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欧州危機が「日本化」より深刻な4つの理由

勤勉なアリはなぜキリギリスを助けるべきなのか

2012年12月17日(月)

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 先日、イタリアのシチリアで、「欧州危機と対応」というテーマで話をする機会を得た。聴衆は政策当局者も含む日伊ビジネスグループ(IJBG)参加者の方々で、彼らを前に日本人の私が何を話すのか戸惑いもしたが、今回はその時ご紹介した話を基に進めたい。

 欧州危機は、発生から3年を経過してもなお解決していない。日本人からするといささか不名誉な表現だが、日本における1990年代の大規模な銀行危機の経験から、欧州の「日本化」を指摘する向きもある。

欧州は「日本化」するのか?

 日本では1980年代後半に大幅に上昇した株価と不動産価格が1990年代の初頭に暴落に転じ、かなりの時間を経て銀行危機に発展した。バブル崩壊後、最初の金融機関の破綻は5年後の1995年で、大手金融機関の破綻が相次いだのは97年から98年にかけてであった。日本経済が現在まで低迷を続けていることは、銀行危機だけではなく、特に最近10年間では生産年齢人口の減少などほかの要因も大きく関与している。しかし、日本が銀行危機の克服に長い時間を要したことは事実である。

 その主な理由は、第1に、問題解決に必要な不良債権処理、バランスシートの修復を先送りする強いインセンティブが銀行経営者や政策当局にあったことだ。第2は、大規模な銀行危機への対処は、通常の法的整理に任せてしまえば金融システム全体の機能不全や国民経済に重大な悪影響を与える可能性があったために、公的介入を必要としたことである。しかし、ルールに基づかない裁量的な公的資金投入は、国民の理解を得ることが難しかったことが指摘できる。損失先送りのインセンティブの存在や、公的介入に対する国民の理解を得ることの難しさは、欧州においても同様であろう。

欧州危機は日本のバブル崩壊よりも解決が困難な4つの理由

 筆者は、これに加えて、欧州危機を解決には、日本の銀行危機にはなかった困難が少なくとも4つあると考えている。すなわち、(1)ユーロ圏内の経常収支黒字国の有権者の支持の下で資金移転が必要であること、(2)財政緊縮政策をとっていること、(3)金融規制強化を同時に進めていること、(4)今回の危機が過去10年ほどで生じた世界的な信用ブームの反動で生じており、外需に景気下支え役を期待しがたいこと、である。

 その中でも特に困難なのが、債務危機に陥った国が、ほかのユーロ加盟国の有権者の理解を得ることである。欧州危機はある国の大規模な銀行危機という側面に加えて、ユーロ圏域内の競争力格差を背景とした経常収支の不均衡問題という側面もある。為替レートで域内格差を調整できないユーロ圏の場合、国内でのデフレ的な調整が大きくならざるを得ず、緊縮・構造改革政策に対する国民の負担は重く、不満も高まりやすい。

 さらに、政府が同時に市場の信任を失ってしまったために、金融セクターの不良債権の償却原資や資本注入に国外の資金を導入しなければならない。これには他のユーロ加盟国の市民、特にドイツなど経常収支黒字国の有権者からの理解と支持を得る必要があり、国外からの公的介入を決断するまで、欧州が日本以上に政治的合意に時間を要したとしても、極めて自然なことのように思われる。統一通貨ユーロを維持することの意義をこれまで以上に各国市民、特に経常収支黒字国側の市民に訴えねばならないだろう。

アリとキリギリスの寓話と合成の誤謬

 経常収支の不均衡問題はありふれた話だが、多くの場合は赤字国側の借りすぎの問題として捉えられている。イソップのアリとキリギリスの寓話は、キリギリスの自業自得の物語として理解されるのが普通で、冷酷なアリのお話と理解する人は少ない。しかし、赤字国側(キリギリス)に緊縮政策を強いると、国民所得の低下に伴って、債務の返済可能性(ソルベンシー)が悪化し、金融危機はますます解決が困難になる。

 もちろんキリギリスがアリ(経常収支黒字国)に生まれ変わるための努力、すなわち赤字国側の構造改革は重要だが、短期的には成長を下支えする政策が同時に必要であろう。問題を抱える国では、成長刺激策や金融システムの不良債権処理に充てる資金が国内では調達できないのであるから、何らかの国外からの資金流入が必要となる。ところが欧州では財政資金の移転を禁じ、共通債などの発行にドイツは反対している。これでは、不安定な状態が長引くのは必然であろう。

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「欧州危機が「日本化」より深刻な4つの理由」の著者

池田 琢磨

池田 琢磨(いけだ・たくま)

ノムラ・インターナショナル

野村総合研究所、郵政研究所、野村総合研究所アメリカ、ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルを経て、2007年より現職

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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