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英国の賭け、“Brexit(脱EU)”の現実味

ユーロ救済で加速する統合強化の反作用

2013年2月8日(金)

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 「脱EUを問う国民投票を実施する」――。

 そう演説で宣言したのは、これまで何度も脱EUが取り沙汰されたギリシャの首相ではない。欧州の大国、英国のキャメロン首相だ。

 1月23日、キャメロン首相はロンドンの金融街シティで講演を行い、EU(欧州連合)離脱の是非を問う国民投票を2017年までに行うことを明言した。その演説は即座に国内外に波紋を広げ、英国=Great BritainのEU離脱(exit)を指して「Brexit(ブレキジット)」なる言葉も生まれるほどの関心を集めている。

今、国民投票を実施すれば“脱EU”の可能性は半々

 英国のEU離脱論が高まった背景の1つは、ユーロ圏で進んだ債務危機の深化だ。

 ユーロは今、その歴史で初めてとなる構造的で深刻な危機に面している。このため、ユーロ危機が勃発してから、英国では「ユーロ圏に入っていなくて良かった、EUからも離脱すべき」という世論が強まっている(下の図表)。

 キャメロン政権が、脱EUの是非を問う国民投票を宣言するまでの経緯を、ここで振り返っておこう。

 その発端は、2010年の総選挙だった。金融機関への公的資本注入などを行った当時の与党労働党は支持率を落として、政権を失った。代わりに誕生したのが保守党と自由民主党の連立政権で、特に保守党議員の中でも「ユーロ懐疑派」が数多く当選して勢力を強めた。閣僚を含めたユーロ懐疑派の力が増すにつれて、同派は「EUから出るか出ないか(イン・アウト)」を問う国民投票の実施を声高に要求するようになった。

【図表 EU離脱を問う国民投票に関する世論調査】
(資料)Ipsos Mori

 2011年7月には、EUへの主権委譲を決定する場合は国民投票が必要であることを盛り込んだ「2011年欧州連合法」が成立。これに勢いづいた保守党ユーロ懐疑派は同年10月、EU加盟の是非を問う国民投票を実施すべきという動議を提出。下院での決議は否決されたものの、党議拘束にもかかわらず80人近い大量の造反者を出して政権にプレッシャーをかけた。

金融取引税導入や財政主権の一部放棄は受け入れられない

 こうした中で迎えた2011年末のEUサミットにおいて、EU内の新財政協定の締結に当初は英国だけが反対の意思を示し、この頃から、英国のEU内での孤立が浮き彫りとなり始めた。背景には金融取引税導入などに関し英国の意向が受け入れられなかったことや、財政主権の一部放棄への拒否感があった。首相の独断に自民党のクレッグ副首相は反発したものの、保守党ユーロ懐疑派は拍手喝采した。

 翌2012年に入るとキャメロン首相は英デイリー・テレグラフ紙に寄稿し、公式に国民投票実施の可能性について言及した。そして、冒頭の英国とEUの新たな関係を表明する演説へと繋がっていく。この演説の中で、キャメロン首相はEUの基本法であるリスボン条約の改正において、EUからの権限回復を盛り込むことを提案、その結果を踏まえて、次回議会会期中の2017年までに「イン・アウト」を直接問う国民投票を実施することを宣言した。

 こうして、キャメロン首相は1975年以降英国の指導者が誰一人行わなかった「大きな賭け(英フィナンシャルタイムズ紙)」に出ることになった。

EUを「脅迫」し英国の権利の奪還を狙う

 キャメロン首相の「賭け」が吉と出るか凶と出るかは未知数だ。しかし、同首相の狙いは、国民投票の実施を宣言することによって保守党内のユーロ懐疑派を抑えつつ、ほかのEU加盟国をけん制することにあるようだ。

 ドイツ政府高官は、そんなキャメロン首相の態度を「ブラックメール(脅迫状)」と批判した。それでも、キャメロン首相としてはこうした批判を覚悟の上で、リスボン条約の改正に伴って雇用法などに関する自国の権利をEUから取り戻す一方、英国の国益でもあるEUの単一の財・サービス市場にはとどまるという“一石二鳥”の効果を期待する。

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「英国の賭け、“Brexit(脱EU)”の現実味」の著者

吉田 健一郎

吉田 健一郎(よしだ・けんいちろう)

みずほ総合研究所 欧米調査部/市場調査部

1972年東京都生まれ。96年一橋大学商学部卒業、2012年ロンドン大学修士(経済学)。富士銀行(現みずほ銀行)新宿西口支店入行。98年同国際資金為替部にて対顧客為替ディーラー。2004年よりみずほ総合研究所に出向し、08年よりロンドン事務所長。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師