「米国ネットの“ざわめき”を聴く」

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2007年4月25日(水)

第12回 「爆弾騒ぎ」を引き起こしたバイラルマーケティングの損得勘定

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 企業が若年層へ製品・サービスのプロモーションをする時には、彼らの注目を集めようとして過激なマーケティング手法を用いることがある。しかし、時と場所、ターゲットユーザーを見間違うと、思いもよらぬ誤解や反発を招き、さらにはとんでもない結果をもたらす可能性もある。1月31日、米Turner Broadcasting System の深夜の大人向け人気アニメ番組Adult Swim の中の人気アニメシリーズ「Aqua Teen Hunger Force (ATHF)」のバイラルキャンペーンは、ボストン市内で爆弾騒ぎにまで発展した。「Boston bomb scare(ボストンの爆弾の恐怖)」、「Aqua-Gate(アクアゲイト)」、「Boston Mooninite ad scare(ボストンのムーニナイト広告の恐怖)」と呼ばれるほど、全米規模で有名な事件となった。

 以下にキャンペーンの内容と、“事件化”していった経緯を記す。

無断設置の電光掲示板が大騒動に発展

 もともとこれは、アニメ専門のケーブルテレビ(CATV)局Cartoon Network が、ATHFの映画のプロモーションのために実施したバイラルマーケティングだった。まず、このアニメのMooniniteというキャラクターを描いた電光掲示板を多数用意し、全米10都市(ボストン、ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴ、アトランタ、シアトル、ポートランド、オースティン、サンフランシスコ、フィラデルフィア)の公共の場所に許可なく設置した。

 この“ゲリラ広告”ではMooniniteが中指を上に突きさした(これは米国では人を侮辱する時に使うサインで、公でこの行為をすること自体が問題となる)ポーズを描いており、LED(発光ダイオード)が光って人々の目を引くようになっていた。これを設置することで、ターゲットである若年層の好奇心をあおって、番組のバズ(クチコミ)を創出するもくろみだった。

 事件の当日、ボストン市内ではこの電光掲示板が橋や高速道路など、様々な場所に設置されていたことから、「爆弾ではないか」という通報が市民から警察に寄せられた。「9.11」以来、テロリストの爆弾に神経をとがらすボストン市警は、すぐに爆弾処理部隊の出動を要請。市内の主要な交通網を遮断して、デバイスの検索と撤去作業を始めた。

 その後、これが広告キャンペーンの小道具であることが判明し、広告を実施した米マーケティング会社のInterferenceの依頼によってデバイスを設置した自称アーティストのPeter Berdovsky氏とSean Stevens氏は警察に逮捕された。

 2月5日になってTurnerとInterferenceは、市長や州知事まで巻き込んでボストンの交通機関をストップさせた爆弾騒ぎに対して謝罪。賠償金として市警に100万ドル(1億2000万円、1ドル=120円で計算)、国土安全保障省(Homeland Security)に100万ドル(1億2000万円)]、合計200万ドル(2億4000万円)を支払うということで、和解が成立した。

 2月9日、Cartoon Networkの責任者でTurnerに13年間在籍していた、Executive Vice President & General ManagerのJim Samples氏が、今回のバイラルキャンペーンを許可し実行した責任をとって、辞任する事態にまで発展した。さらに、このデバイスはその発見者の1人によって、「ボストンのアートのための基金」と称してオークションサイトのeBayで競売にかけられた。当初20ドルで始まった価格は、翌日5000ドルを超える高値がついたが、すぐにeBayによってこの競売は中止されるという話題ももたらした。

図●今回の騒動を引き起こしたInterferenceのWebサイト

図●今回の騒動を引き起こしたInterferenceのWebサイト


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著者プロフィール

大柴 ひさみ(おおしば・ひさみ)

大柴 ひさみJaM Japan Marketing LLC代表。日米のマーケティング・ビジネスを橋渡し米国シリコンバレーで、日米のマーケティング・ビジネスのファシリテイターとして、戦略の開発実施・調査分析などのコンサルティング・サービスを提供するJaM Japan Marketing LLCの創設者/パートナー。日本の広告代理店の電通ヤングアンドビルカム、米国広告代理店マッキャン・エリクソンを経て、20年間に渡る日米間のビジネス経験を生かして、1998年にJaM Japan Marketingを設立。「Peer to Peer」(P2P)、「WOM」(Word of Mouth)などを活用した最新のマーケティング手法に注目したサービスを提供している。
ブログ「ひさみをめぐる冒険」を執筆中。本ウェブでは以前「米国ネットの“ざわめき”を聴く」を連載した。


このコラムについて

米国ネットの“ざわめき”を聴く

企業は“クチコミ”を自社のマーケティング戦略にどのように活用すべきか。どんな効果やリスクがあるのか。米国在住の筆者がWOM(Word of Mouth:クチコミ)先進国の最新動向を紹介します。

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