インターネットが商用化された1990年代後半、インターネットの巨大なポテンシャルに気付いた人たちの中には、「インターネットは、低コストで情報が瞬時に世界中に行き渡るから、誰でもビジネスを始めることができ、情報格差や貧富の差がなくなる」と主張する人が多かった。米マイクロソフトのビル・ゲイツ氏も、「フリクション(摩擦)ゼロの資本主義」が来ると著書「ビル・ゲイツ未来を語る」に記している。
それから十年余りが過ぎた今振り返ってみると、確かに、10年前に比べて情報は極めてオープンにはなった。しかし、世界を見渡してみて、社会やビジネスにおける「平等性」が高まったかというと、まったく逆ではないだろうか。ヤフー、グーグル、イーベイといった企業は、「一人勝ち」状態となり、巨大な利益を享受している。
なぜ、情報のオープンさが増したのに、逆に格差は広がり、「一人勝ち」が発生してしまったのだろうか。
「ネットワーク外部性」を発生させよ
経済政策的観点からは、競争原理が働く環境を保つことは重要だが、ビジネスをやっている人の発想はまったく逆だ。永遠に多数乱戦の泥沼的競争に巻き込まれるようなビジネスモデルでは、安定的に十分な利益を出し続けることは極めて困難で、そもそも資金を出す投資家が現れないし、経営する方もやる気が続くわけがない。つまり、商売というのは、経済の教科書を逆手にとって、「いかに競争が働かないような、“ゆがんだ”おいしい市場を獲得できるか」が肝になるのである。
では、ネットビジネスの世界において、価格や品質だけで利用者が他に移ってしまわないようにするには、どうしたらいいのだろうか? そういう状況を作り出せる有力な要素の一つが、今回のキーワード「ネットワーク外部性」である。
「ネットワーク外部性」とは、その製品やサービスの利用者が増加するにしたがって、利用者の便益が高まる効果を指す経済学上の用語であり、IT産業ではよく見ることができる現象である。
例えば、WindowsなどのOS市場では、そこで使われるソフトウエアや利用者が増えれば増えるほど、他へ乗り換えづらくなる。通信も、プロトコルやイーサネット、メール、メッセンジャーなどを使う人がそれぞれ一定の「しきい値」を超えると、使うメリットが急激に増大し、他のプラットフォームに乗り換えることが困難になり、結果として「一人勝ち」が発生する。価格や品質ではなく、「みんなが使っているかどうか」に左右されるところがネットワーク外部性の本質である。
ネットワーク外部性が働くサービスにおいて、いったん「みんなが使っている」状態を作り出してしまえば、他にいくら価格が安い同様のサービスが出てきても、激しい競争で利潤をすり減らすことなく、安定的に利益を生み出すことができるようになるのである。
今回は、米国のeBay(以下「イーベイ」)やYahoo!オークションのような「オークション」のビジネスを中心に取り上げる。実は、オークションというのは、「ネットワーク外部性」が強力に働く事業の一つだから、である。















