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ユーロ圏を悩ます2つの「トリレンマ」とは?

長期化する危機にユーロ安が処方箋に

2012年8月9日(木)

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 ユーロ危機が常態化している。その間に、主要通貨に対するユーロ安がすっかり定着した。危機の端緒となった2009年のギリシャ総選挙以降、今年7月末までのユーロの下落率を見ると、対ドルで16.4%、対円で38.6%、そして対G10(主要10カ国)通貨平均では23.6%と、ユーロ大幅安が全面的に進行している。

  もっとも、こうしたユーロ安に意外感をもつ読者は少ないだろう。債務危機によるユーロに対する信認低下や景気減速、そして欧州中央銀行(ECB)による緩和強化と、通貨安要因は枚挙に暇がないからだ。筆者も含め、多くの市場参加者にとっても、ユーロの大幅下落は予想通りの結果といえる。

出所:ブルームバーグ、Factset
注:ユーロ導入前の為替相場は、Factset算出によるユーロ加盟国旧通貨の合成値

 ただし、筆者は、確かにユーロ安は危機の「結果」、言い換えれば「症状」である一方で、それが危機の衝撃を和らげる「緩衝材」、つまりは「処方箋」の1つにもなっていることに注目したい。危機打開が難航しているユーロ圏では通貨安が歓迎されやすく、目下の市場の織り込み以上に今後もユーロ安が長期化する可能性はありそうだ。

ユーロ圏の抱える2つのトリレンマ

 ユーロ安が長期化すると考える理由は、ユーロ圏が根源的に内包している経済と政治という「2つのトリレンマ」に起因する。トリレンマとは、3つの理想は同時に実現できないという概念だ。

 まず、ユーロ圏が抱える経済的なトリレンマとは、いわゆる「国際金融のトリレンマ」で説明できる。国際金融のトリレンマとは、(1)為替相場の安定、(2)独自の金融政策、(3)自由な資本移動の3つを同時に満たす制度は原理的に不可能で、同時に実現できるのは2つまで、という命題である。

 ユーロはそもそも、このトリレンマの制約を抱えた制度であり、(1)為替相場の安定と(3)自由な資本移動を選択する代償として、欧州各国は(2)金融政策(および通貨)の独自性を放棄して統一通貨ユーロを採用した。このことが、ユーロ危機の根底にある。

 GIIPS(ギリシャ、アイルランド、イタリア、ポルトガル、スペイン)と呼ばれるユーロ圏の重債務国にとって、独自の通貨・金融政策を放棄した代償は、当初に覚悟したよりもはるかに大きかったに違いない。重債務国の多くは、体質的に高インフレ、経常収支赤字の国々だ。しかし、1999年のユーロ導入以降(ギリシャは2001年)、ドイツの経済状態に合わせた低い政策金利と通貨高を余儀なくされ、それが資産バブルの生成と崩壊を引き起こす素地になった。実力以上の低金利と通貨高によって蔓延した過剰な資金調達と購買力を、トリレンマの制約で各国は独自の通貨金融政策で制御することができず、不均衡が拡大していったのである。

緊縮策が顕在化させた「政治的トリレンマ」

 そしてもう1つのトリレンマが政治にある。経済学者ロドリクの「政治的トリレンマ」仮説によれば、(1)経済統合、(2)国家主権、(3)民主主義(大衆政治システム)、の3つを同時には達成できない。これをユーロ危機に揺れる現在の南欧諸国に当てはめるとどうなるか。

 GIIPSなどの重債務国にとっての目下の課題は、債務削減のための構造改革だ。しかし、通貨と金融政策が固定されている状況下での是正策は限られる。そのため、結局は物価や賃金を切り下げる「内的減価」で競争力の回復を図るしか選択肢がない、という厳しい状況に置かれている。

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「ユーロ圏を悩ます2つの「トリレンマ」とは?」の著者

武田 紀久子

武田 紀久子(たけだ・きくこ)

国際通貨研究所 経済調査部上席研究員

1989年、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入社以来、一貫して市場関連業務に従事。1999年、為替アナリスト班立ち上げメンバーに。以降、マーケット・エコノミストとしての活動を続けている。2015年10月より国際通貨研究所へ出向。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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