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企業Twitterアカウントがまねてはいけない@NHK_PR

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  • 2013年2月22日 金曜日
  • 小林 直樹

 「ヘイトスピーチをまき散らすだけで、まるで何か世の中の役に立つことをやっている気になっているようなネット弁慶さんたちには、1度でいいから東北へ行ってボランティアでもしてきなよ、と言いたい。かなり本気で言いたい」

 2月18日深夜(19日未明)、NHK広報局のTwitterアカウントが発したこの投稿が物議をかもしている。リツイート数は5000件を突破。これを糾弾するネット掲示板のスレッドが、丸3日でパート60に達するなど波紋が広がっている。

発端となった@NHK_PRの投稿

 投稿から約4時間後の早朝、同アカウントは、「東北についてのヘイトスピーチをまき散らしている人たちには、もし出来ることならば、いちど東北へ行って自分の目で見て欲しい、匂いや音を感じて欲しい、そこで暮らす人たちと話して欲しい、と言いたい。(これなら伝わる?)」と、先の投稿の趣旨を説明した。

 筆者が検索した限り、東北地方および地域住民を誹謗するような内容の@NHK_PRあてのリプライは見当たらず、またそうした発言がネット上で話題になっている形跡は発見できなかった。消し去られたのか、あるいは“中の人”がネット上のどこかでたまたま見かけたのか。いずれにせよ何の前後関係もなくいきなり冒頭のような発言が50万人超のフォロワーに流れたのだから、驚かれるのは当然だ。

 2月中旬の週末に東京・新大久保で行われた過激な嫌韓デモのことを指した発言と見る向きもあるが、仮にそうであるならば対象を特定していれば大した騒ぎにはならなかっただろう。ネット右翼(ネトウヨ)と称される層ですら、大半がこの過激なデモを支持はしていないからだ。

 ところが@NHK_PRは批判の対象を特定しなかったため、ネトウヨ層からは「領土問題などに対する日頃の言動がヘイトスピーチ呼ばわりされた」と解釈された。そして@NHK_PRが唐突に持ち出した「東北についてのヘイトスピーチ」が「問題のすり替え」とネット上でとらえられ、NHKバッシングへと発展していった。そんな流れである。

 ネット上は賛否両論だが、結論から言えば、発言が仮に正論だとしても@NHK_PRは決して好印象を残すことはなく、神経をすり減らすだけの消耗戦を買って出た格好になってしまった。

 数十万人規模のフォロワーを持つ有名企業のTwitterアカウントともなれば、意味不明な投稿や、わざと怒らせようと突っかかってくるような“釣り投稿”がしばしば寄せられる。テレビ局なら、政治や原発などイデオロギーが絡む番組を放映すれば、左右両方から突き上げがくる。何か誤解や事実無根の情報が飛び交っているなら対処が必要だが、ちょっかいや極めてレアと思われる意見にいちいち反応していたらキリがない。

 @NHK_PRは、「ユル~く会話しますよ」というプロフィル記述の通り、お堅いイメージのNHKとは一線を画す軟式ぶりが人気のアカウントだ。ただし、まれに羽目を外すことがあり、その点を危惧されてもいた。

 昨年4月1日のエイプリルフールでは、「【お知らせ】本日、NHKと全ての民放が合併して国営放送になりました。今後は日本放送会社木履連盟(NHKPR)として、着物を着たアナウンサーが青い背景の前で、やや絶叫気味にニュースをお伝えする予定です。今後ともNHKPRの活動にご理解をよろしくお願いいたします。」とツイート。北朝鮮のニュース番組を想起させるようなその内容に、批判や心配する声が寄せられ、削除に至っている。

 エイプリルフールはあらかじめ準備したネタであるため、どこまでなら許容されるかを試してみたという意味合いが強そうだ。しかし今回の投稿は、その瞬間の感情が条件反射的にツイートになった可能性がある。そこには、軟式アカウントの成功例ともてはやされ、多数の固定ファンがつけたことで、多少雑な発言であっても許されるという過信がなかっただろうか。「ネット弁慶」と、@NHK_PR自身が揶揄される事態は避けたいところだろう。

 挑発に乗って口論の末、仮に論破できたところで、そこに賞賛はない。多種多様なネットユーザーを相手に、「どちらが勝者か」を争う土俵に企業が乗った段階で、その企業側の“負け”である。相手の論点の矛盾や隙を笑いに昇華して反撃する天才肌の人も世の中にはいるが、凡人には難しいし、そもそも企業アカウントがやるべきことでもないだろう。それよりも、ノイズをやり過ごす「スルー耐性」をアカウント運用者の必須スキルと位置づける必要があるのではなかろうか。

NHKは番組や支局単位で約120ものTwitterアカウントを開設

 現在NHKには、番組や全国にある放送局単位で約120ものTwitterアカウントがあり、「NEWS WEB 24」のように視聴者のTwitter投稿を活用する番組作りも進んでいる。その代表アカウントである@NHK_PRが今後さらに大きなトラブルを起こすようなことがあれば、Twitter連動番組や他のアカウントにも悪影響が出かねない。

 そもそも軟式アカウントは、いかにも企業然とした公式(硬式)アナウンスとは違い、社員やキャラクターを立てて親しみやすさを演出するもの。決して際どい言動で注目を集めるものではない。軟式の代表格ではあるが、一般企業のアカウント担当者は@NHK_PRをむしろ他山の石とすべきではなかろうか。

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