この「nikkei BPnet NET Marketing」のページを読まれている方は、ネットだけでなく、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌の、いわゆる「4マス媒体」全体とあわせてマーケティングを考えておられる方も多いだろう。なかでも、テレビという媒体の力は依然、非常に強い。
一方、米国では、YouTubeがグーグルに買収され、ネットとテレビの関係が問い直されている。また、国内でもHDD(ハードディスク・ドライブ)ビデオレコーダーが普及してCMがスキップされ、テレビ広告の効率性は日増しに低下している。
こういった状況は、今後どう変化していくのか。日本のテレビ局に働く「ファイナンスの力学」から考えてみた。
米国メディア各社は、YouTubeを“殺す”のか?
ここで、第6回に書いたグーグルによるYouTube買収を復習してみよう(図1)。

図1●グーグルのYouTube買収によるリスク
YouTubeには、テレビ局や映画会社の了解を得ないビデオのコピーも投稿され、それがYouTubeの人気やページビューの源泉となってきたのは事実である。このため、YouTubeは、そうしたメディア各社から著作権侵害などの訴訟を受け、巨額の損害賠償義務が発生する可能性がある。
一方、YouTubeは、グーグルに買収されて子会社にはなったものの、「別会社」として運営されている。株式による投資は原則として「有限責任」であるので、グーグルは、YouTubeがどのような訴訟を受けて損害賠償義務を負ったとしても、直ちに連帯責任を負う、というわけではない。
第6回でも書いたとおり、YouTubeがベンチャーキャピタルから調達した資金はせいぜい日本円で数十億円程度。その後、グーグルから多少の資金注入が行われているとしても、YouTubeが百億円単位のキャッシュを持っているとは考えにくい。つまり、メディア各社がYouTubeを「たたきつぶす」ことができても、あまり「金は取れそうにはない」のである。
米国のメディア企業の経営陣の多くは、日本のテレビ局の経営陣のように「テレビや映画の現場からたたき上げた人物」でも「地上波の利権を守る人たち」でもない。株式市場からの評価をいかに上げるかを考えている「ファイナンス的な人たち」、である。
YouTubeをたたきつぶしても一銭にもならない。だが、日本円で1兆円以上の資金を持っているグーグルの納得する条件で和解すれば巨額の和解金が取れ、インターネット戦略にもプラスになる。仮に、メディア各社がそう判断するとしたなら、和解を選択する可能性は高いだろう。
そうなった場合に、はたして、日本のテレビ局だけインターネット戦略に消極的でいられるだろうか。












