アドネットワーク事業を行っていると、海外の広告代理店やインターネット関連のソリューションを提供する企業と打ち合わせをする機会があります。相手が日本市場への新規参入を検討しているような場合には、日本のネット広告の市場性についてディスカッションすることになります。その時、必ずと言っていいほど驚かれることがあります。それは日本におけるネット広告の広告単価の低さです。
ここで、まずネット広告の一般的な課金方法について簡単に説明しましょう。ネット広告の中でもバナー広告の出稿料金を説明する場合、その価格を「CPM」という単位で表すのが一般的です。CPMとは“Cost Per Mille”の略で、掲載1000回当たりの広告料金を意味します。
なお、バナー広告の中には、CPMではなく、「CPC」(Cost Per Click)、つまりどれだけクリックされたかで広告の料金が決まるものもあります。しかし、クリック率は広告主の業種や広告の内容などによってかなりのばらつきがあるため、広告枠の仕入れで使う値や相場を表わす場合はCPMがよく使われます。これは全世界共通の指標になります。
そして、先ほどの海外企業の話に戻ると、彼らが驚くのは、日本のネット広告のCPM単価の低さということになります。
もちろん一口にCPMといっても、ポータルサイトに広告を出稿した場合と、ブログやSNSなどのソーシャルメディア、あるいはアドネットワーク(複数のメディアにまとめて広告を配信できるサービス)に出稿した場合など、出稿先の違いによって、その相場は大きく異なります。そのため、単純に比較はしにくいのですが、それでもほとんどのケースで日本のCPMは欧米のネット広告の相場を大きく下回っています。
欧米だけではありません。最近では、中国のネットメディアの中でも、一部ではありますが、日本の同様のサイトよりもCPMが高いケースが出始めています。そこで、今回はなぜ日本のネット広告の単価が他国と比べて低いのか、その理由について考えてみたいと思います。
ブランディングでも売り上げ増に直結する中国のネット事情
まず、日本と中国の差について、考えてみます。日本のように人口が減少局面に入っている成熟した市場と、中国のように人口も増え経済のパイがどんどん拡大している急成長の市場では、当然広告の使い方やその効き目が大きく異なります。もちろん、いくら中国は経済成長が著しいといっても1人当たりのGDPは大きく異なり、物価も日中では大きく開きがあります。そのため、広告の単価の平均値を比べると日本よりも当然低くなります。CPMでは10分の1程度になります。
では、中国でネット広告のCPMが日本よりも高いのは、どのようなサイトなのでしょうか。それは、ブランディング目的の広告が集まりやすい一部のポータルサイトやメディアのサイト(あるいはそのアドネットワーク)になります。これらに出稿しようとすると、場合によっては日本の平均的な相場の数倍程度のCPMが必要なこともあります。
日本では、信頼感やイメージの醸成といったブランディングのための広告というと、直接購買に結び付けるというよりも中長期的な視点でブランド価値を向上させるための広告手法と位置づけられることが多いと思います。しかし、中国のように猛烈なスピードで成長している市場では、ブランディング目的の広告でも、その結果として認知度が高まるなどして、短期的に購買に結び付くという特殊事情があります。
またブランディングにふさわしいサイトの数は限られているため、広告の価格は高騰しやすい状況が生まれています。さらに、前述したようにブランディングでも短期での成果が見込めるため、日数ベースという短いスパンで広告枠を買い付ける習慣が強いことも広告単価を押し上げるもう1つの要因になっているようです。日本のブランディング広告は、長期での掲載が主流のため、CPMは押し下げられる傾向にあるのとは逆の力学が働いているのです。





