前編ではスーパーボウルのCMとして高い評価を得た事例を紹介した。しかし、今回のスーパーボウルでは、以下に紹介するようにCMへの批判でBad Mouth(悪口のクチコミ)が起きてしまい、CMの放映中止に至った事件も起きている。
GMは自殺防止団体のクレームでCM放映を中止
前編で取り上げたYouTubeのランキングで、7位にランクされたGM(ゼネラル・モーターズ)の「Obsessed Robot Watches Car Go By」は、その後American Foundation for Suicide Prevention(AFSP:米国自殺防止協会)からの批判とクレームによって、急きょ内容を見直すとして、TVでのオンエアを中止した。YouTubeから動画も削除されている。
CMは、自動車の組立工場のロボットを主人公にしたもの。ロボットが流れ作業の中でボルトを落として失敗したことを苦にして、橋から飛び降りて自殺を図るが、それが夢だったことに気づくというストーリーである。CMで表示されたタグライン(メッセージ)は「Obsessed with quality(クォリティへの脅迫観念)」で、本来はGMがクルマ製造においてクォリティを追求しているというメッセージのはずであった。しかし、スーパーボウルでオンエアされた直後に、AFSPはGMに対して、CMのオンエア中止を求めた。「家族を自殺で失った人たちにとって、自殺が失敗や過ちの答えであると助言するような内容」だったためだ。
GMは当初その要求を認めなかった。ところが、その後、コメディ・ニュース番組として人気のある「The Daily Show」がこのCMを題材にしたパロディを放映したことで、さらに問題は大きくなった。その内容は、ロボットが最後に銃で自分を撃ち殺して自殺するという結末に変わっており、司会者のJon Stewart氏は、「この自殺は一台のロボットの問題に過ぎず、3万5000台のロボットを解雇するわけではない」と、GMを皮肉った(現在GMは工場閉鎖に伴い、3万5000人もの従業員を大量解雇をすることが問題になっている)。心の病に悩む人々を支援するNational Alliance on Mental Illness (NAMI)は、2月9日に「GMは心の病に悩む人々への企業としての配慮や責任をどのように果たしていくのか?」といった内容の声明を発表し、Suicide Prevention Action Network、Glendon Association、American Association of Suicidologyなどほかの自殺防止関連団体も、この批判に加わり、CMのBad Mouthは拡大していった。当初GMは、このCMを2月25日のアカデミー賞の受賞式に放映する予定であったが、内容を見直すという理由で、放映を取りやめた。
自動車メーカーへの広告やマーケティング活動に関しては、GMに限らずほかの自動車メーカーも、さまざまな理由で、消費者団体から批判される場合が多い。CMに関しては、このGMと同様に上記の団体から猛烈に反発を受けたのが、通常のCMとして昨年放映されたフォルクスワーゲンのJetta(ジェッタ)のCMである。内容は、ドライバーが会話に夢中になって交通事故を起こすというもので、リアルで衝撃的なシーンが含まれている。筆者も実際にこのCMを何度か見たが、本当に自分が事故で衝突したような実感を伴ったため、思わず息が止まる思いを経験している。このCMも、批判の矢面の中で、放映を中止した。





JaM Japan Marketing LLC代表。日米のマーケティング・ビジネスを橋渡し米国シリコンバレーで、日米のマーケティング・ビジネスのファシリテイターとして、戦略の開発実施・調査分析などのコンサルティング・サービスを提供する










