トップページ国内企業インサイド

顧客と友達のような関係を築くZOZOTOWNのCFM戦略、130種類以上のパーソナライズメールを自動配信
本誌セミナー「デジタルで実現する顧客との関係深化戦略」報告

印刷する
  • 2013年10月17日 木曜日
  • フリーランスライター 甲斐 祐樹

スタートトゥデイのホスピタリティ・マーケティング本部本部長を務める清水俊明氏

 日経デジタルマーケティング読者無料セミナー「デジタルで実現する顧客との関係深化戦略」の第2部では、日本最大級のファッションEC(電子商取引)サイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイのホスピタリティ・マーケティング本部本部長を務める清水俊明氏が、「ZOZOTOWNのCFM戦略、CRMを超えて」と題して講演した。

 清水氏は同社の業績を振り返り、「日本のファッション市場全体は右肩下がりの中、ZOZOTOWNは11期連続増収増益で、営業利益も約10%を維持」と好調をアピール。その一方で「ファッション業界では会社の規模にかかわらず利益率が低く、メーカーやブランドから提供された商品が中心ではなかなか他社との差別化も難しい」と業界が抱える課題を指摘。その中で同社がどのように増収増益を続けたのかを講演のテーマとして掲げた。

 清水氏はZOZOTOWN好調の要因を、「ブランドの世界観を尊重し、リアル店舗で購入する以上の顧客経験価値の提供にこだわったこと」と説明する。

 ZOZOTOWN以前は「安かろう悪かろうのイメージが強かった」というファッションEC業界において、企画やデザイン、開発をすべて内製化し、メーカーごと異なる製品サイズをすべて自社で採寸し、独自データベースで管理するといった品質向上のための対策に加えて、物流センターも自社で抱えることで24時間以内の発送を実現したことがZOZOTOWNの強みであるという。

 2009年頃からはブランドの認知拡大を目的としてテレビCMを放映。当時、ZOZOTOWNのターゲットだったF1層(20~34歳の女性)のZOZOTOWN認知度は40%程度だったが、テレビCM放映によって認知度は80%まで一気に上昇、新規会員も増えて業績も好調に推移した。

企業文化を生かせないCRM戦略を反省

 そうした業績好調の一方で、「経営陣はこれまでの顧客と良好な関係を築けているか危機感を感じていた」ことから、2010年頃はCRM(顧客関係管理)戦略にも取り組む。しかし、当時の取り組みについて清水氏はこう反省する。

 「(当初は)施策が場当たり的だったり一体感がなかったり、会社のカルチャーを生かせていないCRM戦略になっていた」

 当時の試行錯誤の中で生まれたのが、同社独自の概念であるCFM戦略だという。CFMとは「Customer Friendship Management」の略で、「お客さまと友達のような関係になること」という意味を持つ。

 清水氏は「従来のCRMはお客さまと長期的に友好な関係を築くことだが、長期的な関係が必ずしも満足度につながるわけではない」とし、顧客ロイヤルティと顧客満足度は別に考えるべきと指摘。「我々のようなファッション業界は嗜好性が強く、顧客は好きな時に好きな場所で製品を購入すればいいため顧客ロイヤルティの追求も難しい。そのような業界でロイヤルティを高めるよりも、お客さまと友達のような関係を作ることが大事では」との考えでCFM戦略が生まれたという。

 CFM推進の第一歩として清水氏は、「一人ひとりの日々の行動や心の変化を見逃さず、その変化の裏側にある、心のあり様を想像し、一人ひとりに合ったZOZOならではの気配り、思いやりを創造すること」というミッションを策定した。

 顧客の行動をつぶさに分析するためにはスピードとタイミングが重要であるとの考えから、これまで他部署に依存していた顧客分析のためのデータベースや分析のための環境を自分の部署内に構築した。さらに分析結果を踏まえたワン・トゥ・ワン・マーケティングを実践できる自動化も推進し、PDCAサイクルを迅速に展開できる環境を整えた。

