆者が述べるような「緊縮財政によって」なんとか借金を減らそうという「後ろ向きな」考え方である。ミクロでしか物事を捉えてない経済学者の多いこと・・・。(2012/02/29)

30代前半男性です。国の財政について、黒字化の必要性はあるのでしょうか?もちろん、財政維持は必要だと思いますので、支出と収入の差を縮める必要はあると思います。が、国の財政黒字化はインフレ(通貨発行)方法でも増税方法でも国民と民間企業の資産(価値)を減らすことにつながるからです。通貨発行を行い、日本貨幣総量を増やしながら黒字化を行った場合、通貨の価値は下がっていきます。おそらく、物価も上昇するでしょう。国民,民間企業の資産は減らなくても通貨の価値が下がるのですから資産価値は減っていきます。つまりは負担増。国の財政が赤字だからこそ、国民,民間企業の資産は黒字になっていると考えられます。まぁ、財政維持のための負担増は避けられないのかなと思います。(2012/02/29)

財政赤字の問題の根の深さは急激な少子化と人口の減少である。 『広く平均して課税』する消費税も人口が減れば税収も減る。 2040年代には1億を割り、2100年には5千万人を下回ると予測されている。 1000兆円の借金を22世紀まで繰り越す事はどうしても避けなければならない。 常識的には2040年頃までには完済出来る見通しが必要だ。 『2020年度の基礎的財政収支黒字化は実現しない』では遅過ぎる。 国会議員の定数半減、国家公務員の給料半減くらいの事を2、3年の内に実現するくらいの勢いが無ければ、消費税を20%に上げても借金は減り始めないだろう。 日本の多くの政治家には危機意識が無さ過ぎる。 こんな意識の低い政治家達に日本の政治を委ねている事に何ともやり切れなさを感じる。(2012/02/29)

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