以前、このコラムで全日本の柔道の監督に外国人を招聘してはどうかと書きました。柔道というスポーツがオリンピックに採用されてグローバル化した以上、世界標準の技術やルールを体得する必要があると思うからです。いつまでも「技術で勝って、ルールに負けた」と嘆いていても仕方ありません。最近、女子柔道の代表監督の体罰が問題になっていますが、これも世界から見れば、極めて異質な世界。一部では、外国人監督を招聘すべきという声も浮上しているようです。
今号の特集のテーマであるインフラは、柔道の置かれている状況に似ています。日本ではインフラ輸出は有望なビジネスと言われていますが、足元を見れば、国内のインフラ事業は純血主義。インフラ建設や維持運営に外国の資本や技術を大胆に取り入れた例は皆無です。インフラビジネスを世界中で展開しようとするのは、柔道で言えば、オリンピック競技に出るようなもの。国内では純血主義を貫き、海外で受注を増やしたいというのは、少々都合の良すぎる話ではないでしょうか。
かつて世界では相手にされなかったサッカーが、このところオリンピックやワールドカップで活躍するようになりました。背景には外国人監督の招聘や選手の海外移籍など、人材の国際化があったと思います。特集では、“インフラ老朽化先進国”である欧米が、外国の資本や技術を取り入れて事態を打開している事例を紹介しました。笹子トンネルの事故が示す通り、老朽化が目立つ日本のインフラ。立て直すには、柔道型からサッカー型への意識転換が必要な気がします。
日経ビジネス 2013年2月11日号より
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