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2010年6月4日(金)

第114回:小さなお店のブランディング――地方は季節感で勝負しよう!

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 久々に、小さなお店のブランディングです。今回は、山形県にユニークなお店を見つけました。キーワードは、「冷やし」。「冷やしシャンプー」と「冷やしラーメン」です。

 何度か、「冷やしシャンプー」なる言葉を耳にしたことがありましたが、その発祥の地は山形の小さな床屋さんでした。そこは、大沼幸市さんという理容師さんが1人で切り盛りするお店。中に入ると、カウンターに小さな「冷やしシャンプー」ののぼりを発見。まだ、季節前なのでお店の外へは出していないとのことでしたが。

 大沼さんは、お話を聞いていると、マーケッターとしてすぐに通用するほどの戦略家。“なぜ、冷やしシャンプーを思いついたのですか?”という質問に、“床屋は1年中、代わり映えしない。1カ月くらいして髪がの伸びたら切りに来るところ。これでは、ビジネスが広がるはずもない”と。“床屋にも季節感があればいいのになあ、季節限定メニューはないものか”“そうだ、夏暑い山形には冷やしラーメンがある”。この発想が、冷やしシャンプーのきっかけになったそうです。

写真:「冷やしシャンプー」ののぼり
写真:冷やしシャンプー

 もともと床屋さんは、コミュニケーション上手。お客さんとの会話からヒントを得ることも。早速、お客さんに試したら抜群の反応。よし、これだ!と思い、お店の外へチラシを張ってみると、たくさんの人が写真を撮ったりうわさをしたりで、一気に「冷やしシャンプー」が広がっていった。まさに、PR作戦ですね。

 初めはトニック系のシャンプーを冷蔵庫で冷やして使っていたのですが、「冷やしシャンプー」の広がりを受けてオリジナルの「冷やしシャンプー」を開発。冷蔵庫では8℃までしか冷えませんが、ワインを冷やすように氷の桶に入れると0℃に。真夏の日本最高気温を記録したこともある山形では、これが気持ちいい。プール前のシャワー感覚に似ています。

 ここまで来ると、後はいかにPRするか。いかに世間に知らしめていくかです。そこで大沼さんは、山形さくらんぼを取材にくるマスコミに注目。彼らを立ち止まらせる方法はないかと思案しました。

 それが、冷やし中華ならぬ「冷やしシャンプー、はじめました」の店頭のぼり。ブルーの地に白抜きの文字。いかにも涼しそうです。それが通りかかった取材陣の目を引いたのです。“何だ? 床屋の店先に冷やし中華のようなのぼりは”。まんまと、大沼さんの戦略に引っかかってしまいました。

 それでテレビや雑誌に取り上げられ、全国にその名を広げていったわけですが、逆に各県で勝手に「冷やしシャンプー」が出現することにもなったそうです。それでもめげることなく、今いまは埼玉県熊谷市(こちらも暑さでは有名)と組んで「冷やしシャンプー」をさらにPRしていこうと企画中。また、ホテル、ゴルフ場、ドライブインなどの異業種とのコラボレーションも進めているようです。大沼さんのアイデアは、本当にとどまることがありません。すごいですね。

 そしてビジネスの拡大は、「シャンプーセット」で進めています。シャンプーとクイックマッサージで1000円というお値段。これなら暑い日は毎日行けるし、実際“今日は合コンだから、お願い”と言ってくるお客さんもいるそうです。

 こうした一生懸命には、必ずごほうびが付いてくる。東北芸術工科大学に教えに来ていた、映画「おくりびと」の脚本を手掛けた小山薫堂さんがお店を訪れ、大沼さんを「ひやしびと」と命名。ちゃっかり名刺にその名を使っています。床屋さんもアイデア次第という、見本のようなお店でした。

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著者プロフィール

関橋 英作(せきはし・えいさく)

関橋 英作 マーケティング・コミュニケーション・ユニットMUSB
青森県生まれ。
外資系広告代理店JWTでコピーライターから副社長までを歴任。ハーゲンダッツ、キットカット、デビアス・ダイヤモンド、NOVA英会話学校など、数多くのブランドを担当。その多くを、トップブランドに導き、ギャラクシー賞グランプリをはじめ、NYADC賞、ACC賞など数多く受賞した。特にキットカットにおいては、クリエイティブの斬新さに加え、ビジネスの結果を出さなければ受賞できないAME賞(アジア・マーケティング・イフェクティブ賞)を2年連続グランプリの快挙。アジアマーケットナンバーワンを勝ち得た。また、日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラーを取得。消費者インサイトを深く洞察する。女子美術大学・拓殖大学非常勤講師。


このコラムについて

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メール・マーケティングに始まり、アフィリエイト、検索連動型広告、コンテンツ連動型広告、動画広告にRSS広告などなど実に多彩な発展を遂げているネットマーケティング。こうした広告のプラットフォームが次々と登場することは喜ばしい半面、企業は踊らされがちになります。本来、マーケティングとは何だったか?これを忘れそうになったときに皆様を原点に引き戻す、そういうコラムを目指しています。テクノロジーがどれだけ進化したとしても、マーケティングの原点はいつの日も変わらないのですから。

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