2020年の東京オリンピック(五輪)開催が決まった。これに伴い、民間エコノミストの間では、恒例ともいえる経済効果の試算が色々と発表されている。しかし、その金額は3兆円から150兆円と様々なようだ。
この議論の過程で、2012年のロンドン五輪後、英国における1年間の経済効果が99億ポンド(約1兆5500億円)であったとする、英政府ならびにロンドン市発表の資料に言及する報道もいくつか見られた。
はたして五輪開催は、いかほどの経済効果を期待できるのだろうか。ロンドン五輪に対する英国の評価を検証しつつ、考察してみたい。

オリンピックを開催しなくても投資は起きた?
上述の99億ポンドという「経済効果」の試算は、発表直後から英国では激しい批判にさらされた。99億ポンドの内訳は、25億ポンドの五輪後の対内直接投資、15億ポンドの来年のソチ・冬季五輪など五輪関連事業への英国の関与、59億ポンドの五輪関連事業への販売促進による輸出拡大からなっている。
しかし、例えば25億ポンドの五輪後の対内直接投資のうち、10億ポンドはロンドン中心部から約20キロも南に下ったクロイドン市への大型ショッピングセンターの建設であったこともあり、これが本当に五輪効果なのか、といった批判が起きた。
政府による経済効果発表直後に英国営放送BBCのラジオ番組に出演した、英ビジネス・イノベーション省のビンス・ケーブル大臣は、上記のような批判に関して「何も無くともこうした投資は起きたか、ですか?案件のうちいくつかは確かにそうかもしれない」とコメントし、99億ポンドの試算は「厳密にアカデミック」なものとは言えないとも述べた。
そのほか、英デイリーメール紙は、ロンドン五輪の陸上女子7種の金メダリストで、人気者のジェシカ・エニス氏がトレーニングを行ってきた競技場が年間70万ポンドの運営費を削減するために閉鎖されることや、英スカイニュースによる世論調査で回答者の88%が「五輪によって何か新しいスポーツを始める気にはならなかった」と答えたことなど、マイナスの側面に注目した報道を行っている。
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