 CFMプロジェクトの開始までにかかった期間は4カ月程度で、ローンチと同時に部署名もCFM部へと変更。人員は今でこそ15人近いが、当初は清水氏とシステムエンジニアの2人体制だったという。デザインは社内のデザイン部門のサポートを受けつつ、分析は清水氏が自ら担当することでプロジェクトはスタートした。

 CFMの考え方として清水氏は、「顧客ごと日々の行動やイベントは異なり、その裏側にある考えや行動のきっかけもまた異なる。それを適切につかむこと」が重要と説明する。そのためには顧客ごとに異なるイベントや顧客がコンタクトを好む頻度、利用するチャネルや適切なメッセージ送信タイミングなどを顧客ごと把握し、最適化していく必要があるという。

 こうして顧客とのコミュニケーションを個々に最適化することで、マーケティングROI(投下資本利益率)が大幅に改善し、売り上げはもちろん利益率が最大化、企業価値が高まると清水氏は分析する。「我々も試行錯誤の中でいろいろ失敗もしているが、そうした中でお客様起点のマーケティングは勉強にもなるし成長率も高く、顧客のライフタイムバリューも高い」とした。

顧客中心のマーケティングで購買率を高める

 さらに清水氏は自身が重要視しているマーケティング手法として「Life Cycle Based × Event Based Marketing」という概念を披露。従来のマーケティングでは広告したい商品やサービスが出たときに、その認知度向上のためお客様へリーチしていたが、これでは押しつけになってしまいコンバージョンも低い。そうではなく顧客の購買や行動の変化を検出し、適切なタイミングで顧客に最適化された商品やサービスを提供することでコンバージョン率を高めることができ、「従来手法と比べてコンバージョンが5~30倍は違う」ほど差が生まれるという。

 こうした顧客中心のマーケティングを推し進める一方で、「マス向けのマーケティングも重要」と清水氏は指摘する。「人間関係でも最初から親友にはなれない。知り合ってすぐパーソナルなコミュニケーションが強いと気持ち悪がられるのは人間関係も同じ」とし、「マス向けのマーケティングにパーソナルを組み合わせていくことできめ細かなコミュニケーションが実現できる」という考えを披露した。

 スタートトゥデイでは、3年以上ZOZOTOWNを利用してくれる顧客を優良顧客として定義。新規顧客のうち1年後も残るのは50%程度、2年目以降の離反率は30%程度だが、「3年たってもZOZOTOWNを利用してくれるお客様はほとんど離反されない」特性があるという。「我々が世間をお騒がせしたりご迷惑をおかけしたりしても寛容で叱咤激励してくれる」(清水氏)。

 その一方「顧客の離反は必ず起きるもので、離反する一定数の顧客に見合う新規顧客を取り続けなければアクティブな顧客は増えない」と、新規顧客の獲得にも積極的。「重要なのはアクティブな顧客が増えていること。顧客の離反はライトユーザーから起きる。売り上げをKPI(重要業績評価指標)としてしまうと、アクティブユーザーが減少していることに気がつくことができない」と注意を促した。

 現在は日々130種類以上のパーソナライズメールの配信を自動で運用し、この種類は月に数種類というペースで増えているという。清水氏は「それだけの数まで増やせるプラットフォームを最初に構築していたからこそ今のスピードで進められている」と振り返り、「マーケティングの理念は欧米からの輸入が多い。我々ももちろん海外事例から多くを学んでいるが、日本人が持つおもてなしの心に着眼した独創的なマーケティングを世界に広めていきたい。それも目標として掲げている」とし、講演を締めくくった。

■修正履歴
記事掲載当初、「物流センターも自社で抱えることで24時間の発送を実現した」としておりましたが、「24時間以内の発送を実現した」の誤りでした。本文は修正済みです。[2013/10/17 19:50]
このエントリーをはてなブックマークに追加 ツイッターに投稿する Facebook mixiチェック

ログイン

記事をお読みになるには購読申し込み後に、ユーザーID、パスワードの登録が必要です。

登録・変更

最新号

  • 年間購読のご案内
  • カートに入れる
  • 編集部へのご意見、お問い合わせ

日経デジタルマーケティング

メールマガジンのお申し込み