インドネシアでは、ユニ・チャームの紙おむつやマンダムの整髪料は1つずつ小分けして販売されている──。新興国攻略のお手本として取り上げられることが多いエピソードです。現地の消費者にとって、紙おむつや整髪料は日常的に使えるものではなく、「お出かけ」など特別な日に使うもの。だから、小分けして買いやすくした。言われてみれば、当たり前の工夫のように思えますが、現地で庶民の生活をつぶさに観察しなければ、たどり着けない販売手法でした。
これもよく知られる話ですが、三洋電機の白物家電事業を買収した中国の海爾集団(ハイアール)は「野菜を洗える洗濯機」を販売しています。中国の農村部などで洗濯機の故障が多いことに着目。その原因が衣類でなく野菜を洗っていたことだと判明し、「ならば、野菜も洗える頑強な洗濯機を作ろう」と開発に乗り出したそうです。恐らく日本企業だと、原因を知った段階で「洗濯機は野菜を洗うものではありません」と現地の消費者の啓蒙活動に走ったのではないでしょうか。
「平均年収が700万円もする日本の研究者が、年収100万円以下の人たちの社会に向けて、受け入れられるモノを作るのは正直、難しい」。昨年12月5日号の編集長インタビューで関西ペイントの河盛裕三社長がこう語っていたのを思い出します。海外市場の攻略は、安全で快適な生活に慣れてしまった我々の「思い込み」を捨てることから始まるのかもしれません。「解」は国内にはありません。今号の特集のテーマは、15人の海外展開の先駆者たちに学ぶ成功の秘訣です。
日経ビジネス 2012年6月25日号より
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