悪筆に悩む人は多い。私もそうだ。何とかならないものかと試行錯誤してきたが、実感として決め手はない。そこで発想の転換、行書を書いてみてはどうだろうか。
文字をきれいに書くためのコツやライフハックはいろいろある。だが、一見簡単なルールに見えても実は面倒な練習をするしかなかったりする。
比較的簡単なコツといえば、NHK番組「ためしてガッテン」で放映された「さらば!クセ字&悪筆 1時間で美文字に変身」だろうか。楷書の文字内部の隙間をできるだけ均等にするように書くとよいというものだ。これも実際にやってみると分かるが、それほどきれいにはならない。
「文字をきれいに書くコツはない」と諦めていたのだが、行書をすらすらと書く、ある米国人のことを思い出した。彼は「なぜ現代日本人は行書を書かないのですか」と言っていた。そう言われてみると、習字をやったことがある人以外、行書は書けないと思い込んでいた。
彼はさらにこう言った、「手書きで日本語を書くために行書があるのです」。その言葉は心に残っていた。私が子どもの頃、父に届く手紙は行書か草書で書かれていた。なぜこんなに漢字の形が違うのかと父に尋ねたこともあった。
そういう思いがあったせいか、NHK番組「まる得マガジン」で放送されていた「簡単ルールで大人の字を書く」のテキストを購入して試してみた(再放送は2009年1/5〜1/22)。
短期間にきれいな行書が書けるようになるのは無理だが、行書は書いてみると楽しい。日本語の手書きは行書で書いてこそ合理的だとも確信できた。
行書を書くのが面白くても、ある程度きれいに書けないうちは仕事で他人に見せる文字として使うのは問題だろう。第一歩としては、自分の名前や住所、会社の名前など、比較的何度も書く文字を行書で書けるようにしてみてはどうだろうか。
練習は紙に鉛筆やボールペンで文字を書くとよいが、人差し指で空間に見えない行書をなぞってみるだけでも練習になりそうだ。ぼんやりと人待ちなどで時間を潰している時、空間やテーブルの上で行書を書くように人差し指を動かしてみる。その滑らかな手の動きに音楽のような心地良さが感じられる。
人差し指で文字を感じるようになると、書家が書いた立派な文字を見る時にも、体感的に音楽のような印象が伝わるようになる。書の面白さというのはこういうものかとも納得できるようになる。
テクニカルライター。1957年東京生まれ。国際基督教大学卒業後、同大学院で言語学を学ぶ。1990年前半友人と翻訳・テクニカルライティング事務所を経営。1994年末、インターネットによる遠隔地業務可能に合わせフリーランスとなり沖縄に移住。2002年東京に戻り現在に至る。「日経クリック」(現在休刊中)で10年間Q&Aを担当。日経トレンディネットネットで起きてる最新トレンド、およびGoogle調査隊のコラムを執筆中。著書、『ブラウザのしくみ』(技術評論社)、『Ajax実用テクニック』(ナツメ社)など。






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