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「スーパー・マリオ」は万能か?

次のリスクは、歪む中銀のバランスシート

2012年3月15日(木)

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 2月29日、欧州中央銀行(ECB)が2度目の3年物長期流動性供給オペレーション(以下長期オペ)を実施した。イタリア、スペイン、フランスをはじめとする7カ国において、長期オペ受け入れ適格担保要件が緩和されたことなどもあり、市場予想を上回る800行が参加し、約5300億ユーロの流動性供給が行われた。昨年末の長期オペと合わせれば、総額約1兆ユーロの資金供給が行われたことになる。

 各行の発表や英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙の報道などによれば、金額面で中心となっているのは、事前予想通りイタリアやスペインの銀行だった。昨年末以来行われているこの長期オペの結果、2012年の金融機関の資金需要は相当満たされたのではないかと言われている。さらに、供給された流動性資金の一部は南欧各国のソブリン国債購入に向かい、国債利回りも押し下げ、ソブリン危機の緩和にも貢献した。

 ECBのマリオ・ドラギ総裁は昨年11月の就任以降、このような積極的な金融政策を展開し、メディアなどでは「スーパー・マリオ」とも呼ばれている。イタリアのマリオ・モンティ首相とともに、金融市場の評価は上々である。

バイトマン独連銀総裁が警告

 最近の常として、こうした楽観ムードに水を差す声は、大体ドイツから聞こえてくる。長期オペが実施された2月29日、イエンス・バイトマン独連銀総裁がドラギECB総裁に送った書簡の内容が独紙により報じられた。同紙やFT紙の報道では、バイトマン総裁はECBの長期オペによって、独連銀のバランスシートが拡大していることに関して懸念を表明し、担保基準を従来に戻すことを提案したといわれている。

 確かに、3年の長期オペを行うということは、長期貸出をすることと同義なので、与信リスクがある。それゆえに担保が要求されるわけであるが、その担保は今回適格要件が緩和された。中銀の「最後の貸し手」としての機能と、リスクを取ることによって生じる「中銀の信用」の問題は、トレード・オフの関係にあるわけだ。

 実際に独連銀のバランスシートの概略を見てみよう。以下の図表は、2005年末と2011年末の同行の大雑把なバランスシートを比較したものだ。資産側では今回の長期オペを含む中銀貸し出しの残高が減少すると同時に、「TARGET2与信」と呼ばれるECB向け債権が増えた。一方で負債側をみると、中銀当座預金やターム物預金などのシェアが増えている。

 TARGET2とは、「汎欧州即時グロス決済システム」と訳される。ユーロ圏の国境をまたぐ決済を円滑にするための仕組みで、その決済機能の中核をユーロ圏各国の中央銀行が担っている。やや長くなるが、以下簡単に説明を行おう。

 例えば、ドイツD社からイタリアI社に自動車を売った場合、自動車の販売代金は、イタリアの民間金融機関IB銀行にあるI社の預金から資金が引き落とされ、ドイツの民間金融機関DB銀行にあるD社の口座に入金される。この際、当然イタリアIB銀行とドイツDB銀行の間で資金決済されることが必要になるが、それはIB銀行がイタリア中央銀行に保有している中銀口座の残高が減少すると同時に、独連銀にあるDB銀行の中銀口座の残高が増加する。

 この中銀ネットワークを通じた国境をまたぐ資金決済の仕組みがTARGET2と呼ばれ、この結果、ドイツとイタリアの民間会社と銀行の間の資金決済は終了する。ただ、独連銀がイタリア中銀の代わりに資金をDB銀行に支払っているため、中銀間の債権・債務関係は残る。

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「「スーパー・マリオ」は万能か?」の著者

吉田 健一郎

吉田 健一郎(よしだ・けんいちろう)

みずほ総合研究所 欧米調査部/市場調査部

1972年東京都生まれ。96年一橋大学商学部卒業、2012年ロンドン大学修士(経済学)。富士銀行(現みずほ銀行)新宿西口支店入行。98年同国際資金為替部にて対顧客為替ディーラー。2004年よりみずほ総合研究所に出向し、08年よりロンドン事務所長。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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