2006年10月23日。携帯電話の番号を、キャリア(通信事業者)の垣根を越えて移行できる「ナンバーポータビリティ」(MNP:Mobile Number Portability)開始前日、ボーダフォンを買収して携帯電話市場に参入したソフトバンクが、大胆な割引サービス「予想外割」を発表した。ナンバーポータビリティ開始後最初の週末にあたる10月28日、29日には、顧客の殺到やソフトバンクのシステム障害により、受け付けが停止されるというトラブルも発生した。
ナンバーポータビリティの開始や、“予想外”な価格体系をひっさげたソフトバンクの参入は、日本の携帯電話市場が“最終戦争”の局面に入ったことを感じさせる。今回および次回の2回に分けて、この日本の携帯電話市場が今後、どのように展開していくのか、財務的な切り口から考えてみたい。
自分より「大きな」ボーダフォンを飲み込んだソフトバンク
2006年4月24日、ソフトバンクは、英国のボーダフォン・グループ等が保有していたボーダフォン日本法人(以下「ボーダフォン」)の株式をTOB(株式公開買い付け)により取得し、子会社化した。この買収は、どのように行われたのだろうか?
まず、買収されたボーダフォンと買収したソフトバンクの企業規模を比べてみよう(図1)。ボーダフォンとソフトバンクを比べると、資産規模(貸借対照表)こそソフトバンクの方が大きいが、その資産の差は主として保有しているキャッシュ(現預金や流動性のある有価証券、図1中の「流動資産」の部分に相当)の量の差である。自己資本(資本金等と利益剰余金他)や、売上高および利益も、買収されたボーダフォンの方が大きい。また、ソフトバンクは、長年にわたる巨額の赤字により利益剰余金がマイナス(欠損金)となっており、売上高経常利益率も2.5%にとどまっている(ボーダフォンは同5.0%)。
つまり、単純に財務諸表の数値だけ見ると、ソフトバンクは、“自分より図体(ずうたい)の大きい”ボーダフォンをパックリと飲み込んだことになる。
一方、市場でのソフトバンクの評価(時価総額)は、非常に高い。2006年10月30日現在、ソフトバンクの時価総額は約2兆7000億円である。ソフトバンクがボーダフォンを買収できたのも、こうした市場からの高い評価を得ている、いわゆる「時価総額経営」の力が間接的に影響していることは間違いない。それにしても、1兆7000億円というのは、並大抵の買い物ではないはずであるし、またよく見ると、今回のスキームに直接、ソフトバンクの株価の力が用いられたわけではない。

図1●ボーダフォンとソフトバンクの企業規模比較















